2013年6月26日水曜日

「大学力」は国力そのもの

去る6月20日(木曜日)に文部科学省で開催された「国立大学法人学長・大学共同利用機関法人機構長等会議」における下村文部科学大臣の挨拶(要旨)をご紹介します。



皆さんおはようございます。文部科学大臣の下村博文でございます。

本日は、御多忙のところ、本会議に御出席いただきまして、ありがとうございます。厚く感謝御礼申し上げたいと思います。また、各学長・機構長におかれましてては、日頃より我が国の高等教育と学術研究の発展にご尽力いただきまして、感謝申し上げます。

今、グローバル化が急速に進展するなど、社会経済の構造は大きく変化しています。アジア最大の成熟社会である我が国が発展し続けるためには、次代を担う人材を育成すること、そして、今は目の前にない新しい社会的な価値を、世界に先んじて創出することが求められています。

私は、大学教育の最重要課題は量的な拡大と質的な向上をともに進めていくことだと考えています。世界を見れば、この20年で成長を遂げた国々は、いずれも大学教育に力を入れてきました。我が国も負けずに大学教育に力を入れる必要が、今まで以上にあると考えています。

私は、安倍内閣の最重要課題である教育再生の大きな柱として、従来の教育やマネジメントの在り方の見直しなど、大学改革を力強く進める必要があると考えています。

安倍総理も、「大学力」は国力そのものであり、大学の強化なくして、我が国の発展はないということを強調されておられます。

こうした観点から、教育再生実行会議は、多くの有識者に様々な角度から御議論いただき、一つに、グローバル化への対応やイノベーション創出のための環境づくり、二つ目に、学生を鍛え上げ社会に送り出す教育機能の強化、三つ目に、社会人の学び直し、四つ目に、大学のガバナンス改革等を通じた経営基盤の強化、を盛り込んだ第三次提言を取りまとめました。

さらに現在、高大接続や大学入試の在り方など、国立大学の在り方にも深く関わる議論が行われています。特にこの分野については、これから教育再生実行会議の中で、委員の皆さんの意見も聴きながら、慎重に、しかし大胆な大学入学試験の在り方について、とりまとめをしていく予定でございます。

私としても、文部科学大臣に就任以来、大学の機能強化に取り組んで参りました。

例えば、学生が学業に専念し、海外留学など多様な経験ができる環境を整えたいという思いのもと、就職活動時期の後ろ倒しにも取り組んで参りました。4月に総理が各経済団体に要請されるとともに、私からも、国立大学協会の濱田会長(当時)をはじめ、各大学に対して、大学自身も大学教育の質的転換に取り組んでいただくようお願いをいたしました。

また、意欲と能力に富むすべての学生の留学実現に向け、新たな仕組みの検討も開始しております。

各大学には、このような動向を踏まえ、国民や社会の期待に応える大学改革を、受け身ではなく主体的に実行していくことが求められていると思います。私も、そのような大学こそ、しっかりと支援をしていきたいと考えております。

以下、私の考えを何点かに渡って申し述べさせていただきたいと思います。

まず第一でございますが、国立大学への社会の期待が大いに高まっているということを改めて認識していただきたいということでございます。

安倍総理からは、4月に、産業競争力会議の議論を踏まえ、人材育成機能強化、人材のグローバル化推進のため、国立大学について改革パッケージを取りまとめるよう指示をいただきました。

総理の指示を受け、私からは、産業競争力会議において、社会の変化や学術研究の進展をリードし、我が国の持続的成長のエンジンとなるべく、スピード感をもって国立大学の大胆なグローバル化、システム改革等を進めていく決意を伝えさせていただきました。

私は、産業競争力会議をはじめ様々な場で、産業界など社会と真正面から向き合い、人材育成や学術研究、産学連携などを通じて我が国の成長と発展に貢献してほしい、といった国立大学への社会の強い期待を重ねて痛感をいたしました。その切実さは、逆にこのような機能を、現在の規模の国立大学では果たせないということであればこれは不要である、「淘汰や統廃合が必要」、こういう厳しい意見も出てきております。

このことが、先週14日に閣議決定した「骨太の方針」や「日本再興戦略」には、これまで以上に国立大学が成長戦略の主人公として位置付けられている背景になっているということについて、御認識をいただきたいと思います。改めて学長や機構長の先生方にお伝えをさせていただきたいということで、申し上げているところでございます。

第二は、ガバナンス改革と学長の役割でございます。

大学に対する社会の高い期待に応えるためには、各大学において大胆な機能強化に主体的に取り組むことが求められており、学長を中心としたマネジメントはその鍵であります。

教育再生実行会議等の議論においては、「改革を否定しがちな教授会についてはその役割の明確化が必要」など、大学のマネジメントについて厳しい声も寄せられました。

本日のお集まりの学長におかれては、日々改革に向けてご尽力をいただいているという風に思います。学長のリーダーシップのもと、これまでにない構想力やアイディアを引き出し、主体的に改革に取り組むことこそが、大学の機能を最大化することにつながることは言うまでもありません。

しかし、思い切った改革を実行するに当たっては、学部や研究科といった組織が改革マインドを共有してくれない、学長を支えるスタッフが十分ではない、学長が自分のアイディアに基づいてなかなか資源配分ができない等々、いろいろ乗り越えなければならない壁もあるという風に思います。

学長のリーダーシップが十分に発揮できる体制になっているのか、例えば、教授会の機能は適切か、理事・副学長、学部長に部局横並びや順送りではなく大学の機能強化を担う適任者が任命されているのか、見直すべき点は多々あると考えます。

私は、教育再生実行会議や中央教育審議会の審議なども踏まえ、制度改革に取組み、学長が更にやり甲斐をもって学内をリードできるよう、努力したいと考えています。

第三は、国立大学の機能強化についてであります。

教育再生実行会議の第三次提言のほか、「日本再興戦略」においては、今後10年間で、「世界大学ランキングトップ100に10校以上のランクイン」といった大きな目標も掲げました。

先駆的な取組は既に始まっております。例えば、グローバル化の観点から、秋入学や入試改善、外国人教員の戦略的招へいなどに取り組んでいる大学もあります。

こういう大学については、積極的に、国をあげて支援をしていきたいと、改めて決意を申し上げさせていただきます。

もとより、これらの取組は、今までできなかった課題も含まれており、決して平坦な道ではないと思います。しかし、私どもとしては、個々の大学の取組だけにお任せするということではなく、こういった各大学の意欲に対して、国をあげて、文部科学省をあげてしっかりと支援するということを改めて申し上げさせていただきたいと思います。

例えば、グローバル化対応、中でも、秋入学・ギャップターム推進については、先週、私から、有識者等からなる「検討会議」を設置することを公表いたしました。私としては、さらに、海外のトップ大学をユニット型で誘致するなど「スーパーグローバル大学」を形成することが必要であるという風に考えています。

しかしこれは、国が特定の大学に対して、文部科学省が強制するわけではありません。意欲的な大学に対して、積極的に、これも支援をするという仕組みを作ってまいりたいと思っております。

また、イノベーション機能の強化については、「理工系人材育成戦略」を策定し、理工系分野を強化しつつ、産業界と連携しながら研究成果を活用した新しい価値を生み出すことも重要であります。

そのためにも人事・給与システムの柔軟性が求められております。

これらの、その大学でなければならない/できない機能強化に取り組む大学を、予算・制度両面にわたって積極的に応援したいと考えています。

他方、国立大学であることやこれまでの伝統や蓄積の上であぐらをかき、社会の構造的な変化や時代の流れに取り残されている大学は、その存在が問われかねない状況にあるということについて、改めて御認識をしていただきたいと思います。

各国立大学等の果たす役割、これに対する期待は、これまでになく高まっております。各学長・機構長におかれましては、大学に対する強い期待に、今ここで的確に、この時期に応えなければ、国立大学としての存在意義が問われかねないという緊張感を持ちつつ、組織の最高責任者としての職責を果たし、よりよい大学に向けてご尽力いただきますように、お願いを申し上げたいと思います。

文部科学省としても、国立大学の機能強化に向けて、本日、「今後の国立大学の機能強化に向けての考え方」を示させていただくとともに、具体的な改革工程を盛り込んだ「国立大学改革プラン」を今年夏をめどに策定することとしております。

各大学におかれましても、こうした国の動向や社会の急速な変化に対応しつつ、10年先、20年先を見据えた各大学の改革のシナリオに基づく全学的な機能強化にお取り組みいただくことをお願い申し上げたいと思います。私としても、主体的・能動的に改革に取り組む大学については、これまでにない思い切った支援をしたいということを、改めて申し上げさせていただきたいと思います。

最後になりますが、各国立大学法人・大学共同利用機関法人の今後益々の発展を祈念いたしまして、期待とともに、私の挨拶とさせていただきます。