自らの成長のために最も優先すべきは卓越性の追求である。そこから充実と自信が生まれる。能力は、仕事の質を変えるだけでなく人間そのものを変えるがゆえに、重大な意味をもつ。能力なくしては、優れた仕事はありえず、自信もありえず、人としての成長もありえない。
何年か前にかかりつけの腕のいい歯医者に聞いたことがある。「あなたは、何によって憶えられたいか」。答えは「あなたを死体解剖する医者が、この人は一流の歯医者にかかっていたといってくれることだ」だった。この人と、食べていくだけの仕事しかしていない歯科医、平凡を旨としている歯科医との差の何と大きなことか。
組織に働く者の場合、自らの成長は組織のミッションと関わりがある。それは、この教会、この学校での仕事に意義ありとする信念や献身と深い関わりがある。仕事のできないことを、設備、資金、人手、時間のせいにしてはならない。それではすべてを世の中のせいにしてしまう。よい仕事ができないのをそれらのせいにすれば、あとは堕落への急坂である。
非営利組織のリーダーにとっては、人の成長を考えることは必須のことである。人は組織とビジョンを共有するからこそ非営利組織で働く。何も得ることのないボランティアが長く働いてくれることなどありえない。金銭的な報酬を得ていないからこそ、仕事そのものから多くを得なければならない。
非営利組織の側にしても、これまでずっとそこにいたから、そのままい続けたいというような、大義を失った人たちを抱えていたくはない。事実、成果に焦点を合わせた優れた非営利組織では、そのような色あせた人たちがい続けられないほど、多くの時間と仕事を要求しているはずである。
非営利組織においては、建設的な不満を醸成しなければならない。有給のスタッフやボランティアが、夜の会議に疲れて、「みんな、なんてばかなのか、どうしてやるべきことをやらないのか」と大声で文句をいい合いながら帰途につく。それでいながら、では、なぜ辞めてしまわないのかと聞かれれば、「とても大事なことだから」と答える。そのような組織をつくり上げる鍵は、全員が、目的の達成には自分の存在が不可欠であると実感できるように仕事を組織することである。