政府全体の科学技術振興費は、対前年度18億円(0.1%)増の13,352億円ですが、このうち、文部科学省所管の科学技術振興費は、他府省(環境省を除く)が▲0.9%~▲17.1%の軒並み減額となっている中で、対前年度357億円(4.2%)増の8,929億円と唯一、断トツの増額です。
(関連)国立大学法人運営費交付金の削減止まらず(2010年12月26日 大学サラリーマン日記)
関連して少し気になる記事をご紹介します。
憂楽帳:主計官の苦笑(2010年12月28日 毎日新聞)
「スーパー高度の政治判断です」。研究者に配られる科学研究費補助金が文部科学省の要求額より533億円、25%も上積みされた異例の11年度予算案。記者に問われた財務省主計官は、苦笑交じりに理由を述べた。
「多いにこしたことはないが、積算根拠があるのは要求額まで」と文科省も当惑を隠さない。「科学技術予算を減らすな」という菅直人首相の意向で伸縮自在な補助金を増額、中でも少額の若手支援拡大で帳尻を合わせた。
事業仕分けで批判を浴びたスーパーコンピューター開発や宇宙開発もほぼ満額が認められ、国立大の収入の大半を賄う運営費交付金も、大学法人化後初めて減額に歯止めがかかった。
「理系首相の英断」に沸く関係者。だが、喜ぶのは早い。大学予算の据え置きは1年以内に大学間の合従連衡や「すみ分け」の改革案を出すとの条件付き。定員割れの私学には容赦なく補助金半減の「規律強化」で臨む条項も入った。「未来への投資」のため借金してツケも未来へ回すのか、増税か。苦笑の意味は深そうだ。
http://mainichi.jp/select/opinion/yuraku/news/20101228k0000e070060000c.html
特に、最後のパラグラフは気になります。どういうことなのか詳細はよくわかりませんが、、今後の財務省や文部科学省の動向を注視しておく必要がありそうです。
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参考までに、財務省が作成しホームページで公表している「平成23年度文教・科学技術予算のポイント」という資料から、大学関係予算の特徴と思われる主な記述を拾ってみました。
国立大学法人運営費交付金
- 国立大学等が安定的・継続的に教育研究活動を実施できるよう、基盤的経費を措置(16年度法人化以降、対前年度最小減額、最少減率)
- 意欲と能力のある学生が経済状況にかかわらず修学の機会を得るために授業料減免枠を拡大
大学教育研究特別経費
- カリキュラムや組織の見直しなど、積極的に大学改革を推進する大学を重点的に支援することとし、そのための教育研究環境整備として、国立大学法人施設整備費補助金の中に58億円を新設
- 国立大学法人運営費交付金と合わせると大学の基盤的経費は前年度同額以上(+7百万円)を確保
※下記の大学改革を推進することを条件
大学改革について
大学改革について文部科学省と以下の合意がされた。
時代の要請に応える人材育成及び限られた資源を効率的に活用し、全体として質の高い教育を実施するため、大学における機能別分化・連携の推進、教育の質保証、組織の見直しを含めた大学改革を強力に進めることとし、そのための方策を1年以内を目途として検討し、打ち出すこと。
私学助成
- 教育情報や財務情報等に係る情報公開を促進(「経常費補助金取扱要領」の改正を予定)
- 定員割れ、定員超過、高額給与を支払う大学等への補助金の減額を強化
奨学金事業(無利子)
- 意欲と能力のある学生が経済状況にかかわらず、修学の機会を得ることができるよう貸与人員を増加。有利子奨学金も含めれば、8.8万人の貸与人員の増
- 奨学金の貸与基準については、「主たる家計支持者1人の収入」から「共働き世帯については双方の収入」で年収要件を見ることとする改善措置を実施
科学研究費補助金
- 過去最大の増額を行い、挑戦的なハイリスク研究や若手を含む幅広い研究者からのニーズが高い小規模な研究を柔軟に支援するために、基金化*1を初めて導入
*1:独立行政法人日本学術振興会に基金を設置し、後年度の研究費を含めて一括措置することにより、研究の進捗に応じた資金配分の前倒しや次年度使用を容易にするもの