2009年1月20日火曜日

百年に一度の学生支援

新聞やテレビでは、「百年に一度」とか「2009年問題」という見出しが踊り、世界の金融、経済の暗い見通しが語られています。

マスコミの過剰な煽りたても気になるところではありますが、これまでにない厳しさであることも否めない事実であり、現に、昨年、経営が破綻した上場企業は30社を超え、バブル崩壊後を抜いて戦後最多となっているそうです。また、現在の混乱が収拾されるまでには数年はかかるというのが、多くの専門家の見方のようです。

このような中、大学関係者は、今後の経済的な混乱が大学に与える影響について十分な分析を行うとともに、必要に応じて機敏な対応をとる必要があります。特に、学生生活への影響が最も懸念され、為替の急変によって経済的な困難に陥っている留学生を含め、学生支援策を見直し強化する必要があります。また、新卒者の採用内定取消し問題も深刻であり、引き続き学生への指導や支援体制の強化などきめ細かな対応が求められるところです。

特にこのたびの経済不況等を契機とした経済的困窮を理由に、大学進学の夢を失わざるを得ない受験生や、修学の継続を断念せざるを得ない在学生が増加していることに対しては、「100年に一度の有事」との緊張感ある認識をもって対応することが何より大切になります。しかし残念ながら、大学によっては、「平時ぼけ」的感覚で物事を考え判断している学長や理事等の役員もいるようです。

既にいくつかの大学では、深刻な経済不況を反映して、緊急雇用対策のほか、新たな奨学金制度の設置、入学料・授業料の減免枠の拡大など、学生への経済的支援を中心とした取り組みが行われています。今後、その趣旨に賛同し追従する大学も増えてくるでしょう。

しかし、聞くところによると、折しも受験シーズンの真っただ中、受験生確保のことで頭が一杯の経営陣の貧困な発想によって、「経済的に困っている受験生や在学生を救う」ことが目的であるはずの取組みが、いつのまにか「志願倍率アップのための広報活動」にすり替わっている、つまり経営力の強化という美名の下に、受験生や在学生の苦しみを悪用した「売名行為」を行っている大学もあるようです。

例えば、とある国立大学の役員会の模様
  • (A理事)他大学もやっているので、本学も緊急雇用対策として、臨時用務員を○○名雇うこととしたい。財源はB理事が確保できると言っている。
  • (B理事)金は大丈夫。ただし期限を切らないとしんどい。公表する時には授業料ではなく運営費交付金(税金)の残りを使うということにしてほしい。でないと学生や保護者からたたかれる。
  • (C理事)緊急雇用対策を既にやっている自治体や大学では、募集はしたもののほとんど来てないらしい。うちもそうなると格好悪い。
  • (B理事)それでは、新入生の授業料を半分免除するというのはどうか。受験生が増えることも期待できるし。
  • (D理事)2次試験の出願に合わせ近々新聞広告を出すのだが、それに間に合わないか。
  • (C理事)内容を詰めるのに時間がかかる。
  • (B理事)中身はあとで考えればいいのではないか。とりあえず広告の見出しだけ考えればいい。
  • (学長)私の記者会見にも間に合わせてもらえませんか。 といった具合・・・。

国立大学の最高意思決定機関とは思えないなんとも情けない低レベルのやりとりです。

「学生のために何ができるか、どういった方法が学生にとって大きな効果が期待できるか」などといった学生に目線を置いた発言は皆無。自分達のご都合論だけで国民の税金の無駄遣いが決まっていく。これではまるで「選挙目当ての定額給付金のバラマキ」と同じです。(ちょっと言い過ぎました。麻生総理すみません。)こんな愚行は決して許してはいけません。

受験生をはじめ社会の皆様は、これから大学の記者会見内容が掲載された記事や受験広告をよく眺めてみてください。上記のような大学の中では常識でも、社会では全くの非常識なことが見えてくるかもしれません。

目先の利益ばかりに目が奪われると、これまで大切に積み上げてきた大学の独自性、強み、そして教育機関としての信用を失ってしまうことになるでしょう。大切なことは、不況の苦しい時だからこそ、焦らず、慌てず、冷静に良い時がくるのを待つ、そして努力を惜しまず創意工夫で経営力を蓄えることなのではないでしょうか。

【参考記事】

深刻な変化の潮流にあっても、「確固たる自分」を築いていくにはどうしたらよいのでしょうか。
  1. 動乱期こそ自分の実力を蓄える絶好の好機である。
  2. 厳しい時代にはさまざまな外壁や虚飾がはがれてくるので、物事の本質があらわになりやすい。
  3. 急激に変化する世の中にあって自分を見失わないためには、原点にたち戻り、事業や仕事の本質は何かについてじっと考えることが大切である。
  4. 自分の目で見、耳で聞いて確認するクセをつけること。
  5. 自分の感性を研ぎ澄ますことを意識して行動すること。
  6. マネーがマネーを生むような経済構造が限界を越えて崩壊した。会社が倒れるこの時代にあって、倒れない自分をつくることがビジネスマンにとって不可欠である。
  7. 良書を読み、踏み込んで勉強したことは、必ず自分の仕事や人生に役に立つし、どんな問題でも解決策を見出せる力がつく。(PRESIDENT NEWS Vol.381から)