文部科学時報(文教ニュース 平成26年1月6・13日)から「寅さんも期待する大学改革」をご紹介します。
年が改まり、教育再生の年ということで、いよいよ大学改革本番。まずは入試。入試というと、平成4年の東大入試にも出た、寅さんの名文句。
「インテリというのは自分で考えすぎますからね、そのうち俺は何を考えていただろうって、分かんなくなってくるんです。つまり、このテレビの裏っ方でいいますと、配線がガチャガチャにこみ入っているわけなんですよね・・・」
とはいうものの、この課題先進国で、高等教育だけが唯一の希望と言われる中では、インテリがどうかはさておき、「裏っ方」も含めたすべての大学人は、まずはやっぱり考えて考えて考えぬかないと。そして、議論を重ねないと。
よく、大学の議論は「薄皮饅頭」にたとえられ、餡(案)ばかりだと揶揄されるが、学問の府が、まともな検討や議論を放棄することは許されないし、教育上からは学生、地域に根ざしている観点からは市民や社会も巻き込むことも必要だ。
寅さんは、進路に悩む甥の満男の「何のために大学へ行くのか」の問いに、「人間長い間生きてりゃいろんな事にぶつかるだろう。な、そんな時オレみてえに勉強してない奴は、この振ったサイコロの出た目で決めるとかその時の気分で決めるしかしようがないな。ところが、勉強した奴は自分の頭でキチンと筋道を立てて、はて、こういう時はどうしたらいいかなと考えることが出来るんだ。だからみんな大学に行くんじゃねえのか」とこたえていた。
我々は寅さんの期待にこたえられるだろうか。中教審の唱える「国民一人一人が主体的な思考力や構想力を育み、想定外の困難に処する判断力の源泉となるよう教養、知識、経験を積む」大学像と見事に符牒があうが、そんな大学をめざして、まずは、大学人として、自分たちの頭でキチンと筋道立てて検討しなきや。
今年は甲午、うま年だ。
「一筆啓上火の用心おせん泣かすな馬肥やせ」
日本一短い手紙として有名だが、原文は、「一筆申す 火の用心 お仙痩さすな 馬肥やせ かしく」で、徳川家康の家臣の本多重次が長篠の戦いの陣中から妻にあてて、嫡子・仙千代のことなどを案じて出したものとされている。家中や跡取り、そして戦さの場で命を預ける馬の世話を怠りなくせよ、と簡潔な中に万感のおもいをこめた名文である。
まさに「馬肥やせ」。
畢竟、我々の言葉に置き換えれば、まずは一意専心教育。そのための教育・研究スタッフと最先端の施設・設備の充実、さらには組織のマネジメントをということか。
大学がその強み・特色を最大限に生かし、自ら改善・発展する仕組みを構築することにより、持続的な「競争力」を持ち、高い付加価値を生み出す(「国立大学改革プラン」)ためには、まさに「駿馬」を育てねばならぬし、名伯楽よろしくその目利き(入試)、養成(教育、診療)、開発(研究)をし続けねばならない、ということ。
その決意を表し、考え、そして実行する、「馬肥やす」午年にしたいものだ。
さらに、寅さんは言う。「しっかり勉強して下さいね。私たちの分も」