配付資料は次のとおりです。
- 資料1 論点メモ [PDF]
- 資料2 教育再生会議報告の実現状況 [PDF]
- 資料3 幼児教育、家庭教育をめぐる状況 [PDF]
- 資料4 有害情報対策をめぐる状況 [PDF]
- 参考資料 教育再生会議報告フォローアップ [PDF]
- 安西座長より提出された資料
議事要旨が公表されていますので、高等教育関係の主な部分を抜粋します。
本文→http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku_kondan/kaisai/dai2/2gijiyousi.pdf
安西座長(慶応義塾長)
教育再生会議報告のフォローアップは、この懇談会の重要な任務の一つである。今後の取組や課題などについて、御意見をいただければと思う。
小川委員(東京大学大学院教育学研究科教授)
日本は子育ての家計の負担が重いという話を前回したが、日本は、国民の税負担も小さいから、公教育における私的負担が大きくなるのは当然という議論もある。確かに、公的教育費、私的教育費を総合すると北欧などの教育費のGDP比と差はない。
ただ、家計における教育費の私的負担は限界(例えば、大学進学率の停滞、等)にきており、階層間格差もでてきている。従来のように家計に大きく依存した教育支出の構造は限界にきているのではないか。
公的な支出と家計の支出以外に、日本の人材育成でもう1つ考えなければいけないのは、民間企業の企業内の教育訓練費、企業の研究開発投資である。バブル崩壊で日本のいわゆる長期雇用システムも崩壊して、外部から即戦力を採るというように雇用制度が変わる中で、企業の教育訓練経費は1990年代以降急激に落ちてきている。個々人が自分で能力開発をすれば良いではないかと言う意見もあるが、働いている人が大学に入ることなどは日本の教育費が大きいので難しい、安西座長が今日机上配布している資料の中でも諸外国に比べ大学の学生に占める社会人の割合が日本は極めて低いというデータが出ている。
私的な教育費が頭打ち、国の教育費が頭打ち、民間も頭打ちという中で、日本社会の教育費総額が縮小傾向に入っているという現状をどこかでブレークスルーしなければならない。
国がある程度きちっと出すべきところは出すというスタンスが必要。国の財政事情も厳しいということで、そうした論議を忌避するのではなく、例えば消費税を含めた税財政改革など見通しを含めた中で、日本の公教育支出の在り方、負担構造を少し考えていくべきではないか。
野依委員(独立行政法人理化学研究所理事長)
この間まで教育再生会議の座長を務めさせていただいた。長期的視点に立った教育投資の在り方については、委員の間で様々な意見があり、調整が難しかった。例えば、教育投資の抜本的な拡充についての積極的な意見もたくさんあったが、一方、壊れた器に水を注いでも無駄という意見もあった。私は、器は粉々に壊れているわけではないので、器を直すのと水を注ぐのを同時にうまくやっていく必要があるのではないかと思っている。
教育再生懇談会で、教育再生会議の報告を着実にフォローアップするということになったが、本日の資料を見ても提言が着実に実行されることになっていることをうれしく思う。
教育再生を着実に進めるためには、この懇談会が議論を開始したこの機会に改めて教育投資を議論すべき段階にきている。国民の目は社会保障に向いているが、社会保障は大切だがその費用はコストである。一方、教育、科学技術に係る費用は明日の社会を創るための投資であってコストではないと思う。投資なくては明日の日本を創ることはできないと思う。学校教育費に対する公財政支出の対GDP比は、OECDの平均5.0%に対して、我が国は3.5%、高等教育段階については、OECDの平均1.0%に対して、日本はわずか0.5%と甚だ貧弱な水準に甘んじている。
世界最高水準の教育拠点を整備し、国際競争力のある高等教育をするためには、教育に対する公財政支出を欧米先進国を上回る水準に引き上げることが急務である。
大学院教育を国家戦略と位置づけるべきであり、国内の人材流動化と国際化による優れた学生の確保、育成が大変重要である。そのためにも大学院生等が勉学に専念できるよう経済的支援が不可欠である。高等教育における1人あたりの公財政支出の割合41%というのは、OECD平均の76%より相当低い。私費負担59%というのは、OECD平均の24%より圧倒的に高い。これでは国際競争力を持ち得ないということは明白であると思う。
政府においては、教育の質の向上、内容の充実、抜本的な構造改革とセットで、重点分野に対する思い切った教育投資を実行に移していただくことが必要であると思う。社会総がかりという概念を打ち出しているが、財政についても社会総がかり、省庁総がかりでなくてはいけない。例えば、留学生30万人計画等についても、文教費だけで賄うのは難しい面があるので、ODA経費を充当する、また住居等の充実については、国土交通省の公共事業をもって充当する。文科省の中でやると、様々な重要事項の間でトレードオフの関係になり実現することは難しいと思うのでよろしくお願いしたい。
田村委員(学校法人渋谷教育学園理事長)
教育基本法改正の中身の中心は教育振興基本計画を作ることである。教育振興基本計画の形がほぼ見えてきた。教育振興基本計画の中身をきちっとここで議論してそれに応じた財政支援を工夫していただく必要がある。ひび割れた容れ物に水を注ぐと言われてしまうのもしょうがない部分も無いわけではないので、この会議では、ひび割れとはどういうひび割れなのか具体的に詰めて、必要性のあるところにきちんとした財政措置を手当てするような細かな議論をしていかないといけない。
私達の国では教育が唯一の夢である。夢は教育の分野しかない。教育が夢であることを実現できるような、拙速でないしっかりした議論を重ねて、ひび割れでないということを証明して、きちっとした財政計画をここで提案していければいいなと思う。ほぼ教育振興基本計画ができたこの時こそ大事なチャンスであると思うのでよろしくお願いしたい。
池田委員(株式会社資生堂相談役)
野依委員の発言に尽きると思う。フォローアップに際して必要な項目をチェックリストとしてまとめさせていただいているので、その実現に向けて教育再生懇談会で議論を深めさせていただければありがたい。これらの実現と予算は表裏一体であり、教育投資を考慮しない議論をしても絵に描いた餅になってしまう。教育予算を念頭に議論させていただく、そういう形で提言させていただければありがたい。教育に対する公的負担については、教育は国の根幹を担うものであるので、当然であると思う。教育に対する公的負担を他国と比較すると、OECDの調査を見てもわが国は下位にあり、そこを認識し、出発すべきである。公的負担をどういう按分にするかということをもう一度基本から議論させていただければと思う。
企業が高等教育機関から人材を受け入れてもなかなか即戦力にならないことが多かった。これまで大学側と企業側のコミュニケーションが良好ではなかった。ミスマッチがあったのではないかと思う。企業サイドからも反省の声が出ている。大学との連携を密にして、企業がどのような人材を求めているのか、大学側に発信し、それによって大学・大学院の教育の在り方も見直していただきたい。
教育振興基本計画も、より具体的に予算が伴う形でまとめていただければありがたい。
安西座長(慶応義塾長)
地方分権改革の問題、企業と大学の間の問題、幼児教育の問題等々いただいて、また予算の問題もここでは大事な課題になると認識している。教育投資の充実ということを教育振興基本計画にはっきり明記してうたわないかぎり、日本の教育の具体的な施策は動かないのではないかと危機感がある。
若月委員(東京都品川区教育委員会教育長)
教育投資について、教育振興基本計画の中にバジェットを担保する提言というのが後退している。基本計画を作られる時点で、省庁総がかりでやるべきなのに、省庁の間の様々な思惑が顔を出してこういう結果になってきているのかと勘ぐってしまった。
省庁総がかりで教育投資についてももう1回考え直していくという視点は、強くこの会議でもメッセージとして送っていく必要があると思う。
教育投資について、抽象論だけでなく、もっと具体的で現実的な夢といったものを発信してもいいのではないか。例えば、基本計画では5年間見ているわけだが、5年、10年ぐらいの視点を持って、この国をどうしていくのか、子供をどういう子供に育てていくのか、国民、市民としてどう育てていくのか。5年なら5年のスパンで具体的にこういう人間を育てていく必要があるという夢を語っていかないと、なかなか教育的なバジェットの担保は取りにくいのではないか。どの省でもこの国の将来をどう築いていくかという利害は一致していると思う。そのために具体的に夢、像を提言していっていいのではないか。
これから、国家として日本がこの社会を生き抜いていくためには、もっと人材を育てていくことが、多くの国民の夢を育てることになる。子供の数が少なくなったから教員の数を少なくしていくとかそういった些末なことで、財政が右にいったり左にいったりする状況は好ましいことではない。思い切った提言をしていく必要がある。
地方分権が進まないことも事実であり、小川委員が話された視点も必要だと思う。
教育再生会議や中央教育審議会でいろいろな提言がされているが、現場の教員は、相矛盾するベクトルのものがどんどん提言されていると受け止められているフシもある。
(福田内閣総理大臣入室)
安西座長(慶応義塾長)
本日は、第1回の会合での福田総理からの検討の御要請、委員の皆様の御意見を踏まえて、これからの教育の在り方について、議論をさせていただければと思う。
これまでのところ、教育再生会議報告の実施状況について報告があり、それについて御意見をいただいた。地方分権改革、特に県と市町村の関係、企業と大学の間の関係、幼児教育の問題、現場の教員がどう改革を受け止めているのか、これからの日本がどういう方向で教育を捉えていけばいいのかといった大きな御意見もあった。特に教育費の予算、教育振興基本計画が教育基本法の下で策定され実施されるという状況になっているが、そういう中で、教育投資の充実を図っていくべきであるという御意見も多々あったところである。ここまでのところをまとめて申し上げるとそういう状況である。
周知を徹底して行ってはいかがか。
安西座長(慶応義塾長)
財政論、投資論、支援環境論、制度論、やはり制度をしっかりしていかなくてはいけない。有害情報の問題も関係ある。そういったことを教育再生懇談会としては、しっかりやっていければと思っている。私も教育投資充実の緊急性についてという資料を配っているが、皆様の御意見と重なっている。
親には子供の教育への意欲はあるが、教育費負担の不安があって、子供を産むのも躊躇してしまうような状況で、所得格差と学力格差が比例してきている。国からの教育費のサポート額が先進諸国の中では少ないというデータもある。幼児教育から高等教育に至るまで投資充実ということが喫緊の課題である。
教育基本法に基づく、教育振興基本計画の策定と実施が、スケジュール的に迫って来ており、その計画の中に教育投資の充実ということを明記して盛り込むということは、皆さんの御意見を実現していくためにも極めて大事ではないかと思うので、この点は総理、官房長官、文部科学大臣にもよろしくお願いしたい。
渡海文部科学大臣
いろいろと御意見をいただきありがとうございます。早速やれそうなことも中にはあると思っている。
教育振興基本計画は、当初は3月末ぐらいにはと思っていたが、遅れているのはがんばっているからだと思っていただきたい。いずれにしても10年を見据えるわけだから、日本の教育がどういうものになろうとしているのかという姿をしっかりと描き出さなければいけない。
投資の充実については、書ける限り極力書きたいと思っているが、残念ながら今の政府の計画は基本的に投資目標を書かないようになっているので、これを書くのはなかなか難しい。教育振興基本計画ではやるんだとがんばってはいるが、投資と成果の関係というものがなかなか見えにくい部分があり、まず、こういう成果を目指すということをしっかりと書くことで、私としても責任を果たしていきたい。
皆様の今日の御意見も踏まえて、我々としては、できるだけ教育が充実していくようにやっていきたいと思っている。明日、中教審の答申をいただく予定である。
町村官房長官
教育振興基本計画は、いずれ福田総理の下で、最終的な閣議決定になっていく。確かに資料を見ると世界で日本だけが教育投資が減っている。日本は比較的お金をかけずにうまく良い教育をやっているんだと多くの人が漠然と思っている。
昨日、スウェーデンの首相と夕食会をやって、かの国の教育状況を聞いたが、教育には目をつぶってどんどんお金を出すと言っていた。確かに北欧の国は相当教育投資をして、その結果、大変優れた、もとはと言えばノーベル賞の国なのだと思った。高福祉高負担の国、高負担であり高教育投資の国なのだということも改めて実感した。これから国としてどういうように進んでいくのかということが問われる話である。
しかし、別途財政の大借金もあり、厳しく全部を押さえ込んでいる、唯一科学技術投資だけは増やすということになっているが。今後政府全体としてもどういうメリハリをつけながら、教育問題はどう扱うのか。せめて幼稚園だけは無償化したいと今日の話を聞きながら思ったりもしていたが、皆様のお力をいただきながら、しっかりとやっていきたい。
議事要旨は、このあとの福田内閣総理大臣の締めくくり発言で終わっています。
現場にいたわけではありませんので正確な状況はわかりませんが、議事要旨を読む限りでは、この国の教育問題の解決に心血を注ぐ有識者の皆さんが、教育に対する財政投資の重要性、必要性、緊急性などを中心に真摯な議論を行った後の福田総理の発言には個人的には落胆させられました。
内容は次のとおりですが、一国の総理として、この国をどのように導きたいのか、この国の子どもや若者達に何を期待し、そのために自分は何をどのようにやろうと覚悟しているのか、もう少し真剣に考え発言してほしかったというのが正直な感想です。あまりにも的外れなふがいない締めくくり発言だったような気がします。
福田内閣総理大臣
今日は大変興味深いお話をお伺いした。こども園もそうですし、携帯もそうですし、篠原委員の方から携帯を持つべきかどうかという話をしていたが、是非日曜日は携帯を買わないようにお嬢さんをがんばって説得して欲しい。
携帯って一体何のために必要なのかということを考えなければいけないと思う。携帯を持っても悪いことばかりで、良いことは地震とか何かあったときに連絡がつきやすいということぐらいかもしれない。もしそうであるならば、そういう時には携帯が無くてもどうしたらいいのかということを教えるのが本当ではないかと思う。
携帯のフィルタリングの普及という議論の前に、携帯を持つべきかどうかということを議論していただいた方が私はいいと思う。携帯を持つことによって、実際に会って話をすることが少なくなり、人間関係の形成にマイナスで、教育的に言ってもマイナス面が多いのではないかと思う。
悪いと知っていながらやっているのが日本の社会。例えば児童ポルノにしてもそう。メーカーにしてもほとんどはいいメーカーだと思うが、一部の悪いメーカーがあり、そういったことで児童ポルノも流通するということがある。日本はそういうことがあることを許す社会、日本の社会の甘いところだと思う。もう少し厳しい対応すべきだと思う。悪いことは悪いと言い、それをやめさせる社会でないと、良い社会というのはできないというように思う。
携帯も先ほど話があったが、連絡という目的であれば、通話機能だけで良いのではないか。ネットに接続できると悪い大人に利用されるだけなんですから。そのことを1つよろしく御検討願いたいなと思います。
*1:設置趣旨:活力ある日本、世界に貢献する日本を支えるのは人である。社会が大きく変化する時代にあって、明日の日本を担う若者を育てるためには、学校のみならず、家庭、地域、行政が一体となって、不断に教育の改革に取り組んでいく必要がある。このため、21世紀にふさわしい教育の在り方について議論するとともに、教育再生会議の提言のフォローアップを行うため、教育再生懇談会を開催する。