2010年2月18日木曜日

国立大学法人への市場化テストの導入・第3弾

現在、国立大学法人の業務のうち、施設管理運営業務と図書館運営業務への市場化テストの導入について、内閣府に置かれた「官民競争入札等監理委員会公共サービス改革小委員会国立大学法人分科会」において検討が進められています。

このことは、この日記でも既にご紹介しているところですが、上記国立大学法人分科会は、去る2月2日(火)の東京学芸大学、一橋大学に続き、2月10日(水)には、お茶の水女子大学、東京医科歯科大学、2月15日(月)には東京大学、東京工業大学からヒアリングを行っています。


ヒアリングの結果、国立大学法人分科会から各大学に示されたコメントを、公表されている資料から抜粋してご紹介します。

なお、会議資料等の詳細はこちらをご覧ください。
http://www5.cao.go.jp/koukyo/kanmin/kokudai/kokudai.html

国立大学法人お茶の水女子大学


  • 施設管理業務の包括化を検討した結果、「管理経費が上乗せされ割高となるとの結論を得た」とのことであるが、一度、専門の業者を入れて、個々の事務に「先生」ではかけられないプレッシャーでコストカットの指示をだしてもらって整理すると、次回からは大幅なコストカットが実現する。必ずコストダウンできるはずなので、もう少し研究された方がいいのではないか。

  • 施設管理業務の包括化発注については、業務のまとめ方によっては高くつく場合もあるが、いろいろと経験を積むことにより、効率化が図れるのではないか。

  • 施設警備については、一定の評価基準を超えた場合は翌年度以降も引き続き契約を行っているとのことであるが、これでは複数年度契約のメリットが出ない。調達改善は、まず規模のメリットを活かすことと競争が機能する環境を整備することが必要。複数年度契約は契約規模を大きくするひとつの手段であり、法人化により債務負担行為という予算上の制約から脱した点を活用すべきだ。

  • エレベーターの保守などの保守点検業務については、設置メーカーは安全性を売り込んでくるが、メーカー系の保守会社のみが安全性を確保できるとは限らない。

  • 保守点検業務の選定基準に「官公庁等への実績」を入れると新規参入を阻害してしまう。施設管理は市中のビルと変わらないはず。

  • 随意契約の少額基準が500万円というのは高すぎるのではないか。随意契約を行なう具体的な理由が正当化できることが重要。金額基準以下の場合は複数者からの見積もりをとっているといっても、いつも同じ業者の見積もりでは意味がないので競争させる工夫が重要。

  • 仕様書の中には、新規事業者が参入しづらい項目が入っている場合が多いので、仕様書の中味を点検する必要があるのではないか。

  • 営繕コストについて、業者が固定していることが多いので厳しくチェックをすると削減できる場合が多い。経営協議会のメンバー等外部の人で建設関係のコネクションのある人に相談するとかなり予算の削減が可能なので、活用してみてはどうか。

  • 教室等の学会や試験等への貸出しはどの程度の収益となっているのか。館山や志賀高原の施設の外部利用が進んでいる点は評価する。

  • 図書館運営業務の効率化を考える場合に、「教育研究と密接している業務」ということを大前提としてしまうと、それ以上民間委託の議論ができなくなる。教育研究との密接度を個々の事務ごとに整理することが重要。

  • 飲料販売機の業者を見直す公開入札で1社に絞ると大幅に収入が増加する。生協との関係の問題はあるが、1社となると契約金を受け取れるし、1本あたりのマージンも増加し、また、希望する他者の製品も置いてくれる。

  • 経費の節減は1校のみで行なうことには限界がある。他大学と提携して行えば、規模のメリットが得られるので、特定の分野でやれるものがないか、検討してみてはどうか。

  • 運営費交付金が厳しく削減される中で、一般管理費を削減していくことは重要なこと。その手法として、公共サービス改革法の民間競争入札の活用も考えられるのではないか。効率化して削減できた分、教育研究費にも充てられるのではないか。

国立大学法人東京医科歯科大学


  • 診療報酬の未集金の徴収についてはどのような工夫を行なっているのか。外部委託による効率的な回収が行なえているのか。

  • どの大学も大学独自の特殊性を主張する傾向にあるが、どこまで特殊なのか、また、特殊だと対外説明が可能なのか、を整理することが大事。全体を病院と病院以外を区分し、病院でも、どの部分が特殊なのか、一般化できない限度はどこなのかを見極めることが重要。それを見極めた上で一般化できるものについては、契約の統合をできるもの、規模のメリットを活かせるものもあるのではないか。その上でどこまで競争入札が可能なのか、効率化を図る上で市場の競争原理を働かせることが可能なのかを検証することが重要ではないか。

  • 少額の随意契約の上限が500万とのことだが、業務の特殊性から随意契約が必要なものについては、大学の意思として主張すべき。ただし、中央省庁の上限が100万円であることと比べると大きすぎるのでどのように見直すのかを検討する必要がある。

  • 会計規則に従うとしても、国立大学法人化前と同様の会計規則のままで、法律上の根拠を失っている規定も多いのではないか。法人化されたことに伴い、内規を見直すべき部分もあるのではないか。

  • 大学設備の基準についても文部科学省が策定した全国一律の基準のままでいいのか、大学独自の観点から見直すことも検討が可能ではないか。

  • 経営協議会からはどのような指摘があるか。外部意見を活用して営繕や改築にメスを入れることにより、改善できる部分があるのではないか。

  • 調達形態を変えても実施する業者が固定的なケースもある。担当者は「他の業者が応札してくれない。」というであろうが、工夫して乗り越えるべき課題である。随意契約のケースで、競争させるために見積り合せをする場合でも、常に「新規業者が入る可能性がある」という形にすると価格が下がる。大学が示す仕様書から、実質的に新規業者を排除してしまう表現を削除することが必要。

  • 見積り合せに新規業者が参入することで、2割から3割程度コストが下がった事例もある。新規参入者が見つからない場合に銀行に相談すれば、複数の同業者が見つかる場合があるので、事前勧誘は問題があるが、様々な情報収集が可能となる。

  • その他経常収益が上がってきている理由は何か。

  • 資金運用で成果が上がっている理由は何か。

  • 試薬の調達費用について、個々の医師が個別購入している場合はかなりの金額になるのではないか。試薬の調達についても、個別ではなく一括で調達することにより、相当の効率化が可能。個々の医師が特定メーカーの特定試薬にこだわるであろうが、幅広い商品を取り扱う業者が間に入れば一括調達が可能となる。

  • 国立大学法人評価委員会から随意契約の見直しが進んでいないという指摘がある。

  • 運営交付金が削減される中で教育研究を充実させるために、「難しさ」をやらない理由にはせず、どうすればできるのかを考える方向で検討し、経営効率化を推進いただきたい。

国立大学法人東京大学


  • 施設管理の契約の包括化や複数年度に取り組む姿勢を高く評価。

  • 医学部附属病院の改革がこの5、6年でかなりの成果をあげて収益が明らかに改善しているが、具体的には何が功を奏したのか。

  • 診療報酬の未収金の徴収についてはどのような工夫を行なっているのか。外部委託による効率的な回収が行なえているのか。

  • 寄付金にかなり努力され、金額も大きいがまだ増える見込みなのか。また、どのような使用方法を想定しているのか。

  • エレベーターの設備保守業務については、メーカーは安全性を売り込んでくるが、合理的な理由がある随意契約、また、一部を少額随意契約としていることの理由は何か。包括契約化するなどの価格交渉は十分に行なえているのか。

  • 医学部附属病院の清掃業務の契約が2本に分かれている理由は何か。数年前に貴学の調達改革を行なった際には早期の結果が重視されたため、病院は対象外とされた経緯がある。病院清掃を研究棟と入院棟に分けて契約している現状はそれ以前の状況を継続しているだけのものではないのか。

  • どの大学も大学独自の特殊性を主張する傾向にあるが、どこまで特殊なのか、また、特殊性について対外説明が可能なのか、を整理すること、どの部分が特殊なのか、一般化できない限度はどこなのかを見極めることが重要。特に運営交付金の制約がある中で、交付金予算の配分方法も簡単には変更されない。新規事業等を始めるためには、既存の経費の削減や予算の配分方法等について根本的な見直しを検討せざるを得ないのではないのか。

  • 図書館業務の契約がすべて単年度の随意契約となっているのは見直しが必要。大学図書館の研究との関連性を強調するだけではなく、まずは各従業員が現状どのような業務をどの程度実施しているかを把握し、どの業務なら外部委託が可能かを考えていくことが重要。

  • 図書館の利用のされ方、学生や時代の変化に対してどのように対応しようと考えているか。

  • 複数年契約を進めている中で、駒場キャンパスの清掃や警備が単年度のままであるが、包括化や複数年度の契約化など見直しが必要。

  • 少額の随意契約が認められる上限が、法人化の際に省庁と比べて引き上げられたことに関し、貴学は「1000万円が上限なのは事実だが、500万円超のものは複数の見積合わせを実施している、金額が引き下げられれば事務が煩雑となり定員等が削減される中では職員が業務で対応できなくなる」と主張しているが、他の中央省庁や独立行政法人と比べて大学の経費等の削減が特に大きい状況にはなく、また、事業規模や定員が大きな貴学は他の大学からも最も余裕があるとみなされている中では、貴学の主張は、納税者に対して説得力のあるものとはいえない。

  • 電力費用をかなり削減されているとのことだが、費用を削減できた具体策は何か。

  • 損益計算書における人件費が高額となっているが、その理由は何か。教員や職員の給与水準は他大学と比べて高くはないのか。

  • 大学生協は、「大学から業務を委託されている」ことを理由に固定資産税が免除されてきたが、現在は様々な業務が民間委託される中で、大学生協は特別な存在とは看做すべきではなく、競争する業者のひとつと取り扱うのが適当。生協との関係が業務委託とするならば、競争入札にかけることもなく従来どおりというのは、どのような考え方によるものか。生協の行う食堂事務等も民間業者との競争の中で委託しなければサービスも向上しない。

  • 教育研究の充実が重要な一方、運営費交付金が削減される厳しい環境の中でご努力されているが、更に経営の効率化に取組んでいただきたい。

国立大学法人東京工業大学


  • 施設管理運営業務について、貴学では単年度契約のものが多い。複数年度契約をすれば民間参入が容易となり、決裁手続も減る等合理化できるのだが、単年度契約をしている理由はあるのか。

  • 複数年度契約を行っているものがすべて随意契約なのは問題。現段階で来年度に一般競争で複数年度化を検討しているものはいくつあるのか。

  • 貴学が施設管理業務の包括発注に関して「入札不調、請負者の債務不履行等が生じた場合に契約に係る全ての業務に支障が起こり、教育・研究に多大な被害を及ぼす」おそれを懸念する旨言及しているのは、受注する企業側の現状について十分な情報収集ができていないため。

  • 契約担当者が、大学が法人化される前と同様、単に「予定価格など契約関係書類の作成」することのみが仕事である体制を続けていると、受注側がどのような発注の形態を好むのかなどの情報収集や、施設管理業者の受注の現状の勉強ができない。世の中の業界の動向を知らずに「リスクがある」というのは不毛な議論。

  • エレベーターの保守点検業務については随意契約となっているのは理由があるのか。

  • 点検等及び保守契約を随意契約で行なう場合に、契約金額の妥当性を検証できているのか。横の比較などの削減の努力を行っているのか。また、点検等及び保守契約以外に、随意契約は行っていないのか。

  • 少額の随意契約が認められる上限が、法人化の際に引き上げられたことに関し、「金額が引き下げられれば事務が煩雑となり定員等が削減される中では業務ができなくなる」と本日前半に東京大学が主張したが、他の中央省庁や独立行政法人と比べて大学の経費等の削減が特に大きい状況にはないので、納税者に対して説得力のある意見とはいえない。

  • 50万円以上の契約については、複数業者から見積合わせをしているとのことだが、いつも同じ4社や5社から見積もりを取っているようであれば競争原理は機能しなくなる。常に新規事業者が参入してくる体制にしないと価格は下がらない。新規事業者が見積りに参入しているかなどをきちんとモニタリングをしなければ実質的な効率化が図れない。そのような契約の監査にも十分に手が行き届いているのか。

  • 各種の施設管理業務を包括化発注すると、最初は全体のマネジメント部分を上積みして見積価格を提示してくるので個別業務発注よりも高くなるため、引下げ交渉で摩擦も起こる。だが、包括化の過程で、各業務の流れが明らかになり、また、業務の見直しで長い目で見ればコストカットが実現する。必ずコストダウンできるはずなので、もう少し研究された方がいいのではないか。

  • 運営費交付金が厳しく削減される中で、一般管理費等を削減していくことは重要なこと。その手法として、公共サービス改革法の民間競争入札の活用も考えられるのではないか。これからも経営の効率化のための見直しを進めていただきたい。