2012年12月13日木曜日

高大接続の在り方

前回に続き、日本経済新聞社編集委員の横山晋一郎さんがIDE「取材ノートから」(2012年12月号)に書かれた論考を抜粋してご紹介します。


高大接続特別部会

中教審・高大接続特別部会の審議が始まった。ある委員が「初等中等局長と高等局長が並んで座っているのを見て、文科省の本気度を感じた」と語るほど、初中教育行政と高等教育行政との溝は深く、高大接続問題は正面から取り上げられて来なかった。

だが、授業料無償化と98%の進学率で、高校教育は事実上の義務教育化を果たした。同時に、少子化と供給過剰で大学入試が選抜機能を失いつつある中で、高校と大学の教育をいかに円滑に接続させるかが、喫緊の課題になった。大学も高校も行政もいつまでも問題を放置できなくなった。

部会の最初の議論を聞いた限りでは、「卒業認定とは切り離した形での、高校教育の達成度を測る共通試験の導入」に前向きな意見が多かった。高校の取材でも、「大学入試に依存せず、高校教育の質の保証は高校が主体的に行うべきだ」という声を聞く。

「大学入試が高校教育を歪めてきた」。高校関係者がよく使う台詞だ。確かに、受験競争が過酷な時代には、受験対策最優先で高校が目指すべき教育が疎かになったのは間違いない。ただ、今や受験事情は様変わりした。高校も大学も推薦で進学し、一度も一般入試(筆記試験)を経験していない大学生も少なくない。一部の難関大学を除けば、入試圧力は明らかに低下した。

だが、入試圧力から解放されて、高校教育が改善されたという話はあまり聞かない。聞こえてくるのは、高校生の勉強離れの話ばかりだ。学習意欲をいかに持たせるかが、高校の最重要課題になっている。

そう考えると、高校が主体的に質の保証に取り組み、その一手段として達成度を測る統一試験を導入する考えは、誠にもっともだと思う。と言っても、いざ実行に移すとなると難問山積だ。似たような共通試験に大学入試センター試験があるが、センター試験は大学進学希望者が対象だ。高校の学習達成度を測る試験となると、進学者以外も対象にする必要がある。高校生の学力に大きな格差が生じている中で、実効性のある統一試験が可能なのだろうか。試験の実施時期や実施回数、実施主体と実施場所などを巡っても意見は割れるだろう。

達成度評価と卒業認定を分ける考え方も混乱を招きそうだ。達成度試験はパスしなかったが高校は卒業したというケースを、大学はどう扱うのか。ある私学団体幹部は、「中小私大にとって大問題になる」と懸念する。議論の行方に注目したい。