2014年9月27日土曜日

大学内部規則の総点検・見直し

過日、大学のガバナンス改革を推進するための法令改正(学校教育法、国立大学法人法)が行われたことについてご紹介しました。

また、改正された法令の趣旨や取り組むべき事項を周知するために発出されたいわゆる「施行通知」についてもあわせてご紹介したところです。


各大学は、改正された法令が施行される来年4月1日に向け、施行通知に示された事項を確実に実施することが求められています。

特に、法令改正の趣旨を具体化するための「内部規則等の総点検・見直し」については、多くの時間と労力を必要とする作業となることが想定され、法規担当者はもとより、全学教職員の理解と協力が重要になってきます。


まずは、施行通知に示された関連部分を抜粋してみます。


内部規則の総点検・見直し

1)今回の法改正を契機に、各大学等においては、改正法及び改正省令の施行期日までに、内部規則全体の解釈及び実態の運用と照らし合わせた上で、関係する内部規則について、法改正の趣旨を適切に踏まえたものか総点検し、必要な見直しを行うことが求められること。

その際、各大学等においては、今回の改正事項のうち、教授会の役割の明確化(学校教育法第93条関係)、学長等選考の透明化(国立大学法人法第12条、第26条関係)、経営協議会(国立大学法人法第20条第3項、第27条第3項関係)及び教育研究評議会(国立大学法人法第21条第3項関係)の構成については、改正法の施行を待たずに、各大学等の判断によって内部規則等を見直すことが可能であることに留意した上で、計画的に総点検・見直しを行っていくこと

なお、改正法及び改正省令の施行期日までは、学校教育法施行規則第144条が有効であることに留意すること。

2)内部規則の総点検・見直しの作業は、法改正の趣旨を学内等の教職員に広く周知・徹底した上で、全学的に実施すること

3)内部規則の総点検・見直しに当たっては、規定上の個別の文言のみで判断すべきではなく、内部規則相互の整合性や上下関係・優先関係を確認し、全体を分かりやすく体系化した上で、学長の校務に関する最終決定権が内部規則全体の体系の中で担保されるようにすること

また、意思決定における各機関の責任を再確認し、学長の決定に至るまでの適切な意思決定過程を確立すること

4)内部規則の最終的な決定権は、大学の設置者又は学長が有しており、大学の設置者や学長が、教授会の決定に拘束されるような内容又は手続を規定する内部規則については、見直しが求められること

5)国立大学法人及び公立大学法人においては、法人化以降は教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)に定められた教員の採用、昇任、転任、降任、免職、懲戒等(以下「採用等」という。)に関する規定は適用されておらず、教員の採用等については、法律上、審議機関とされている教授会や教育研究評議会、教育研究審議機関に決定権は付与されていないことを踏まえながら、学長の校務に関する最終決定権が担保されているかという観点から、内部規則の適切な総点検・見直しを行うことが求められること


次に、施行通知を踏まえ、去る8月29日付けで、文部科学省(高等教育局大学振興課・国立大学法人支援課連名)から、各国公私立大学長宛に発出された事務連絡を見てみましょう。

内部規則等の総点検・見直しの実施について(下線は小生)

このたび、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」及び「学校教育法施行規則及び国立大学法人法施行規則の一部を改正する省令」が成立し、各大学等に対して、文部科学省高等教育局長及び研究振興局長通知(26文科高第441号)を発出したところですが、同通知でもお知らせしているとおり、各大学においては、法律の施行日である平成27年4月1日までに、改正法の趣旨を踏まえた内部規則や運用の総点検・見直しを行うことが求められます。

文部科学省においては、各大学における内部規則等の総点検・見直しが適切に行われるよう、大学における内部規則・運用見直しチェックリスト(別添資料1)を作成しましたので、ご活用いただき、適切に対応するようお願いいたします。

また、改正法の趣旨を踏まえた各大学における総点検・見直しの状況を把握するため、別添資料2でお示ししているとおり、平成26年12月中旬に進捗状況の調査を行うとともに、法律の施行日の到来後となる平成27年4月末には、上記のチェックリストに基づく総点検・見直しの結果についての調査を実施する予定ですので、よろしくお願いいたします。


【資料1】大学における内部規則・運用見直しチェックリスト







【資料2】今後の内部規則等の総点検・見直しの進め方について




内部規則の総点検・見直しに当たっては、法令改正の趣旨、上記施行通知や事務連絡を十分踏まえ作業を進める必要があります。

私見ですが、特に重要と思われるのは、今回の法令改正が意図する「権限と責任の所在の明確化」ではないかと思います。

今回求められる内部規則の総点検・見直しでは、時間的な制約もありますが、法令改正事項に直結する内部規則のみを対象とするのではなく、全ての内部規則を対象に、「学長の権限を拘束するような規定や学長に命令するような規定」が存在していないか、あるいは、「教授会をはじめとする委員会(会議体)が学長の権限を超える決定権限を有するような規定」が存在していないかなどについても、根本からチェックし見直す必要があるのではないでしょうか。

以前、このブログでご紹介した記事の中に、今回の作業に参考になるのではないかと思われる取組みがありましたので、改めて抜粋引用してご紹介したいと思います。

福岡教育大学という国立の単科大学(福岡県宗像市)の取組事例ですが、設置形態や大学の規模の違いを意識することなく参考にできる内容ではないかと思います。

なお、今回の総点検・見直し作業の効率化を図るために、外部業者に委託するようなことをお考えの大学もあるようですが、上記の施行通知(法改正の趣旨を学内等の教職員に広く周知・徹底した上で、全学的に実施すること)や、以下の事例の成果を踏まえれば、大学における業務改革の推進、あるいは教職員の意識改革といった観点からは、必ずしも好ましい方法とは思えませんし、大学構成員がみんなで汗をかくことが重要なのではないでしょうか。


大学のガバナンスの強化に向けた取り組み事例-業務改革推進のための学内規則の再構築」(文部科学教育通信 No279 2011-11-14~No281 2011-12-12)

福岡教育大学における業務改善

国立大学法人には言うまでもなく、効率的・効果的な法人運営が求められており、特に、事務組織が担う業務・運営については、民間企業や学校法人(私立大学)における経営改善に向けた発想やノウハウを採り入れることにより、優秀な事務職員の確保や意識改革を含めた職能開発とともに、機能的な事務組織の構築等を推進し、大学の使命である教育の質の向上、学術研究の高度化、大学運営の活性化等への支援能力を一層強化することが求められている。

(略)

しかし、いまだ、公務員意識やそれに基づく行動様式の大きな変革には結びついてはいないと考えられる。例えば、本来、業務を円滑かつ合理的に進あていくという目的のために定ある学内規則が、いつの間にか学内合意形成の記録文書的な性格に変わっていて、そのたあに、些細なことについてまで規則類の作成が求められ、結果として、詳細かつ膨大な規則類を作成し保管することが目的になってしまっている。まさに「繁文褥礼」であり、細かな規則と煩雑な手続きが、業務の効率的な遂行の大きな障害となってしまっているのである。

学内規則の再構築の意義

福岡教育大学の学内規則は、体系や制定改廃の手続き等を定めた基本的な規程がなかったために、300件を超える膨大な数の規則が無秩序に存在し、利用者にとって非常にわかりにくく複雑なものとなっていた。また、法人化移行時に国立大学等に適用されていた法令等を準用しているために、①規則の内容と実態とに乖離が生じている、②法人化後に必要な規定がないまたは不必要な規定がある、③権限と責任の所在が不明確な規定がある、④規則の制定根拠となる法令等が規定されていないものがある等々の問題を抱えていた。

単科大学として、300件を超える学内規則はいかにも多く、加えて、多層構造の学内規則で細かなところまで規定していては、業務の簡素合理化が一向に進まず、いつまでも人員不足、超過勤務の解消を図ることはできない。業務改善を効果的に進めるためには、コンプライアンス(法令遵守)や内部統制の確保を前提とした上で、裁量権にある程度の幅を持たせることが重要である。そのためには、学内規則の制定改廃手続きの明確化、体系等の整備を図り、利用者の利便性の向上を図るとともに、必要に応じて規則の内容を見直すことにより、内部統制に留意した業務の簡素合理化を図る必要がある。

学内規則の再構築については、このほかに、監事監査において「各規程の改廃手続き、改廃権者が明示されていない」「『申し合わせ』や『申し合わせ事項』など規程としての位置づけが不明瞭なものがある」として改善が求められていたこと、さらには、次のような指摘や要請に対応する必要が生じていたことも背景の一つになっている。

1)「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」(2009年6月文部科学大臣決定)において、第二期中期目標期間に向けた国立大学法人における業務運営の改善および効率化等を図るための見直しの視点として、「法人のガバナンスの充実」、「法令遵守体制の充実」が掲げられていたこと。

2)「国立大学法人における規則の制定状況について」(2010年3月文部科学省高等教育局国立大学法人支援課事務連絡)において、国立大学法人における規程の制定状況に関し、「規則等間の階層関係が明確でない、規則等の関係が複雑化しているなどといった課題が見受けられるため、職員等に対する規定内容の明確化を図るよう」要請が行われていたこと。

3)「国立大学法人化後の現状と課題について(中間まとめ)」(2010年7月文部科学省)において、ガバナンスの強化に係る今後の改善方策として、「学内における意思決定プロセス明確化のため、学内手続を定ある学則、法人規則等の整理を進めるとともに、学内の各種手続について、簡素化等の見直しを図ること」が要請されていること。

学内規則の再構築の手法

学内規則の再構築に当たっては、学内規則の簡素化、制定改廃手続等の軽減および利用者の利便性の向上を図ることはもとより、学内規則に規定されているために業務改善が進めづらい事項について、「学内規則に規定されている業務は本当に必要なのか」「規定されているという理由だけで漫然と処理している業務はないか」「規定されている手続きをさらに簡単にできないか」「権限と責任の所在は明確になっているか」「権限を委譲することによって業務の効率化が図れるのではないか」「内部統制は適切に機能しているか」等の視点から徹底的に検証するとともに、図1のような検討方針を作成し、規定そのものを抜本的に見直すこととした。


図1 学内規則の再構築に向けた検討方針

  • 責任の所在の曖昧な専決権限を全学的に見直すとともに、ルーティン業務は極力権限委譲する方向で検討を進める。
  • 新たに文書決裁に関する規程を制定し、決裁に関する権限と責任の所在の明確化を図る。
  • 慣例的な業務を徹底的に廃止するとともに、業務の標準化やマニュアル化による弾力的な業務遂行を検討した上で、規定と実態の乖離や慣例を是正する。
  • 学内規則を、廃止・統合も含めて可能な限り通知やマニュアルという形式へ移行し削減する。
  • 通知やマニュアルは、制定権者を学長や部局長に限定せず、実情にあった青荏者(理事、部局長等)が定めるとともに、教職員が容易に理解でき、迅速かつ円滑な手続等が進むよう、法形式にとらわれず、フロー図や具体例を活用するなどわかりやすい構成にする。
  • 学内規則で規定していた「様式」等は、原則として記載例等を添え通知やマニュアルに移行する。


次に、再構築を円滑に進めていくため、次の3つの項目についての明確化を行った。

第一は、「新しい学内規則の体系はどうなるのか」である。300件を超える膨大な数の規則の体系を、限りなくシンプルにすることとし、「運営規則」「学則」「規則」「規程」「校・園則」「細則」の6種類とした(図2:略)。新しい学内規則は、法人又は大学の規範として学長または部局長が定めることとし、制定・改廃は、新たに制定する「学内規則等の制定改廃に関する規程」に基づき行うこととした。また、従来の内規、要項、要領、申合せ等は、学内規則の簡素化、制定手続きの軽減等の観点から、原則として学内規則としての取り扱いから、「重要通知」「手引」といった法人文書としての取り扱いに移行することとした(図2:略)。「重要通知」は、学長、理事、部局長が申合せ事項等の決定事項を学内に通知するものとし、一般的な通知と異なり、廃止するまでその効力を有するものとして定めることとした。「手引」は、大学の構成員が利用する手続き、手順等をフロー図等によりわかりやすく解説するものとした。

第二は、「どのような方法により見直しを行うのか」である。従来の規則、規程、細則については、新しい学内規則の体系(以下「新体系」という。)においても存続させることとするが、手続的な事項などの重要通知または手引への移行(図3中②:略)や、規則等の統合等について検討することとした。また、従来の内規、要項、要領、申合せ等については、新体系では、学内規則として取り扱われなくなるため、重要通知又は手引への移行(図3中①:略)または廃止する(図3中④:略)方向で検討することとした。ただし、学内規則として規定する必要がある重要事項については、関連する規則等へ統合または新たな規則等の制定(図3中③:略)について検討することとした。

第三は、「どのような手順により見直しを行うのか」である。作業のプロセスを大きく4段階に区分した。まず、第一段階として、学内規則を管理する事務担当課において当該規則に係る「課題の検証」を行った。第二段階として、検証結果に基づく「改善策の検討」を行った。検討結果が妥当と判断された場合には、第三段階として、「学内規則案(重要通知・手引案を含む)の作成」および必要に応じた関係課との調整に移ることとした。検証や検討の妥当性の質を確保する(判断水準の低下を避ける)ため、各事務担当課におけるチェック項目を共通指標(図4)として定めるとともに、各段階において、事務局法規担当による検証を経ることとした。


図4 課題の検証及び改善策の検討のための共通指標(チェック項目)

1 この学内規則は、機能しているか。

  • この学内規則の規定のとおりに業務ができているか。
  • この学内規則の規定のうち使われていない部分があるか。
  • 必要とされることが規定されていないもの、必要でないことが規定されているものがあるか。
  • この学内規則に、規則内その他関係法令と矛盾するところがあるか。
  • この学内規則に規定されているからやっているといった、無駄と思える業務があるか。
  • この学内規則は、利用する人にとってわかりにくいか(例:いくつもの学内規則を見ないと理解できない構成になっている)。
  • この学内規則に規定する手続をもっと簡単にできるか。

2 この学内規則に規定する権限者は、機能しているか。

  • この学内規則に規定する権限者でなければ、業務に支障をきたすか。
  • 責任等を明確にすることにより権限を委譲することができるか。
  • 権限を委譲することにより業務が簡素化できるか。

3 関連する又は他の学内規則との統合による合理化はできるか。

  • 上位・下位に当たる学内規則と統合できるか。
  • 他の学内規則と統合できるか。

4 様式がある場合、廃止、合理化できるか。

  • 様式が必要か。
  • 記入項目は必要最低限か。個人情報保護を踏まえたものか。
  • 利用者の立場に立ったわかりやすい様式か。

5 以上の結果どうするか

  • この学内規則は、廃止できる。
  • この学内規則は、全て別の方法(重要通知又は手引等)により運用できる
  • この学内規則の一部は、別の方法(重要通知又は手引等)により運用できる。
  • 学内規則として規定しなければならない。(重要な事項が定められている。)
  • 法令等により必ず学内規則として規定しなければならない。

(略)

新たな学内規則の作成に当たっては、「国立大学法人福岡教育大学学内規則等の制定改廃に関する規程」(2010年11月19日制定)に基づくほか、規定内容の統一性や整合性を図るため、図5のような取り扱いとした。


図5 規定内容の統一性や整合性を図るための共通指針

1 学内規則の名称及び内容

「国立大学法人福岡教育大学」に係る学内規則と「福岡教育大学」に係る学内規則の区分の明確化を図る。区分の判断は、「『国立大学法人福岡教育大学』と『福岡教育大学』の名称使用について」(2009年6月12日学長決定)に準じて行う。「略称」については、「国立大学法人福岡教育大学」の場合は「法人」又は「本法人」、「福岡教育大学」の場合は「本学」とする。また、全学的な学内規則と部局(教育学部、大学院教育学研究科等)の学内規則の区分の明確化を図るため、全学的な学内規則については、法人名又は大学名を、部局の学内規則については、法人名又は大学名の後に部局名を加える。

2 学内規則の目的・趣旨、設置根拠の明確化

規定の冒頭(第一条等)に、当該学内規則の「目的」又は「趣旨」を明記するとともに、当該学内規則の「設置根拠となる法令又は学内規則」を明記し、当該学内規則との関連や体系を明確にする。

3 規定に用いられている役職名の表記

「副学長」に関し様々な表記が用いられているため、これを「理事(○○○担当)」に統一する。

4 委員会規程等における委員会等を構成する者の表記

様々な表記が用いられているため、これを「委員」に統一する。

5 学内規則の簡素化、制定手続きに係る負担軽減

学内規則上の「様式」類については、元号の変更や事務担当の変更など軽微な修正に係る改正手続きを簡素化し、利用者への柔軟かつ迅速な対応が可能となるよう、「手引」へ移行する。

6 「事務担当課」の明確化

当該学内規則に係る事務を所掌する組織が規定されていないものがあるため明確化を図る。なお、様々な表記が用いられているため、「○○○に関する事務は、○○課(室)において処理する。」に統一する。

7 「別に定める規定」の表記

当該学内規則に定めのない必要事項を別に定めることとする規定を明確にする。なお、別に定める規定は、権限と責任の所在の明確化を図る観点から、「制定(審議等)プロセス」及び「制定権限者」を明記する。(例:この○○○に定めるもののほか、○○○に関し必要な事項は、○○○の議を経て、○○○が別に定める。)


学内規則の再構築は、以上のような手順等に従って進めた。なお、大きな論点の一つに「重要通知」の取り扱いがあった。重要通知とは、手続、手順、申合せ的事項について定めた従来の内規等(内規、要項、要領、申合せ等)のうち、内容の存続を図るものは、学内規則の簡素化、制定手続の効率化等の観点から、学内規則としての取り扱いから法人文書としての取り扱いに移行するものであり、学長、理事、部局長が作成し学内に通知する文書とし、一般的な通知と異なり、廃止するまで効力を保有(効力をなくす場合、内容を変更する場合は、改めて通知)するものとした。

また、重要通知は、重要な法人文書として学内規則に準じた管理を行う必要があるため、「文書処理規程」において、重要通知の「定義」を定めた。一部の教員から、今後は、学長や理事の権限により、容易に重要通知を発することが可能になるのではないかとの懸念が示されたこともあり、同規程に「作成に当たっては、必要に応じて、関係委員会等において検討を行うものとする」旨の規定を追加した。さらに「必要に応じて」の解釈に関し、関係委員会等への付議を省略する場合を明確にするたあ、学内規則同様、①法令又は学内規則の改正に基づく法令名等名称の変更又は適用条項の変更による改正を行う場合、②組織の設置改廃等に伴う組織名又は職名の変更による改正を行う場合、③用字、用語及び送り仮名の整備による改正を行う場合、④元号の改正による改正を行う場合、⑤その他改正内容が形式的で軽微なものと認あられる場合に限り、関係委員会への付議を省略できることとした。

学内規則の再構築の成果と残された課題

2010年秋に事務局法規担当において事業の企画立案に着手して以来、全学的事業としては、①学内規則の再構築に関する考え方・手法・スケジュールを定めた設計図ともいうべき基本方針の策定(2010年10月役員会決定)、②学内規則の体系や制定改廃手続き等を定めた基本的な規程の制定(2010年11月)、そして最後に、③学内規則の再構築事業に基づく新たな学内規則の制定改廃(2011年3月末)という3つのプロセスを約半年間の間に順次進めることができた。

その結果、当初3百件を超える膨大な数の規則が無秩序に存在していた学内規則の体系を、運営規則、学則、規則、規程、校園則、細則の6階層とし、規則等の数も242件にスリム化(制定75件、改正165件、廃止140件)した。再構築を進めていく中で発見された"埋もれた申合せ"等を含めれば、大幅なスリム化が図られたと言える。また、規則体系の明確化、規則のスリム化だけでなく、例えば、制定改廃手続の簡素化・明確化、規則(ルール)と実態(慣例等)との乖離の是正(法令遵守の徹底)、権限と責任の所在の明確化、利用者の利便性の向上、そして内部統制に留意した業務の効率化・合理化の実現など、所期の目的は十分に達成されたのではないかと考えている(図2:略)。

また、学内規則の再構築に関する検証を行うために実施した事務職員に対するアンケート調査においても、「学内規則の体系が整備されたことにより規則等の重要度・関係性がわかりやすくなった、規定の不合理な点が改善されたことにより監査への対応が効率化した、組織の縦割りにより無秩序に作成し埋もれていた規程等がおおやけになった」という「業務改善」の面からの効果とともに、「再構築作業を通じて業務の目的・意義・根拠などを意識することができた、実務担当者レベルで学内規則に向き合う機会となり問題点の発掘につながった、学内規則に準拠した業務処理を意識するようになった」といった「意識改革」の面からの効果を評価する意見も寄せられた。

福岡教育大学における学内規則の再構築については、(略)全学的な事業に着手して以降、わずか半年という短期間での作業だったにもかかわらず、所期の目的は概ね達成されたのではないかと考えられる。

しかし、一方で、

  • 一部の学内規則については「体系整備」にとどまり「内容の検証・改善」には至らなかったこと
  • 学内規則の検証過程(特に他大学の規則との比較)において、学内規則の内容や制度の最適化を図るべき課題が見えてきたこと
  • 学内規則の制定改廃(形式、手続き、用字、用語等)に関する統一マニュアル(重要通知、手引の記載内容等、体裁の統一を含む)を整備することが必要であること
  • 法務(学内規則の制定改廃)に関する事務職員の能力開発の強化が必要であること
  • 学内規則のホームページ等を通じた社会への公表が必要であること

といった新たな課題も確認することができた。

全学的な企画立案、取りまとめや調整を行った事務局の法規担当者やタスクフォースのメンバー、各規則の検証、改善策・規定案の作成を行った各事務組織の担当者、月例で進捗管理を行った事務協議会構成員、関係会議において検討を行った教職員、全学的な事業の推進役を果たしていただいた学長・理事の皆様に対し、この誌面をお借りして心からお礼を申し上げたい。