今年の年明けは、天候に恵まれましたので、ランニングで初日の出を見に行ってきました。
輝く太陽の光に照らされながら、今年もいろんなことに愚直に取り組んでいこうと思いました。
今年は、なんでも、「うま(馬)ーく」いきますように!
ついでに、近くの神社に初詣
帰り道、ジブリのアニメに出てきそうな4階建の大きな古い木造の家に出くわしました。
今年の抱負。
さて、学校法人東邦学園愛知東邦大学理事・法人事務局長/学長補佐の増田貴治さんが書かれた論考「大学職員の力量を高める」(文部科学教育通信 No330 2013.12.23)をご紹介します。
◇
かつては「事務屋」で足りた職員
「どこでそんなことが決まった?」「余計なことを言うな」「あなたとは話すつもりはない」。事務所のカウンター越し、教員は一方的に物言いをし、担当職員は丁寧に説明するが、全く耳を貸さずに立ち去った。事情を聞くと、問題を起こした学生への指導の仕方が気に入らなかったという。
大学には教員が中心で、職員はその下請け業務を行うのだという、上下関係の空気がまだ存在する。争いごとやもめごとを避け、何より平穏無事に過ごすことが第一と考える職員も多い。重要な事柄でも課題を見て見ぬ振り、議論を避けて解決を求めることなく放置することさえある。従来と異なることをためらい、同じことを考え繰り返す前例踏襲、公的機関に見られがちな独特の組織文化が、今なお根強い。
大学に属する職員は、自らを「大学職員」と表現する。高等学校までの初等・中等教育機関の事務局では、主に庶務や会計、電話・受付など処理作業を中心とした業務を取り扱う、いわゆる「事務職員」が求められてきた。
かつての大学職員は、「事務」職員であった。業務は組織ではなく個人に張り付く属人的運営。勘や経験に依存した職人スタイルでこなす。日常の業務では、手際のよさを求められ、作業を効率的かつ正確に処理できる職員が"優秀"と評価された。新たな価値創造を考える必要もなく、事務組織の運営は牧歌的。学生募集にそれほど苦労のなかった時代のことである。競争的な環境下で奮闘する現在の大学職員からは想像もつかない。
筆者の最初の配属先だった教務課での業務は、もっぱら授業の教材印刷、会議資料のセット、掲示物の作成など。教員の助手的作業や学部教授会、専門委員会の運営を支援する作業的なものだった。それが専任職員の仕事だ。特に迫られて高等教育機関としての専門能力の発揮を組織的に求められた記憶はほとんどない。
今求められる資質・能力とは
前号でも触れた2008年12月の中央教育審議会答申『学士課程教育の構築に向けて』は、特に高度化・複雑化する大学の課題に対応していく大学職員に求められる資質・能力について、次のように示している。
「例えば、コミュニケーション能力、戦略的な企画能力やマネジメント能力、複数の業務領域での知見(総務、財務、人事、企画、教務、研究、社会連携、生涯学習など)、大学問題に関する基礎的な知識・理解などが挙げられる。加えて、新たな職員業務として需要が生じてきているものとしては、インストラクショナル・デザイナーといった教育方法の改革の実践を支える人材が挙げられる。また、研究コーディネーター、学生生活支援ソーシャルワーカー、大学の諸活動に関するデータを収集・分析し、経営を支援する職員といった多様な職種が考えられる。(中略)財務や教務などの伝統的な業務領域においても、期待される内容・水準は大きく変化しつつある」。「事務職員」から脱して、「大学アドミニストレーター」を必要とされているのである。
政策決定への事務局の影響
答申に指摘されるまでもなく、大学職員は既に様々な政策決定や業務執行に、深く関与しているようだ。
日本私立大学協会附置私学高等教育研究所の私大マネジメント改革プロジェクトチーム(筆者も参画)が2009年に実施した「事務局職員の力量形成に関する調査」によると、事務職員の影響度合いが「かなりある」と答えた項目は、管理運営業務面で、「施設計画」(71.4%)、「財政計画(運用)」(71.0%)、「事業計画」(66.7%)、「情報化計画」(59.7%)、中長期計画(将来構想)(58.0%)があり、50%を超す。教学支援業務面では「就職支援」(84.4%)、「学生募集」(84.0%)、「学生支援」(71.9%)と回答、影響度が非常に高い。
一方、教育・研究に関する項目では「教育計画」(19.9%)、「研究計画の推進」(10.0%)と回答、影響度合いが「少しある」もしくは「ほとんどない」の割合が高い。この分野は教員の役割が強く反映される領域であることがわかる。教員との協働関係が求められるとすれば、これらの領域に対しても、活動全体を俯瞰できる専門家になれるかが大学職員の大きな課題だろう。
経営的思考に立って業務に当たる
「競争と淘汰」が一層激しくなる大学情勢。少子化国際化の進展に伴う大学間競争の激化、大学設置基準等の規制改革、基盤的経費の縮小と競争的資金の拡大など、とりわけ地方の中小規模私立大学にとっては深刻な状況が進行する。定員未充足大学、帰属収入で支出を賄えない大学、募集停止大学が増え、大学はまさに「運営」の時代から「経営」の時代に入った。
私立大学の管理運営には、社会環境の目まぐるしい変化を十分に理解し、専門知識や幅広い見識を学習して実践に応用できる力が不可欠である。直面する教学・経営課題に応えられる教学経営組織の機能強化、支援・推進組織の整備などが必要とされる。
教育改革を支える教学系職員、経営改革を支える総務系職員。いずれも経営的思考を持ち、教員を巻き込んで企画・提案していく力量がどれだけあるかが、ひいては大学力を左右する。所属する大学の特徴や強みを生かして、大学の維持・発展に今何が求められているかを認識し、戦略を練り上げて政策化できる力が問われる。改革実行の成否は、職員の力量しだいであるという意識が少しずつ学内外に浸透してきている。
職員の能力を磨き上げる
そうした環境では、実務を担う職員のキャリアアップや、力量向上を目指す研修・研究活動のあり方が喫緊の課題となる。
キャリアアップに有効な手段としては、学会、研究会、ワークショップ、研修会などへの継続的な参加、そして大学院での学修である。特に大学院の活用は、調査・分析・議論・発表などの様々な研究活動を通じて、独自のテーマを結晶化する学びの機会として優れていると考えている。体系化した教育カリキュラム(調査・分析・議論・発表などの教育研究プログラム)を通じて、実践した経験を客観的に分析・考察して理論化・手法化する。
これを繰り返すことは課題解決力を鍛えることとなり、共通のノウハウへとつながる。また、教職協働を推進する上にも、領域研究は、教員とのコミュニケーションを深め、お互いの領域を理解することができる。いずれにせよ、戦略的思考による政策立案力や組織力向上のマネジメントカなど、それぞれの大学において、新旧様々な業務から職員に求められる能力とは何かを明確にして、鍛え上げていくことが求められている。
「事務屋」からの飛躍。名刺に「大学アドミニストレーター」との肩書きが添えられる日はそれほど遠くない。