2012年10月21日日曜日

「本業」に専念させてくれ

学校現場で日々起こる問題に、いちいち国が出て直接対応するのは無理な話だ。

マンパワーが足りる筈が無いし、もっと意地悪いことを言えば、そもそも国に現場の問題を解決できる能力のある人材がどれだけいるのか。

後ろから「やれ、やれ」と言うだけなら素人でもできる。現場で苦闘している人間からすれば、「だったらお前らがやってみろ」と言いたくなるだろう。

国が最優先でやるべきことは、はっきりしている。現場の力を高めることだ。

そのためには、教員が子どもたちと直接向き合う、いわば「本業」に専念できる時間を増やし、それ以外の仕事を減らすことだ。調査や会議を減らし、部活動や家庭支援や地域行事などの負担を軽減し、事務職員やスクールカウンセラーなど周辺の体制を強化することだ。

大学についても「評価疲れ」という話をよく聞く。評価が無用とは言わないが、評価の作業のために教員の「本業」である教育研究の時間が削られているというなら、それは文字通りの本末転倒だろう。

国の仕事でも、行革や無駄の削減が重要なのは間違いないが、今のように「仕分け」や「独法見直し」などで毎年毎年同じような作業を繰り返しやらされるのは、時間とエネルギーのロスであるだけでなく、職員の「本業」である政策立案の能力を高める上でもマイナスだし、士気も高まる筈がない。せめて、一度やったテーマは向こう5年間は取り上げないといったルールくらいできないものか。

国も地方も現場も、金も人も足りないのは明らかなのだから、少ない人員とコストでより多くの仕事ができるようにする道を考える他はない。そのためには、今いる職員がそれぞれの場で可能な限り「本業」に集中できるようにするしかない。

「金がない、人も増やせない、無駄を省け」と言う割に、どうしてそういう方向での発想が出てこないのか、全く不思議だ。もしかすると皆、本業以外の仕事が忙し過ぎて、そんな本筋の思考をする余裕さえ無くなりてしまっているのだろうか。恐ろしい話である。

〔以下、実につまらない補足〕

念のため断わっておくが、筆者は調査や部活動などが教員の「本業」でないと考えている訳ではない。しかし仕事には「ど真ん中」のものと周辺のものがある。その「ど真ん中」のものを本稿では「本業」と表現したまでである。くだらないイチャモンを付けないように。(出典:文教ニュース「文部科学時評」 第2209号 平成24年10月8日)