2009年1月16日金曜日

不正の根絶に向けて

1月15日付の時事通信によると、与党の会計検査院プロジェクトチーム(林芳正座長)は、不正経理にかかわった公務員に新たに懲役3年以下の罰則を設ける「不正経理防止法案」をまとめたようです。これは組織的な裏金づくりなどを抑止することをねらいとしており、議員立法で今国会提出を目指すとのこと。また、会計検査院が指摘した不正事項について、改善状況の報告を各省庁に義務付ける会計検査院法改正案も了承されたようです。

これまでの度重なる公務員の不正、不祥事等に業を煮やし、いよいよ国を挙げて厳格に臨まねばといったところなのでしょうが、多額の税金を納める立場から見るとやや遅すぎた感もあります。

以前この日記で、次のようなことを書きました。
会計検査院は、まだまだ検査の深化が足りない。公務員体質に起因する怠慢、あるいは組織防衛的な利己主義はこの世から断固排除する必要があり、それができるのは、独立した強固な地位や権限を与えられた会計検査院しか現行制度上ない。検査報告そのものも、国民に容易に理解しやすい姿で書かれていないし、直接目に触れる機会も十分に用意されていない。
また、より深刻なのは、氷山の一角とはいえ、検査報告により指摘を受けた大学が、国民から負託された税金の不適切な使途について、どれだけ真面目に罪の意識を持っているのか、あるいはそれを恥辱だと認識し改善しようとしているのかが国民には皆目わかるようにはなっていない。
仮に会計検査院のフォローアップの結果、改善されていないような悪質な状況であれば、当該組織あるいは当事者に対して、会計検査院に与えられた権限を駆使して強制力を持った厳罰を課すべきだ。
厳罰化が不正の根絶にどれほどの効果をもたらすか議論のあるところではありますが、少なくとも会計検査院による検査の実効性を高め、税金の無駄遣いを無くす契機になるのではと期待しているところです。

さて、一般の企業や社会の皆様の中には、会計検査院の検査というものがどういうものなのかよくイメージできない方もおられるのではないかと思います。そこで、今回は、平成20年度に会計検査院が国立大学法人を対象に行った会計実地検査の結果、どのような指摘(正確には「講評事項」といいます。)がなされているのか、最近(平成19年12月分)のトレンド(事項と簡単な事例)をご紹介しましょう。随分と多岐に富んでいることがご理解いただけると思います。

資産関係

(キーワード)
土地の譲渡、施設の使用状況、学内共同教育研究施設、不動産貸付(料)、資金運用、土地・建物の登記状況、職員宿舎の入居状況・外部者への貸出の有無、遊休資産、物品の管理、学生寮の建設、共同利用艇庫、減損対象資産、建物の賃貸借契約、サテライトの管理業務・外部貸出、法人化時の建物登記について、建物の使用許可、国有資産等所在市町村交付金、固定資産の課税・非課税申請書、固定資産台帳、課外活動施設・国際交流会館・ゲストハウスの利用状況、特許権、固定資産の減損、土地の借受、重要な財産(土地等)の譲渡又は担保制限、出資、債券発行、短期借入金、施設整備費補助金、宿泊施設、食堂の貸付 など

(事例)
不動産登記関係
大学が財団法人等から無償で土地の借り入れを行っているが、土地の所有者等について長期的に見た場合、これが普遍であるとは言い難いことから、これらの対応策の一環として登記の必要性等について検討の要があると思慮される。また、他の建物についても、今一度登記について精査検討の要があるのではないか。

建物等の利用状況関係
○○○が廃止されて以降、使われていないままの状況にある。また、○○○施設についても、システムが開発されたことに伴い、使われていない状況にある。この他にも、入居者がいない宿舎等が見受けられる。

宿舎の利用状況
職員宿舎の利用状況については、一番直近の数字において18戸のうち2戸しか活用されておらず、またその2戸についても他の機関が使用しているという状態である。法人としては今のところ活用しきれていないところが見られる。

宿泊施設の利用状況
非常勤講師又は教職員の宿泊施設の利用状況については、6室で年間300日程度稼働できる状況であるが、平成19年度においては延べ51人の利用にとどまっている。


契約関係

(キーワード)
広報誌の調達方法、工事契約、物品等の発注・支払、電力契約、病院の売店等の賃貸借契約、病院財団における病院敷地内の業務に係る運営方法、駐車場管理業務、患者給食業務委託、病院リネン管理等業務、病院臨床検査委託業務等、大学刊行物の製造契約、印刷物に係る契約、土地売却に係る契約、複写機賃貸借契約、契約権限者、警備業務における諸経費率の積算根拠、旅費業務委託契約における随意契約、大学院説明会案内書発送業務における随意契約、消耗品等の購入依頼から納品検収・購入依頼者への発送、システムサポートの随意契約、自動販売機設置 など

(事例)
附属病院財団との契約関係
  • 附属病院では、福利事業のために建物の一部の貸付を行い使用料収入を得ている。その貸付面積は、食堂、喫茶の厨房部分だけであるが、食堂、喫茶を利用しない者が入れる状況にはなっておらず、一室丸々貸し付けているのと同じ条件になっている。従って実態に即した貸付面積を算定する必要があると思慮される。
  • 附属病院に係る不動産使用許可書では、福利業務を委託する旨の記載が無く、大学に承認を得ることが無く別業者に業務を委託していた。第三者への委託、貸付については、大学の許可に基づき行うことが適正だと思慮される。
  • 駐車場における管理運営についても無償でこの業務を財団法人に委託しており、当該駐車場管理運営により1年に約900万円程度の収支差が生じており、この余剰金の一部については、病院内の環境整備に充てられて整備後に大学に寄付されているという状況になっていた。
  • 駐車場管理業務について、随意契約により財団法人へ業務を委託しているが、業務を第三者へ請け負わせることが契約書上、禁じられているにも関わらず、別の業者に請け負わせるなどしている状況にある。


外部資金関係

(キーワード)
科学研究費補助金の経理、厚生労働科学研究費補助金の経理、研究拠点形成費補助金の経理、間接経費の執行、大学改革推進等補助金の経理、受託研究・共同研究・受託事業の経理、大学改革の国際化推進プログラム、戦略的国際連携支援、大学教育の国際化加速プログラム など

(事例)
受託事業関係
平成18年度を最終年度とする受託事業の事案費の中に、翌19年度の研究に使用するための研究室移転工事費等が含まれていたことについて疑義が生じている。

その他競争的資金関係
平成19年度の事業推進費(論文情報データベース)に補助対象外と思料される事態などが見受けられた。


決算関係

(キーワード)
資本金の減少、財務諸表、合計残高試算表(月別)、徴収不能引当金、未収附属病院収入 など


その他

(キーワード)
学内情報システム、取得物品の現物確認、研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドラインに基づく体制整備等、授業料減免関係(授業料減免費、免除の判断基準)、授業料収入の積算、中期目標・中期計画の変更、公的研究費の不正防止に関する対応、内部監査、一般財団法人と公益財団法人、予算配分、現金の取扱、旅費システム など