教育委員会-役割を果たしているか(2011年9月15日 朝日新聞社説)
都道府県や市町村の教育委員会は、その役割を十分に果たしているか。形骸化が指摘される現状に、大阪府の橋下徹知事が代表をつとめる地域政党「大阪維新の会」が一石を投じた。
9月議会に提案する教育基本条例案だ。
教育行政に民意を反映させるとして、首長が学校の目標を定め、職責を果たさない教育委員を罷免(ひめん)できる権利を明記する。校長を公募制で選び、君が代斉唱の際に起立しない教員を念頭に免職規定も盛り込む。
教育委員会は戦前の国家主義的な教育に対する反省に立って戦後、設置された。中立性確保のため、首長から独立した合議制の委員会となっている。
公選の時代もあったが、現在は首長が議会の同意を得て任命している。非常勤の委員5人程度で構成され、会議は月1回程度。実質的には事務局と、その長の教育長が実務を取り仕切っているところが多い。
教育行政全般を首長に委ねることは、合議制を採る教委の趣旨と相いれず、存在自体の否定につながりかねない。
教職員組合などには教育への政治介入を懸念する声もある。
校長を公募で選ぶといっても、能力のある人が応募してくる保障もない。公平な選定が担保できるかも疑問だ。
とはいえ、教育委員会のあり方を考えるきっかけにはなる。首長と教委の役割と権限について、じっくり審議してほしい。
これまでも教育委員会の改革をめざす試みはあった。
東京都中野区はかつて、教育委員候補者を区民投票で選ぶ「準公選制」を導入した。
島根県出雲市や金沢市は、教育委員会を学校教育に専念させるため、社会教育や文化行政を市長部局に移した。
自治体がそれぞれの意思と創意で教育行政に取り組めば、教委の上に文部科学省がたつ中央集権的な構図を、分権型に変える試みとなる。
新藤宗幸・元千葉大教授(行政学)がセンター長を務める分権型政策制度研究センターは昨年、教委の存廃を自治体が選択できるよう、地方教育行政法の改正を提言した。
地域の教育制度を型にはめる必要はない。民意を反映させる方法は首長が前に出ることだけではない。住民が望むなら、教育委員の公選制を復活させることも選択肢とすればよい。
いじめや不登校、学力格差など問題が多様化するなか、教委はどうあるべきか。そもそも必要なのか。地域住民や保護者も関心を払わねばならない。