「教育振興基本計画」の在り様については、この日記でもこれまで機会あるごとにコメント(かなりの批判を)させていただいてきました。
●2008-02-18 教育振興基本計画
●2008-03-04 高等教育への投資
●2008-03-11 中教審答申(教育振興基本計画関係)素案
●2008-04-07 骨抜きになった教育の未来
●2008-04-14 大学への財政投資の必要性
●2008-04-19 あらためて、教育振興基本計画
いよいよ閣議決定という最終段階を迎えている中、教育投資の数値目標を巡る攻防が山場を迎えています。
文科省対財務省、「教育支出GDP5%目標」で衝突 (2008年5月1日 読売新聞)
文部科学省は、教育支出額を今後10年間で国内総生産(GDP)の5・0%まで引き上げるという数値目標を、戦後初めて国が策定する「教育振興基本計画」に盛り込む方針を決めた。これまで国の財政事情に配慮し、数値目標には消極的だったが、先進各国に水をあけられていることへの危機感から方針転換した。
しかし、財務省は支出拡大には慎重姿勢のまま。6月にまとまる「経済財政改革の基本方針」(骨太の方針)も見据え、文科省を後押ししようと、河村建夫元文科相ら自民党文教族議員が1日午前、首相官邸を訪れ、数値目標を入れるよう要請するなど政治闘争の様相も帯びている。
文科相の諮問機関「中央教育審議会」が4月18日にまとめた教育振興基本計画の答申では、「欧米主要国と比べて遜色(そんしょく)ない教育水準を確保すべく、教育投資の充実を図ることが必要」という文言を入れただけだった。
一転して、文科省が打ち出したGDP比5・0%という数値は、経済協力開発機構(OECD)諸国が教育支出にかけている公的資金の平均値。日本は現在3・5%で、日米の大学生を比較した場合、一人あたりの公財政支出(年間)は、日本の67万円に対し、アメリカは106万円と39万円の開きがある。
中教審の審議では「教育投資の充実は国力の維持・向上に最低限必要」(安西祐一郎慶応義塾長)といった意見が相次いだが、財務省との事前折衝で数値を入れることを拒まれて断念。自民党文教族からは「この答申では教育水準は上がらない」などと強い不満があがっていた。
文科省は財源として道路特定財源の一般財源化や税制改革に期待しており、実現すれば全国の教員も5年で2万1000人増やすことが可能になる。
しかし、4月30日に自民党議員約20人と面会した額賀財務相は「教育への投資も重要だが、投資より効果が上がる方法もあるのではないか」と慎重で、先行きは不透明だ。
教育計画答申に不満相次ぐ=歴代文相 (2008年5月9日 時事通信)
森喜朗元首相ら文相・文科相経験者が東京都内のホテルで9日開いた会合で、中央教育審議会(文科相の諮問機関)が先月まとめた「教育振興基本計画」の答申に対し、不満の声が相次いだ。教職員定数や教育投資の数値目標が盛り込まれていない上、「教育の基本理念が示されていない」ことが不満の根底にある。
出席者は森氏のほか、伊吹文明、海部俊樹、河村建夫、大島理森の各氏らで、渡海紀三朗文科相や同省幹部らが説明役に回った。出席者からは「必要な予算を取るためのものになっていない」「財務省が教員を増やせないと言うのならOBの活用を」などの意見が出た。
これに対し同省は現行、年間で国内総生産(GDP)比3.5%の教育投資を5%(約24兆円)に引き上げることを計画に明記する考えを示した。しかし、具体的な教育政策、理念が不十分との厳しい注文が付き、同省は計画案の修正を検討することになった。
教育費:GDP比3.5%から5%に引き上げを…文科相 (2008年5月9日 毎日新聞)
渡海紀三朗文部科学相は9日午前、東京都内で開かれた文相・文科相経験者との会合で、教育関連予算を対国内総生産(GDP)比で現在の3.5%から、10年間で5.0%への引き上げを求めていく方針を表明した。今後5年間の政府の教育方針を示す「教育振興基本計画」に数値目標を盛り込む。
同計画は改正教育基本法で策定を義務づけられ、中央教育審議会が4月18日に答申を提出したが、渡海文科相は「もう1回書き直して、各省と折衝したい」と見直しを指示する考えを明らかにした。
会合は自民党政調の文部科学部会が主催。森喜朗元首相は「(同計画は)教育予算を取るためのものだが、そうなっていない」と批判し、数値目標の明記を求めた。
渡海文科相が表明した方針は、教育支出を経済協力開発機構(OECD)諸国平均の対GDP比5.0%並みに引き上げるというもの。同計画は5月中旬に閣議決定する予定だったが、見直し指示を受けてずれこみそうだ。
教育支出「GDP5%」原案明記…財務省の反発必至 (2008年5月9日 読売新聞)
今年度から5年間の教育政策の財政目標を定める「教育振興基本計画」の文部科学省の原案が9日、明らかになった。
焦点の教育支出額について、「今後10年間を通じて、OECD(経済協力開発機構)諸国の平均の国内総生産(GDP)比5・0%を上回る水準を目指すべきだ」と具体的な数値を明記した。
だが、日本の現在の教育支出額はGDP比3・5%で、1・5%の引き上げには、単純計算で新たに7・4兆円の予算が必要となる。財源の手当ての見通しがついていないため、財務省などの反発は必至で、最終的に計画に盛り込めるかどうか不透明だ。
原案は、4月18日の中央教育審議会の「教育振興基本計画」の答申を受け、文科省が作成した。文科省は今後、この原案を基に各省と折衝を行う。
日本の教育支出額は現在、年間約17・2兆円。中教審の答申では投資額の目標は示さず、「欧米主要国と比べて遜色(そんしょく)ない教育水準を確保すべく、教育投資の充実を図ることが必要」とするにとどまっていた。
これに対し原案は、「資源の乏しい我が国では、人材への投資である教育は最優先の政策課題の一つだ」とし、OECD諸国の平均の5・0%を上回ることを目標に掲げた。
いずれにしても、この国の将来に希望を見出すことのできる責任ある基本計画が策定されることを願ってやみません。