2014年9月15日月曜日

第二期中期目標・計画の総括開始

文部科学省(国立大学法人支援課)は、去る9月9日付で、各国立大学法人中期目標・中期計画担当理事宛に、「「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点」について」と題する事務連絡を発出しています。

いよいよ第二期中期目標・中期計画期間中の総括が始まります。


「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点」について

国立大学法人法第35条において準用する独立行政法人通則法第35条において、文部科学大臣は、国立大学法人の中期目標期間終了時に、組織及び業務の全般にわたる検討を行い、所要の措置を講じるものとされています。

これに先立って、今般、国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関し、国立大学法人評価委員会において専門的な観点から議論をいただき、別添資料(「視点」)がとりまとめられましたので送付いたします。

また、今後、文部科学省において「視点」を踏まえ組織及び業務全般の見直し内容を作成し、平成27年6月を目途に各法人にお示しする予定ですので、念のため申し添えます。

なお、本件について、説明会の開催を予定しておりますので、詳細が決まり次第、追って御連絡をいたします。


(参考)

国立大学法人法(平成15年法律第112号)第35条において準用する独立行政法人通則法第35条

第35条 主務大臣(※文部科学大臣)は、独立行政法人(※国立大学法人)の中期目標の期間の終了時において、当該独立行政法人(※国立大学法人)の業務を継続させる必要性、組織の在り方その他その組織及び業務の全般にわたる検討を行い、その結果に基づき、所要の措置を講ずるものとする。

2 主務大臣(※文部科学大臣)は、前項の規定による検討を行うに当たっては、評価委員会(※国立大学法人評価委員会)の意見を聴かなければならない。


3 審議会(※総務省政策評価・独立行政法人評価委員会)は、独立行政法人の(※国立大学法人)中期目標の期間の終了時において、当該独立行政法人(※国立大学法人)の主要な事務及び事業の改廃に関し、主務大臣(※文部科学大臣)に勧告することができる。


(別添)

国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点

文部科学大臣が第2期中期目標期間終了時に行う組織及び業務全般の見直しに盛り込むことが必要と考えられる内容のうち、各国立大学法人が行う第3期中期目標・中期計画の素案の検討に資するものとして、以下の視点を挙げることができるのではないか。

1 見直しの基本的な方向性

  • 国立大学は、全国的な高等教育の機会均等の確保、世界最高水準の教育研究の実施、社会・経済的な観点からの需要は必ずしも多くないが重要な学問分野の継承・発展、計画的な人材育成等への対応、地域の活性化への貢献等の役割を担ってきた。
  • 法人化から10年が経過し、法人化の長所を生かした改革が本格化する中、第3期中期目標期間に持続的な競争力を持ち、高い付加価値を生み出す国立大学に更に発展するためには、変化する社会状況を踏まえた国立大学の役割を改めて認識し、機能強化に取り組んでいく必要がある。
  • このため、「国立大学改革プラン」(平成25 年11 月)や中央教育審議会における各種提言等を踏まえ、世界最高水準の教育研究の展開拠点、全国的な教育研究拠点、地域活性化の中核的拠点等の機能強化に向けて、各国立大学法人が自らの強み、特色を明示し、国立大学としての役割をそれぞれ果たしつつ、大学として特に重視する取組については、明確な目標を定め、その目標を具体的に実現するための手段を策定し、その手段が遂行されているかどうかを検証することができる指標を設定することが必要であり、その上で中期目標・中期計画を策定することが求められる。
  • 第2期中期目標・中期計画の策定の際には、各国立大学法人の機能を明確化し、その目指すべき方向性が明らかになるよう、また、目標の達成状況が事後的に検証可能となるよう、数値目標等を盛り込んだ具体的なものとするよう求めていたが、実際には、抽象的、定性的な記述が少なくない状況であった。このため、第3期中期目標・中期計画の策定に当たっては、各法人が一層の質的向上を目指し、高い到達目標を掲げるとともに、その目標を実現する手段や検証指標を併せて明記するなど、より戦略性が高く意欲的な目標・計画を積極的に設定することが求められる。


2 組織の見直しに関する視点

  • 「ミッションの再定義」を踏まえた速やかな組織改革が必要ではないか。特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、18歳人口の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むべきではないか。
  • 法科大学院について、「公的支援の見直しの強化策」を踏まえ、司法試験の合格状況や入学者選抜状況等を考慮に入れ、入学定員規模の適正化や教育の質の向上を目指すとともに、特に司法試験合格率が著しく低い場合や適切な入学者数を確保する見込みがない場合等、課題のある法科大学院は、組織の廃止や連合も含め、抜本的な見直しを図るべきではないか。
  • その他の組織についても、その必要性等について不断に検証・検討することのできる体制を確立し、必要に応じて、大学間連携や入学定員の見直しなど、柔軟かつ機動的な組織改革を実施すべきではないか。


3 業務全般の見直しに関する視点

(1)教育研究等の質の向上

  • 教育研究の内容に関しては、各大学の強み、特色及び社会的役割を十分踏まえた見直しを行うことが必要ではないか。
  • 能動的学習(アクティブ・ラーニング)や科目番号制(ナンバリング)等の導入、質を伴った学生の学修時間の確保・増加、学修成果の可視化、教育課程の体系化、組織的な教育の実施等を通じ、全学的な教学マネジメントの確立に取り組むとともに厳格な成績評価や卒業認定を行うなど、大学教育の質的転換を図るべきではないか。また、明確な人材養成像の下、広範なコースワーク等を通じ、専門分野の枠を越えた統合的かつ体系的な教育を経て、独創的な研究活動を遂行する一貫した「学位プログラム」の構築に組織的に取り組み、質の保証された大学院教育を推進すべきではないか。
  • 社会において求められる人材の高度化・多様化を踏まえ、生涯を通じた高度な知識の習得の場としての機能強化や、社会との接続を意識した教育内容の充実が必要ではないか。また、短期プログラムの設定やICT を活用した教育の充実等を進め、社会人が学びやすい環境を整備すべきではないか。
  • 学部・大学院それぞれにおける教養教育について、そのポリシーを明確にし、更に充実すべきではないか。
  • 国立大学法人の公的な役割に鑑み、各地域における知の拠点として、地域の諸課題の解決及び地域を支える人材育成など、社会貢献や地域貢献を一層果たしていくことが必要ではないか。
  • 国内外の優秀な学生や教員を集め、国際的に活躍できる人材の育成や優れた研究成果を創出するため、国際通用性を意識した教育プログラムの質保証に向けた取組や国際化に対応した学事暦の柔軟化、英語による授業の拡大を進めるとともに、国境を越えた教育連携や共同研究、日本人学生の海外派遣の促進等が必要ではないか。
  • イノベーションの創出に向けて、高い技術力とともに発想力、経営力などの複合的な力を備えた人材を育成するため、「理工系人材育成戦略」(仮称)等を踏まえ、大学院を中心とした機能強化を図るとともに、人文社会科学などの分野においても、その特色を生かした取組を進めることが必要ではないか。
  • 教育研究資源を大学の枠を越えて有効活用し、質の高い教育研究を行う観点から、教育課程、産学連携等の共同実施や施設・設備の共同利用を図ることが必要ではないか。
  • 教員の採用や配置に当たり、女性、若手、外国人等を積極的に登用し、多様な教員構成とすることや、能力の一層の活用に積極的に努めることが必要ではないか。
  • 入学者選抜は、大学入学後の教育課程と入学者選抜の評価方法との関係性や求める能力の評価方法が明確化された各大学のアドミッション・ポリシーに基づき、知識偏重の入学者選抜から脱却し、能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定するものに転換していくことが必要ではないか。
  • 経済的に困窮している学生等に対する支援の充実や就職支援の取組、留学生や障害のある学生などの多様な学生に対する支援機能の強化を行う必要があるのではないか。
  • 法科大学院は、法学未修者教育の充実、法曹の職域拡大への対応、質の高い教育資源を活用した他の法科大学院に対する支援など、入学者選抜状況や司法試験合格状況の改善などにつながる機能の強化を図る必要があるのではないか。
  • 附属病院は、優れた医療人を養成するとともに、質の高い臨床研究を行う教育研究機関であるとの基本的な認識を踏まえつつ、卒前教育と卒後教育の一体的な魅力ある教育プログラムの構築や、新たな医薬品・医療技術等の研究開発に取り組むことが必要ではないか。また、地域の医療需要を踏まえて、高度急性期医療機能の強化を図るなど、都道府県等と連携して地域医療に取り組むことが必要ではないか。これらの取組を通じて特色ある病院運営の強化を図ることが必要ではないか。
  • 附属学校は、学部・研究科等における教育に関する研究に組織的に協力することや、教育実習の実施への協力を行うことなどを通じて、附属学校の本来の設置趣旨に基づいた活動を推進することにより、その規模も含め存在意義を明確にするとともに、大学の持つリソースの一層の活用も含め、先導的・実験的な取組をはじめとする附属学校に本来求められる機能の強化を図る必要があるのではないか。
  • 共同利用・共同研究拠点は、個々の大学の枠を越えた当該研究分野の中核的研究拠点としての役割を果たすため、業務の見直しを通じた機能強化を図るとともに、各大学の強みや特色の重点化に貢献することが必要ではないか。


(2)業務運営の改善及び効率化、財務内容の改善、その他業務運営

  • 学長のリーダーシップの下で大学の強みや特色を生かし、教育、研究、社会貢献の機能を最大化できるガバナンス体制を構築するため、国の制度改正を踏まえつつ、主体的・自律的に内部規則等を含めたガバナンスの総点検・見直しを行うとともに、権限と責任が一致した意思決定システムの確立、法人運営組織の役割分担の明確化、学長を補佐する体制の強化を図ることが必要ではないか。
  • 社会や地域のニーズを的確に反映し、幅広い視野での自律的な運営改善に資するため、経営協議会の運用の工夫改善を図るなど、様々な学外者の意見を法人運営に適切に反映していくことが必要ではないか。
  • 監事が、財務や会計だけでなく、教育研究や社会貢献の状況、学長選考方法や大学内部の意思決定システムをはじめとした大学のガバナンス体制等についても監査するなど、監事の常勤化による監事機能の強化を図るとともに、その実情に応じたサポート体制の強化を図ることが必要ではないか。
  • 優秀な若手・外国人の増員や教員の流動性向上などにより教育研究の活性化を図るため、年俸制・混合給与の積極的な導入及び適切な業績評価体制を構築することが必要ではないか。
  • 外部資金の獲得や多様な資金調達による自己収入の増加、一般管理費比率の抑制等、財務に関する各法人の更なる努力が必要ではないか。
  • 効果的な法人運営を進める観点から、職員の適切な人事評価に応じた処遇を行うとともに、リサーチ・アドミニストレーターなどの高度な専門性を有する者等、多様な人材の確保と、そのキャリアパスの確立を図っていくことが必要ではないか。
  • 効率的な法人運営を行うため、他の大学との事務の共同実施等の推進や、アウトソーシングの推進及び大規模災害等の発生に備えた連携の構築などの大学間連携の取組が必要ではないか。
  • グローバル化の推進やイノベーションの創出など教育研究の質の向上や、長寿命化など老朽化対策の観点から、施設については、キャンパスマスタープランの充実や既存施設の有効活用、計画的な維持管理を含めた施設マネジメントを行うことが必要ではないか。
  • 保有資産の不断の見直しに努めることが必要ではないか。
  • 国立大学法人には多額の公的な資金が投入されていること、成果等が社会に還元されるべきものであることを十分認識し、各法人の実情や果たしている機能等を国民に分かりやすい形で示すとともに、「大学ポートレート」を活用するなど、積極的に情報発信することが必要ではないか。
  • 放射性物質の漏えいや毒物及び劇物の不適切な管理事例の発生等を踏まえ、再発防止を図ることのみならず、事故等を未然に防止するため、広く安全管理体制の強化を図り、役職員の意識向上を通じた安全文化の醸成に向けた取組が必要ではないか。
  • 国立大学法人が社会的使命を果たしつつ、その活動を適正かつ持続的に行っていくため、学内規則を含めた法令遵守(コンプライアンス)の徹底及び危機管理体制の機能の充実・強化が必要ではないか。
  • 研究における不正行為、研究費の不正使用は、研究活動に対する信認を失墜させ、科学技術・学術の健全な発展を阻害する極めて重大な問題であることから、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」や「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」を踏まえ、倫理教育の強化等による不正を事前に防止する体制、組織の管理責任体制を整備することが必要ではないか。