12月25日に政府の規制改革会議がとりまとめた「規制改革推進のための第2次答申」は、報道を見る限りでは「骨抜き」「後退」などと揶揄されていますが、高等教育関係についてはどうでしょうか。
答申中「具体的施策」として提言されている主なものを見てみましょう。
教育・研究分野
教育と研究の適切な評価に基づく公費配分ルールの見直し等
教育・研究の質向上に向け、大学独自の努力を促す観点から、公費の配分額を大学の努力と成果に応じたものとすることは必要なことである。
学生や国民に対する情報提供の観点から、各大学の独自性を損なわないような配慮を行った上で、例えば、教員一人当たりの学生数、校地校舎面積、図書館蔵書数、教員の研究業績等の共通の情報の提出・開示を求めるべきである。
教育研究の評価については、文章表現の巧拙によって評価が左右されることなどないよう、このような法人からの根拠資料・データを客観的に把握した上で、これを分析することを評価に含ませるべきである。
上記以外については、当初の目標を低く設定すればその達成が容易となり評価が高くなりかねない仕組みとならないよう、評価の客観性を担保するため、共通の観点も適用すべきである。
その際、「評価に係る業務が国立大学の教職員の過度の負担とならないよう努める」との国立大学法人法案の附帯決議を踏まえ、例えば、
- 自己点検・評価や認証評価のために整えた根拠データ等を、法人の判断で国立大学法人評価に活用できることとする
- 平成19年度評価と中期目標期間の評価について、これまでに提出した資料・データについては資料の添付を省略することとする
- 平成19年度における目標・計画の達成・実施状況を調査・分析するという作業の類似性に鑑み、平成19年度の業務実績に係る報告書と中期目標期間の業務実績に係る報告書(平成16年~平成19年度)の様式を一体のものとする
国立大学法人の次期中期目標期間における運営費交付金の配分に際して、上記内容を含め、各大学の教育・研究それぞれの努力と成果に応じた適切な評価を実施した上でその評価に基づいた適切な配分が実現できるよう、国立大学法人運営費交付金の新たな配分の在り方について具体的検討を行い、平成19 年度内を目途に見直しの方向性を明らかにすべきである。【平成19年度内を目途に措置】
競争的研究資金の配分の見直し
以下の事項について、それぞれ後述する対応を行うこととする。その際、関係府省においては、「競争的資金の拡充と制度改革の推進について(平成19 年6月14日総合科学技術会議基本政策推進専門調査会)」を踏まえることとする。
■研究者の特性等に応じた競争的研究資金の審査・評価方法の確立(内閣府・総務省・国土交通省・環境省)【平成20年度中結論】
競争的研究資金の審査・評価に際しては、研究分野や制度の趣旨・目的を踏まえて適切な方法により審査・評価を行う必要がある。
また、主に業績が十分に定まらない若手研究者等について、導入にあたっての課題の解決を図りつつ、一定の試行を行い、その効果を十分検証した上で「マスキング評価」を導入することを図るべきである。
主に中堅以上の研究者に関する研究者としての評価は、所属組織や機関のみに着目するのではなく、「過去の実績を十分に考慮した評価」とすべきである。
また、これらを導入する場合には、これら評価方式に基づく資金配分について、研究者の資質や専門分野に応じて選択可能とすべきである。
■競争的研究資金における客観的な審査・評価基準の構築(内閣府・総務省・国土交通省・環境省)【平成20年度中検討・結論】
競争的研究資金については、「研究者の自由な発想に基づく研究資金」と「政策に基づき将来の応用を目指す研究(以下「政策課題対応型研究開発」という。)のための資金」とに区分され、これらについては審査・評価の視点が異なるため、制度の趣旨・目的に応じて、研究者の自由な発想に基づく研究と政策課題対応型研究開発それぞれの審査・評価基準を定めて、それに基づいた審査・評価を行うべきである。
なお、両者の目的が混在した研究については、それぞれのウエイトに応じた審査・評価基準に基づき審査・評価を行うべきである。
(ア)研究者の自由な発想に基づく研究
a 審査
研究業績に対する評価は、将来的には民間学術誌の格付けや民間学術団体の厳正な調査に基づく評価を十分に活用すべきと考える。
競争的研究資金の審査における基準を確立するにあたっては、これらの評価が適切に反映した客観的で反証可能性のある厳正な基準とすべきである。
学術的な成果をもたらす領域においては、研究能力を示す過去の関連論文等の資料、過去に助成を受けた研究費に対するbの基準に基づく学術的成果など、過去の研究実績について、学術誌の格付け、定評のある賞の受賞経験等の客観的指標に関し研究分野の特性を踏まえ定量化を図りつつ、研究者としての評価を過去実績を十分に考慮して行った上で、研究助成の採否を決定すべきである。
b 事後評価
上記に基づいて決定された予算に対して適切な学術的な成果が達成されたか否かを厳正に評価すべきである。
研究費の無駄の排除を促し、効率的な研究を推進していくため、総研究費に対してどの程度の研究成果が達成されたか、達成される見込みであるかなどといった観点等を踏まえ、これを審査や事後評価に活用すべきであり、その際、関連する論文の本数や学術誌の格付け、定評のある賞の受賞経験等の客観的指標について研究分野の特性を踏まえ定量化した上で評価すべきである。
また、事後評価を厳正に行うと共にその結果を審査にも具体的に反映させることにより、優れた研究を行うことが次の研究に繫がるという好循環サイクルを確立すべきである。
(イ)政策課題対応型研究開発
a 審査
政策課題対応型研究開発については、必ずしも学術的な研究成果のみを期待するものではないが、当該研究の目的に関連する過去の政策提言、技術開発の成果等の具体的な実績についてbの基準に基づき研究分野の特性を踏まえ定量化を図りつつ、研究者としての評価を過去実績を十分に考慮して行った上で、着想や研究計画を勘案して、研究助成の採否を決定すべきである。
b 事後評価
採択した結果の事後評価については、政策実現に寄与したのか、技術開発に寄与したのか等を厳正かつ定量的、客観的に評価する仕組みを確立するよう図るべきである。
また、事後評価を厳正に行うと共にその結果を審査にも活用することにより、優れた研究を行うことが次の研究に繫がるという好循環サイクルを確立すべきである。
■審査・評価者に関する適切な情報開示
(ア)内閣府・総務省・文部科学省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省)【平成20年度中措置】
競争的研究資金制度の審査・評価に係る審査・評価者がその分野の審査・評価に相応しい十分な学識を有していることが必要である。
審査・評価者の業績又は実績(研究論文、著作、学術的発表の実績、実務家については発明実績等)について適切な時期にホームページ等で公開する等により審査・評価者として相応しい者であることの説明責任を果たすべきである。
(イ)厚生労働省【平成20年度中措置】
競争的研究資金制度の審査・評価に係る審査・評価者がその分野の審査・評価に相応しい十分な学識を有していることが必要である。
審査・評価者の業績又は実績(研究論文、著作、学術的発表の実績、実務家については発明実績等などのうち適切なもの)について適切な時期にホームページ等で公開する等により審査・評価者として相応しい者であることの説明責任を果たすべきである。