教育振興基本計画特別部会の審議状況
中央教育審議会教育振興基本計画特別部会は、12月5日に関係団体からのヒアリングを行いました。
高等教育関係の団体として、社団法人国立大学協会、公立大学協会、全国公立短期大学協会、日本私立大学団体連合会、日本私立短期大学協会、全国専修学校各種学校総連合会、高等専門学校連合会が意見発表を行いました。
この中で、例えば以下のような意見が寄せられました。
- 0.5%と極めて低い状況にある我が国の国内総生産(GDP)に対する高等教育への公財政支出の比率を、大学の国際的通用性の確保はもとより、世界の平和と人類の発展に寄与するために、OECD諸国並み(約1%程度)の水準へと高めるべきである。
- 我が国の大学が国際的知的優位性を確保するとともに、我が国の発展を支える人材を輩出していくことができるよう、2030年において高等教育への5兆円の投資を実現するという長期的な見通しのもとに、高等教育への明確な資金投入の目標額が設定されることを強く期待する。
- 教育の振興に資する寄附の促進等について、税制上の措置等の充実を図ることは既に記述されているが、大学の特性として、最先端の研究を行っていく上でも多くの資金を必要とすることから、教育研究の振興に資する寄附の促進等、研究面も含めた表現にしていただきたい。
日本学生支援機構の見直しに関する議論
独立行政法人整理合理化計画に関して、12月5日、渡海文科大臣と渡辺行革担当大臣の折衝が行われました。
渡辺大臣からは、日本学生支援機構(以下、機構)について、
- 機構が直接学生に資金を貸すことをやめて、民間金融機関に対する債務保証・利子補給に移行すべきではないか。又は、国民生活金融公庫(以下、公庫)も教育ローンを行っていることから、学生に対するローンを行ってもおかしくないところであり、公庫へ移管すべきではないか
- 民間金融機関又は公庫で貸付、回収業務を行えば、機構は非常にスリムになるとのご提案がありました。
これに対して、渡海大臣は、この提案では、
- 低金利、在学中無利子、返還期限の猶予など、教育的配慮の下に学生に有利な条件で資金を貸与すること
- 大学等の協力を得て低い事務コストで貸与事業を実施すること
- 在学中の学生が奨学金を貸与する対象として適格か否かを判断するために、大学等との密接な連携が不可欠であるだけでなく、機構が行っている学生生活支援事業や留学生支援事業と一体的・総合的に実施することが担保できないため受け入れられないとの見解を表明しております。
奨学金貸与事業を、民間又は公庫で行うという提案は、教育政策の観点からも、経済合理性の観点からも適切ではなく、文科省としては、債権回収の抜本的な強化など必要な改革を行うとともに、奨学金貸与事業の拡充に取り組むため、引き続き機構で責任を持って実施することが必要と考えています。
自由民主党 文部科学部会・文教制度調査会 合同会議 大学・大学院等教育小委員会における緊急提言
自由民主党文部科学部会・文教制度調査会合同会議大学・大学院等教育小委員会(小坂憲次小委員長)は、「大学を核とした地域再生」と題した緊急提言を行いました。
同小委員会は、本年5月に発足以来、7回の会合を開催しています。
夏前の3回の会合では国立大学協会、日本私立大学団体連合会、公立大学協会等のヒアリングが行われました。
また、秋以降の4回の会合では、「地域再生と大学」というテーマで、地域貢献に取り組む大学の事例等をもとに議論を行われました。
今回の提言は、平成20年度の予算編成を前に、緊急に対応すべき課題として以下の3つの点を提起し、12月5日の文部科学部会・文教制度調査会合同会議に報告しています。
- 大学等の教育研究活動の生命線である私学助成や国立大学法人等運営費交付金・施設整備費補助金を確実に措置すること。
- 地域における国公私を通じた大学間の連携を促進し、教育研究環境の充実・強化等を図るための財政的・制度的な支援策を講ずること。
- 大学等の自助努力による財源確保を促し、財務を強化するため、地方公共団体や民間の資金をさらに導入・活用できるような制度・税制の環境整備を行うこと。
編集後記
教育振興基本計画に関するヒアリングが実施され、高等教育関係団体からの意見・要望も多数寄せられました。
高等教育への財政支援の充実、そのための目標設定を望む声が大きいことが確かめられました。
また、それらの中では、大学に対する民間寄附の大幅な拡大を目指すビジョンも提案されています。
最近の週刊誌で、M&Aで有名になった、ある日本人企業家に関する記事が載っていました(AERA10月29日)。
テレビを通じての印象は、時に倣岸、いかにも精力的なマネーゲームのプレーヤー。
しかし、そうしたイメージと裏腹に、子ども向けの財団、児童養護施設の設立に私財を投じているとのことでした。
自身に子どもがいないため、「全財産を社会のために使いきろうと考えている」との由です。
大学自身の改革とともに、我が国の「寄附文化」の形成が急務と言われます。
その成否については様々な見方があり、悲観的な意見も少なくありません。
「社会のため」を考える寄附者の選択肢の中に、「大学のため」が入るかどうか。
それは、制度の問題のみならず、大学自身の努力によるところが大きいのではないでしょうか。