「介護人手不足 仕事に見合う賃金に」(2014年9月8日東京新聞)をご紹介します。
2015年度の介護報酬改定の議論が来月から本格化する。最大の焦点は介護職員の待遇改善だ。人手不足を解消し、これからの高齢化社会に備えるため、賃金の引き上げが必要だ。
職員が集まらないため、介護施設や訪問介護事業所を閉鎖せざるを得ない。サービスの提供を断らなくてはならないという事態が現場では起きている。
高齢化が進み、介護費用は膨張している。当然、担い手も増やさなければならない。制度が導入された2000年度、50万人だった介護職員数は、現在約3倍の150万人まで増えているが、需要に追いついていない。
最大の要因が、賃金の低さだ。介護労働安定センターの調査では、労働条件の不満の上位に「仕事内容のわりに賃金が低い」ことが挙がる。
常勤のホームヘルパー、施設職員の平均賃金は月約21万8千円。全産業平均よりも約10万円低い。介護職員の労働組合幹部は「せめて全産業平均並みに」と訴える。人手が足りないため、休みがとりにくいとの不満も出る。
このため、離職率も高く、短期間で辞める人も多い。介護という仕事にやりがいや魅力を感じて入る人が多いが、将来設計が描けず、志半ばで挫折してしまう。
介護保険からサービスに支払われる単価である介護報酬は政府が決める、いわば「公定価格」。3年に一度、改定されているが、過去2回、財政支出を減らすために引き下げられた。民主党政権は賃金4万円アップを目指したが、実現せず、制度導入当初と同水準で低迷している。
厚生労働省は25年度までに、今よりも100万人増員しなければならないとしている。担い手がいなければ、介護サービスを受けたくても受けられない人が出てくる。介護保険が「絵に描いた餅」になりかねない。職員の賃金や待遇の改善は急務の課題だ。
このほか、キャリアが賃金に結び付くような仕組みづくりも重要だ。多くの職員は何年働いても賃金は上がらない。認知症高齢者のケアなどには専門的な技術やノウハウが必要になる。キャリアが評価されるようになれば、やる気も高まり、サービスの質の向上にもつながるだろう。
政府は消費税引き上げによる税収の一部を介護職員の待遇改善に充てるとしている。国民の老後の生活を守るためにも職員の待遇改善につながる改定を求める。