2009年1月14日水曜日

バラマキ予算

昨日(13日)、経済危機を乗り越えるための当面の対策として第2次補正予算が政府与党のごり押しにより衆議院を通過しました。もしかすると今回のこの出来事は、我が国の将来にとって大きな禍根を残す重要な歴史のひとコマになるのかもしれません。

景気や雇用の回復が何よりも緊要とされる中、生きていくことの深刻さを思い知らされている多くの国民ですら望まないバラマキ予算(定額給付金)を何ゆえ押し通そうとするのか、目先の選挙で生き延びることしか思考できなくなっている政治家達の愚かな正体が露呈され続けています。

定額給付金―民意が首相に届かない(2009年1月14日 朝日新聞社説)

この週末、いくつもの報道機関が行った世論調査の結果は衝撃的だった。
麻生内閣の支持率は、朝日新聞、産経新聞、共同通信の調査で軒並み2割を割り込んだ。逆に、不支持率は読売新聞、NHK、産経、共同の調査でそろって7割を超えた。67%の朝日を含め、国民の3分の2を上回る人々が首相にNOを突きつけたかたちだ。
焦点の定額給付金では、朝日調査で71%が「景気対策として有効ではない」、63%が「支給をやめた方がよい」と答えた。読売調査でも「支給をやめて雇用や社会保障などに使うべきだ」という意見に賛成する人は78%にも達した。
2兆円もの巨費を投入し、国民ひとりひとりに現金を配るというアイデアがこれほど不評なのは、政策の是非の問題を超えて、この政権そのものへの不信の表明と見るべきだ。
そんななか政府与党は衆院で、第2次補正予算案と関連法案を野党の反対を押し切って可決した。
渡辺喜美元行革相がきのう離党に踏み切り、加藤紘一元幹事長は「定額給付金はあまり出来がよくない制度というのが7、8割の自民党議員の心だが、総選挙で公明党にお世話になるから賛成する」と述べている。
加藤氏の言葉が事実なら、自民党は公明党・創価学会の支援欲しさに「出来のよくない」政策に甘んじるということなのか。何とも情けない政党になってしまったものではないか。
国民の暮らしがますます厳しくなるなかで、そんな愚かな政治を続ける余裕がいまの日本にあるはずがない。《記事全文

「給付金」通過 国民を甘く見たごり押しだ(2009年1月14日 毎日新聞社説)

暗たんたる状況である。定額給付金を盛り込んだ08年度第2次補正予算案と関連法案について与党は民主党などが退席する中で衆院本会議の採決に踏み切り、通過した。
給付金の効果や性格づけに疑問がふくらむ中の採決に国民の理解が得られるとは到底、思えない。撤回を主張した渡辺喜美・元行政改革担当相が自民党を離党、同党の松浪健太氏も採決で棄権したことがそれを物語っている。
与党はこれ以上、国会運営のごり押しを進めてはならない。野党も参院で堂々と給付金の削除を求めるのが筋だ。雇用・生活不安が増す中、国会の混乱は早期に収拾すべきである。
与党は給付金への国民の批判を甘くみていると言わざるを得ない。毎日新聞の世論調査(先月)でも7割の人が「評価しない」と答えている。麻生太郎首相が給付金を受け取るかすら態度を表明しない一方で、11閣僚が受け取りを、1閣僚が辞退を表明した。2兆円を投じる政策としてあまりにぶざまな不統一ぶりだ。《記事全文

補正衆院通過 「国民の声」を無視するな(2009年1月14日 西日本新聞社説)

2兆円もの税金を投じるなら、もっと別の有効な使い道があるはずだ。
そんな国民の声を無視するかのように、与党が数の力で押し通した。国会の意思決定と国民の考え方との乖離(かいり)が、これほど露骨に表面化するのは、異常な事態だと指摘せざるを得ない。
総額2兆円の定額給付金を盛り込んだ本年度の第2次補正予算案とその関連法案がきのう、衆院の委員会と本会議で採決され、与党の賛成多数で可決された。
世界同時不況の荒波が、わが国にも押し寄せている。危機に立ち向かう政治の使命が切実に問われているというのに、国会は相も変わらぬ与野党激突で、擦ったもんだの様相である。議事堂の内と外ではまったく世界が違うかのようだ。
共同通信社の世論調査によると、2次補正の予算審議で焦点となった給付金について、「評価しない」とする回答は7割を超えた。
公明党が主張した定額減税が定額給付金に姿を変え、所得制限の是非をめぐって迷走した揚げ句、政府・与党はその判断を地方自治体へ丸投げした。
麻生太郎首相が「ポイントはスピードだ」と打ち上げながら、補正予算案の提出は今国会へずれ込んだ。高額所得者が受け取るのは「さもしい」と戒めたかと思えば、最近は全国民に「盛大に使ってほしい」と呼び掛けている。これでは、国民の理解など深まるわけがない。
世論調査で「2兆円の財源を優先的に使うべき政策」として定額給付金を挙げた人は、わずか3.3%だった。社会保障(42.0%)や雇用対策(26.3%)などを求める声が圧倒的に強かった。
「給付金は白紙撤回して使途を再考すべきだ」というのが民意ではないか。
麻生内閣の支持率は19.2%と2割を切った。不支持率は、給付金を「評価しない」という人と同様、7割に及ぶ。
国民の支持は2割に満たない内閣が、7割の人が評価しない政策を強引に押し通している。これこそ、衆参で第一党が異なる国会の状況よりもはるかに深刻な政治と民意の「ねじれ」ではないか。《記事全文



いつも陽気で仕事を何よりも愛している親友が財務省主計局にいます。
今年元旦に届いた彼からの年賀状には、国のために苦労を厭わない生きがいはおろか、自分の仕事にすっかり失望していることを感じさせる言葉が並んでいました。

無理が道理を駆逐する選挙目当てのバラマキ予算。いったいどこまで未来にツケを廻せば気が済むのか、最近仕事に誇りが持てなくなりました。
公務員には益々厳しい目が向けられ、世の中も一層混沌としていくのでしょうが、希望を失わず、前向きに、そして家族を大事にこの1年を過ごしたいと思います。


政治家が全てそうであるとは言いませんが、力の弱い立場にある役人(ここではあえてキャリア官僚などの高級役人を除きます。)を鬼の首を取ったように批判したり、役人を議員会館に呼びつけ地元支援者の前で恫喝するといった永田町や霞ヶ関という特殊世界でしか通用しない政治家の虚像を、実体をよく知らない国民に印象付けることは、国民に手を合わせ擦り寄るパフォーマンスの準備が整った選挙前(国会議員としての権力が失効する)今こそ大いに反省していただき、めでたく再び国会の扉をくぐることができた時には、是非とも「国民という弱者の目線」を決して忘れない清い心を持った政治家として目先の私利私欲よりも国(全体の利)益のために遺憾なく力を発揮していただきたいと思います。