2014年9月8日月曜日

学びの機会と高大連携

ブログ「教授のひとりごと」から学習意欲の評価」(2014年09月03日)をご紹介します。


朝日新聞(8/20付け)に『学習意欲の評価「困難」69%』という記事があった。

早ければ2021年度入試から大学入試のセンター試験が変わる。知識量よりも考える力を重視する。各大学の個別試験も、学習意欲や、どんな高校生活を送ったかなど、能力を総合的に評価することが求められていく。だが、大学の7割がそうした評価が困難だと考えていることが、朝日新聞社と河合塾の「ひらく 日本の大学」調査で分かった。

調査は4~7月、全国の745大学(短大、通信制、大学院大学を除く)を対象に実施。81%に当たる607大学が回答した。そのうち、「学生の学習意欲を十分に測ること」について69%が「非常に困難」「困難」と答えた。また、「学生の能力を適切に測る方法を開発できているか」についても、「非常に困難」「困難」とする回答が、69%に上った。

調査では、「入試の点数と入学後の成績は必ずしも相関しない。だが、(本人の)学習意欲を測る方法がない」(私立医科大)といった悩みが目立った。

センター試験の後継となる達成度テストの発展レベルは、一部で教科ごとの枠にとらわれない設問が想定されているそうだ。例えば、ワインについての文章を読みながら(国語)、発酵に関する問い(化学)やローマ帝国の歴史(世界史)について解答する・・・。しかし、どんな試験になるにせよ、試験は試験であり、点数がつく。試験が変われば受験生の勉強や対策も変化して、どうすれば点数をとることができるかという方法が編み出されていくのだろう。試験方法がかわっても、同じことの繰り返しのような気がする。もちろん、過渡期に入試を迎える受験生は前例がないため、大変だろうが。

そのために、試験の点数だけに頼らない「AO入試」が広く行われている。AO入試の問題点についてはいろいろ指摘されているものの、多様な入試制度をもつ私立大学では、入学生の学力に幅があるのは事実である。ただ、記事の中にもあるように、入試の形態や点数と入学後の成績には明確な相関はみられない。要するに、大学で努力すれば、そのぶん成長することができるといえる。

大学入試は高等教育の課題であるが、一方で、子どもの学ぶ機会を守ることも大切だ。政府は、経済的に厳しい家庭の子供を支援するために必要な施策をまとめた「子供の貧困対策大綱」を閣議決定した。「貧困の世代間連鎖を断ち切る」という基本方針を掲げ、親世代の学び直しなどを進める方針という。貧困に直面する子供は6人に1人いるとされ、「学びの機会」を得るための環境づくりが求められている。

大学教育は、それまでの初等中等教育の上に成り立つものだ。そのため、大学入試だけでなく、それまでの小中高校での教育をどうすすめていくかの議論も欠かせない。一連の教育制度のなかで学習意欲を高めていくような連携ができればいいが。