就活に失敗し、大学は卒業したものの、フリーターになった私は、何をしたらいいのかまったくわからないまま、アルバイト先とアパートを往復する毎日でした。
そのころ私は、受験生にチラシを配るアルバイトをしていました。
地方からやってきた受験生は、合格して上京したら、まず家を借りなければいけません。
そんな受験生に、前もって仕込んでおくための不動産のチラシです。
でも、スタッフの管理がかなりゆるく、がんばっても、適当にやっても変わらない。
それどころか、チラシだけ持って帰って、家で捨ててしまってもまったくバレないような仕事でした。
そのアルバイトに、私と同年代くらいの、金髪の青年がいました。
金色に染めた髪にピアスをして、穴の開いたジーンズを履き、チャラチャラ感にあふれています。
切れ長の目をしたその青年は、その見た目とは大きなギャップがあり、まったくやる気のない人の分のチラシも配るくらいの勢いで、目の前の受験生一人ひとりに心を込めてチラシを渡しています。
「お願いします!」という、その言葉の奥からは、まるで「試験がんばってくださいね!」と聞こえてくるかのようでした。
それでも私は、「なんかがんばっちゃってる、まじめなヤツがいるなぁ」くらいにしか考えていませんでした。
そんな彼と、アルバイト後の移動で一緒になり、話をする機会がありました。
「ずいぶん一生けんめいだね」と私が言うと、その彼が私の人生を変えるひと言を雷のように頭に落とし込んだのです。
「お金をもらうんだから、ちょっとでも上乗せして返すくらいの気持ちでやらなきゃダメっしょ!!」
初めて聞いた言葉でした。
言われたことをただやっているだけ。
むしろ適当にやっていた自分が恥ずかしくなるような…。
これまでの私は、自分にとって関わりのあることには一応向き合ってはきたものの、自分の人生には関係ないと思えるものには、「これはオレには関係のないことだから、エネルギーを使うだけムダ」と選別をして生きていました。
何をやってもダメで、お先真っ暗、八方ふさがりの状態だった私は、何をやってもまったく報われない、今の現実が起きている原因の一つが「自分に関係ないことには向き合わない」という、この考えなんだと、彼の言葉からなぜか感じたのです。
「受けたものに“上乗せして返す”気持ちを持つ心」
その言葉が頭の中をグルグル回り続け、そして時差はありましたが、次第に手のひらを固く握り締めるように、“ハートがグッと決まる”のを感じました。
『関係ないと思うようなことでも、“今、目の前にあること”にしっかり向き合って生きていくように、自分を変えよう』…と。
ここからなのです。
たくさんの不思議な演出が起きたり、人生を導く出逢いがむこうからやってきたりし始めたのは!
◇
佐藤政樹氏は、23歳のフリーターから、絶対に無理といわれた、『劇団四季』のトップ、気象予報士合格というW合格を果たした。
斎藤一人さんはこう語る。
『倍働けば、お給料を倍くれる、そういうところで、「私は倍働きます」っていう人はいくらでもいるんだよね。だけど、倍働いても同じ給料しかもらえないところで「倍働きます」ってやってると、光輝いちゃうんだよ。そういう人って、めったにいないんだよな』(斎藤一人とみっちゃん先生が行く)より
誰もやらないこと、めったにないことは、燦然(さんぜん)と光り輝く。
しかし、誰もがやっていることだったら、それは埋もれてしまう。
仕事も、頼まれごとも、そして何かをしてもらったときのお礼も…。
「受けたものに“上乗せして返す”気持ちを持つ」
中村文昭さんは、それを「相手の予測を上回れ」という。
人から何かを頼まれたら、試されていると思って、相手の予測を上回って驚かせ、喜ばせる。
受けたものを、上乗せして返す人でありたい。