組織が仕事をするにはチームにならなければならない。トップが優秀であってスタッフが献身的であるにもかかわらず、チームをつくれないために失敗する組織は多い。優れたリーダーといえども、部下を助手として使っていたのではたいしたことはできない。組織は、一人の人間ができることを簡単に超えて成長する。
しかもチームは、自動的に育つものではない。チームをつくるには系統立った作業を必要とする。チームをつくるには人から始めてはならない。なされるべき仕事から始めなければならない。「なされるべきことは何か」を考え、次いで「鍵となる活動は何か」を考える。
チームの編成とは、メンバーの強みを知り、その強みを鍵となる活動に割り当てることである。働き手を配置することである。
よくある間違いは、同じチームにいる者として、みな同じように考え、同じように行動するものと思い込むことである。しかしチームの目的は、メンバーの強みをフルに発揮させ、弱みを意味のないものにすることである。こうして一人ひとりが力を発揮する。大事なことは一人ひとりの強みを共同の働きに結びつけることである。
なされるべき仕事と一人ひとりの強みとのマッチングの後、必要とされる大切なことが二つある。一つは、全員が自らのなすべきことを明確にすることである。もう一つは、全員がその自らがなすべきことをなすうえで必要なことを考えることである。
そのうえで上司、同僚、部下に対し、「こうしてもらえれば助かる。これは困る。私がお役に立っていることは何か。邪魔になっていることは何か」と聞いて回ることである。これで八割方はうまくいく。ただしメモで聞いてはならない。直接会って聞かなければならない。
半年ごとに聞いて回りさえずれば、仕事の障害のほとんどはなくなる。非営利組織のリーダーにとっては、仕事をしたがっている人、仕事をするために来ている人、仕事をする能力をもっている人に、仕事をしてもらうことが最大の責任である。彼らが必要とする道具と情報を提供し、彼らをつまずかせる障害、邪魔になる障害、仕事を遅らせる障害を除去しなければならない。
それらのものが何であるかを知る唯一の方法が、彼ら自身に聞くことである。想像してはならない。直接聞かなければならない。
組織が成長するにつれ、非営利組織のリーダーたる者は、組織の全員に対し「リーダーである私が知るべきことは何か」を考えてくれるよう頼まなければならない。私はこれを「ボス教育」と呼んでいる。しかも、これを考えることによって、組織に働く者全員が、自分の仕事、部署、担当を超えた発想をするようになる。こうして組織の一体性が確保される。
兵士には有能な指揮官をもつ権利があるという。非営利組織のリーダーには、組織に対し、有能なスタッフを配する責任がある。成果をあげられない者をい続けさせることは組織に害をなし、大義に害をなす。
最もよく見られる問題は、22年同じポストにあって仕事に感興をもてなくなった人の処遇である。あまりに長い間同じ仕事をしていれば、誰でも飽きがくる。解決策は、植え替え、すなわち働く場所を替えることである。事実、企業の経理から病院の経理に替わって生き返る人は多い。仕事はほとんど同じである。用語が若干違うだけである。ところが、動いた者は20歳は若返る。燃え尽きた中年が、ちょっと要求されることが変わっただけで生気を回復する。
非営利組織のリーダーにとって難しい問題は、能力重視と仲間意識のバランスである。しかし、結局は「辛いが切る」といえなければならない。むしろそのほうが明快で痛みも小さい。そのようなことで悩む者こそ害をなしているといわなければならない。