ブログ「今日の言葉」から「実践」(2014-11-28)をご紹介します。
小さな実践が人を変え、地域を変える。
鍵山秀三郎
「こんなこと位ならしなくてもいいだろう。」ではなく、
「こんなこと位ならやってみよう」と行動に移す。
それは結構勇気のいることですが、その実践の積み重ねが環境を変えていくことになる。
そんな実践の大切さを教えてくれる新渡戸稲造のお話を紹介します。
彼はクラーク博士で有名な札幌農学校を卒業後、アメリカとドイツに留学し、教育者として研鑽を積んでいきます。
彼がドイツのボン大学で学んでいたときのこと。
近くの公園を散歩していると、カトリックのシスターが大勢の孤児を連れて歩いているのを見つけました。
孤児たちは、同年代の子が親と楽しそうに遊んでいるのを見て、悲しそうな顔を浮かべています。
その日は、ちょうど新渡戸の母親の命日でした。
そこで、彼は母親に供え物をする代わりに、あの子たちにプレゼントを贈ろうと考え、近くにいたミルクを売っている女性に、代金を払うから、あの孤児たちにミルクをあげてほしいと頼みます。
もちろん、彼からのプレゼントだということは秘密にしてもらいました。
ミルク売りの女性はシスターにこの申し出を伝え、孤児たち全員にミルクが配られました。
突然のプレゼントに子どもたちは大喜び。
そして、全員が飲み終わると、シスターは孤児たちに話します。
「私たちに施しを下さった方が、どなたかはわかりません。
ですが、感謝の気持を伝えるために、全員で賛美歌を歌いましょう」
公園内に響く子どもたちの歌声。
彼は、母親の命日によいことができたと満足し、シスターと孤児が公園から去るのを見届けると、代金を払うためにミルク売りの女性のもとへ向かいました。
ところが、ミルク売りの女性は、代金を半額しか受取ろうとしません。
「私も孤児たちにミルクをあげたいと思っていましたが、商売のことを考えると、なかなか行動を起こすことはできませんでした。なので、ミルク代は原価だけを受取らせてください。今日は本当にありがとうございました」
ミルク売りの女性もまた、温かな心を持っていたのです。