2011年2月17日木曜日

あなただったらどうしますか

来る2月19日(土曜日)に、九州・福岡の西南学院大学において、九州地域大学教育改善FD・SDネットワーク(Kyushu Learning Improvement Network for Staff Members in Higher Education:Q-Links)主催の「Q-conference2010」が開催されることになっています。
Q-Linksのホームページを覗いてみますと、”企画セッション”の開催に当たって、事前に資料がアップされてありました。どうやら、大学の組織にまつわるエピソードを紹介し、このエピソードを手がかりに、フロアとの意見交換を行うようです。

早速読んでみましたが、大学において仕事がスムーズに進まない、とても身近な事例が描かれてあり、まさに”ビンゴ”といった内容でした。

さて、なかなか難しいケーススタディですが、自分がその立場だったら、目の前にそういう立場に置かれている人がいたら、あなたはどうしますか。土曜日ですが、興味のある方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

ケース1 国際広報はどの部署の仕事?

地方都市にあるA大学で、研究成果を海外向け広報に役立てようとする試みが始まった。しかし、実際に担当する部署が決まらす、計画を遂行することができない。新規事業を担当する部署が決まらない場合に、どのような学内協議と意見調整をおこなうべきか、を考える。

あなたの大学で、国際広報のためのワーキング・グループが発足し、英語による広報を拡充していくことが検討された。このワーキング・グループの検討結果に基づき、学内の研究成果を英文記事にしたうえ、オンライン上で情報配信することが決定された。しかし、英語での論文発表の多い教員の選定、研究成果を英文記事にする業務、メルマガ方式で海外の研究者に情報発信する業務などをどの部署が担当するか、が決まっていない。研究助成部門、広報部門、国際連携部門などが候補にあがったが、どのセクションにも十分な人員配置と予算がないため、意見調整がはかどらなかった。学長の裁量予算を振り向けることが決まり、英語力のあるスタッフが配属されている研究助成部門、国際連携部門のどちらかで対応することになった。しかし、両部門の管理職は「既存業務で多忙なため対応できない」と反発している。学長命令により、総務課長であるあなたが部門間の調整を行うことになり、管理職を集めた会議で解決策を協議することになった。

研究助成部門、国際連携部門の管理職は、事業予算の配分だけではなく、スタッフの増員がなければ対応できない、としている。しかし、財務当局および人事部は新規事業で専任スタッフを配置することは認められない、としている。A大学の業務分掌においては、「どの係にも属さない業務は総務担当が実施する」ことになっており、新規事業で担当部署が決まらない場合、総務担当部門で業務を遂行しなければならなくなる可能性がある。ただでさえ、危機管理や情報公開などの新規業務で総務部門の職員は忙殺されているため、総務担当課長であるあなたとしては本事業を総務部門で担当することはどうしても避けたいと考えている。

一方、一部の教員の間では、英語での研究発表がある者だけを重視するかのような国際広報の方針に対して反発の声が上がり、ある学部の教授会では方針そのものを見直すように、との意見が多数を占めた。こうした教員の反発に対してもなんらかの説明をして理解を得るようにしなければならない。

学長からは、本事業の遂行を一日も早く着手するように求められているため、事態を放置することは許されない。教授会への対応も含め、総務課長としてあなたはどう対処すべきか?

ケース2 授業評価は誰のためのものか?

東京郊外にある私立大学、B大学の授業評価にかかわるケース。授業評価が本来の目的である授業改善に役立っておらず、教員自らが評価結果を無視している状況下で、教務担当の職員が批判的な報告を発表した。これに対して教員組織から強い反発があり、担当部署の管理職としてどのような対応をするかが問われている。

教務担当課長であるあなたの部署では、毎学期ごとに実施する授業評価を担当している。過去5年の授業評価において、2名の教員が学生から極端に低い評価を受け、70%以上の受講者が「この授業を後輩に薦めない」としている。授業評価の結果は学生には公開されていないが、学生が自主的にネット上でおこなう評価でも当該2名の教員の授業は「楽勝科目だが何も学べない授業」として名指しで批判をされている。保護者からも大学あてに改善を求める苦情メールが送られてきている。授業評価は授業改善を目的として実施しているものだが、2名の教員の場合、毎年、同じ教材を使い同様の講義内容をくりかえしているため、授業評価を改善材料として考慮していないことは明らかである。二名の教員のうち一人は「人気投票のために授業をしているのではない」と授業中に公言したことでも知られており、いわば「確信犯」として授業評価を無視してきたと考えられる。今年度の自己評価・点検報告の中で、あなたの部下である係主任は「授業評価の結果が改善につながっていないケースがみられる」「一部の講義科目においては、学生および保護者から授業改善を求める声が寄せられている」と記述した。

この報告の記述が教授会で問題となり、「教員を評価するための道具として授業評価の結果が使われるべきではない」など、反発の声が寄せられている。また、教職員組合との取り決めにより「授業評価は教員自らが授業の改善に役立てることを目的とする」とされ、評価結果は人事考課のために使用しないことがB大学の基本方針となっている。教授会の多数意見は、今回の自己評価・点検報告の記述を不適切とうけとめ、内容の修正と謝罪を求めている。次回の教授会において、担当課長であるあなたは記述の修正報告と謝罪をすることが期待されている。

一方、当該の係主任をはじめ一部の職員たちは、「これらの教員2名は、5年以上にわたって授業評価結果を無視し、改善を怠っていること明らか」「報告の記述は職務に忠実に対応した結果のものであり、謝罪や記述修正をする必要はない」と主張している。あなたは、今回のケースで、一方的に謝罪および記述修正を受け入れた場合に、部下の職務上のモラル低下を生む可能性があると認識している。また、一部の学生や保護者の間で、授業評価結果がどのように授業内容の改善に役立っているのか、を疑問視する声があがっている。

教務担当課長として教授会の意向を無視することはできない。一方、授業評価の本来の目的に立ちかえり、学生の教育に資するように授業改善につなげていく努力が必要であることも認識している。授業評価担当部署の管理職として、あなたほどのように対処すべきか?