2011年9月16日金曜日

主客転倒発言-踏みつけているのは誰か

玄葉外相発言 踏みつけているのは誰か(2011年9月7日付 琉球新報社説)

おかしな発言が飛び出してきた。玄葉光一郎外相が米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画について「踏まれても蹴られても誠心誠意、沖縄の皆さんに向き合っていくしかない」と述べた。

報道各社の就任インタビューでの発言だが、これはいわば加害者が被害者であるかのごとく装う、明らかな主客転倒発言だ。

県民は県知事選をはじめ各種選挙で民主的手続きを尽くし、辺野古移設に異議を唱えてきた。にもかかわらず、県内移設反対の声は無視され続け、さらにまた海兵隊の最新鋭輸送機オスプレイの配備で危険にさらされようとしている。日米両政府こそ県民を踏みつけにしてきた張本人ではないか。

玄葉外相は外務官僚の説明を全て真に受け、辺野古移設合意を推進することこそが強いリーダーであり、米国の期待に沿うと錯覚、信じ切っているのであろうか。

外相が「日本の地政学的な位置、中でも沖縄の地政学的な位置を考えると日米合意を踏まえていくべきだ」とし、日米地位協定の改定について「一つ一つ解決策を模索していく」と具体的な言及を避けることで、安堵(あんど)しているのは外務官僚であり、米国政府だろう。

残念なのは、玄葉発言が歴代外相や官僚が述べてきたことの繰り返しにすぎない点だ。官僚にとっては模範回答だろうが、県民には先が思いやられる官僚依存発言としか映らない。この先の不毛な議論を予感させ、実に嘆かわしい。

米議会も日米合意を疑問視している。外相は同じ政治家として何の疑問も持っていないのか。政府の主張こそが正しく、沖縄県民は感情的かつ非協力的と決め付ける、官僚にありがちなエリート意識、差別意識に陥っていないか。

米軍に対し、県内の軍用地主は土地を、基地従業員は労働力を、自治体や民間企業は水道、電気、ガス、道路などのライフラインを提供している。強制収用と闘う反戦地主も多いが、県民は本意か否かはさておき、結果的に安保政策への協力を余儀なくされている。

米軍は思いやり予算と日米地位協定の恩恵に浴し、何不自由なく駐留している。逆に県民は基本的人権を踏みつけにされ続けている。

玄葉外相の発言が不穏当なのは明白であり即刻撤回すべきだ。官僚の色眼鏡ではなく、自らの目と心で県民と向き合ってもらいたい。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-181354-storytopic-11.html