2019年6月20日木曜日

記事紹介|かけがえのない命

私は小中学校時代、いじめにあい大変苦しい思いをしました。

共働きの両親は、私の寂しさを紛らわせようと、望む物は何でも買ってくれ、何をしても叱ることはありませんでした。

しかし、独りぼっちのつらさはつのるばかり。

「どうして私だけがこんな目に遭うの、なぜ私を産んだの」

何度も、母の胸をたたいたものです。

循環器系が悪い母は、美容師の仕事の合間に病院へ通っていました。

苦しい時も、私の前ではいつもほほえみ、

「我慢して頑張れば、必ずいいことがあるから」

と励ましてくれるのですが、私は落ち込む一方でした。

ある時、いつものように遅い両親の帰りを待ちながら、

「このまま死んでしまいたい」

と叫ぶと、側にいた祖母が、たまりかねて言ったのです。

「お母さんがどんな思いで、産んでくれたと思っているの?

お母さんはね、おまえを身ごもった時、お医者さんから、

『この子を産んだら、あなたは100パーセント死にます。いいのですか。まだ遅くはありません』

と言われ続けていたんだよ。

それでも最後まで、

『死んでもいいから産みます』

と言って産んでくれたんだよ」

大変なショックでした。

その夜、母に尋ねました。

「どうして今まで言ってくれなかったの」

相変わらず母はほほえんで、

「今、尚子が元気なら関係ないことだからよ。

尚子もお母さんになれば分かるよ」

と言うばかり。

一体どんな思いで出産に踏み切ってくれたのか。

生まれてくる私の命に人生のすべてを賭けてくれた母。

そう知らされた時、胸が詰まり、かけがえのない命をなんと粗末にしていたのかと、

反省せずにおられませんでした。