2011年1月25日火曜日

会議録からみる大学の姿

「大学の社会的責任」の重要な要素の一つに「情報公開」があります。学校教育法施行規則の一部が改正され今年4月1日から施行、全ての大学に共通した情報の公開が義務化されます。

(参考)
学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(平成22年6月16日付文部科学大臣政務官通知)

これまで、一般社会の方々には、大学の中で何が行われているのか非常に見えづらい状況が続いてきましたので、今回の義務化を機に透明性が高まり、「大学と社会の常識の乖離」が少しでも改善されることを願っています。

さて、大学には様々な目的・役割があり、その使命達成のために多くの教職員が働いています。大学が健全な経営を成し遂げていくための仕組みも用意されています。特に国立大学法人は、その運営財源の多くが国民の血税に依っていることから、国立大学法人法に基づく自主的・自律的な経営、さらなるガバナンスの強化を図ることが求められています。

ガバナンスの強化を図っていくためには、学長のリーダーシップが遺憾なく発揮されること、大学の意思決定システムが迅速かつ効率的であり、責任のある決定がなされることが重要になります。

では、各国立大学法人はどのようなプロセスや学内議論を経て意思決定を行っているのでしょうか。各国立大学法人がホームページで公開している会議の記録を通じて、その一端を垣間見ることができます。

国立大学法人には、国立大学法人法によって、役員会、経営協議会、教育研究評議会という会議を設置することが義務付けられています。このうち、構成員のほとんどが学内の教職員である教育研究評議会について見てみましょう。教育研究評議会は、当該大学の「教育研究に関する重要事項を審議する機関」です。国立大学法人法には次のように規定されています。


国立大学法人法(抄)

第21条 国立大学法人に、国立大学の教育研究に関する重要事項を審議する機関として、教育研究評議会を置く。
3  教育研究評議会は、次に掲げる事項について審議する。
(1)中期目標についての意見に関する事項(前条第4項第1号に掲げる事項を除く。)
(2)中期計画及び年度計画に関する事項(前条第4項第2号に掲げる事項を除く。)
(3)学則(国立大学法人の経営に関する部分を除く。)その他の教育研究に係る重要な規則の制定又は改廃に関する事項
(4)教員人事に関する事項
(5)教育課程の編成に関する方針に係る事項
(6)学生の円滑な修学等を支援するために必要な助言、指導その他の援助に関する事項
(7)学生の入学、卒業又は課程の修了その他学生の在籍に関する方針及び学位の授与に関する方針に係る事項
(8)教育及び研究の状況について自ら行う点検及び評価に関する事項
(9)その他国立大学の教育研究に関する重要事項


以下にご紹介する国立大学法人ごとに公表している教育研究評議会の会議録と照らし合わせてみましょう。法定の審議事項を遵守した議題設定や真摯かつ生産的な議論を行っているかどうかに注目です。

会議録のホームページへの掲載状況は国立大学法人によってまちまちです。ほとんどが「情報公開」のカテゴリーに整理されてありますが、「サイトマップ」や「サイト内検索」から探さなければどこにあるのかわからないなど、とても見つけづらい場所に掲載されてあることがわかりました。

会議録については、全ての情報を網羅的に確認したわけではありませんが、大学によって温度差があります。議事録と称されていても内容は簡単な概要だったり、ほとんどの大学では、「・・・について説明があり、これを承認した」といった紋切り型の文章が並んでいます。これでは何をどのように議論したのかさっぱりわかりません。せめて意見交換や質疑応答の概要程度は記載していただきたいものです。

また、会議時間の短い大学は報告事項が少ない傾向があります。報告事項がやたら多い大学があり、どうも国立大学法人法で求められている「審議機関」ではなく、単なる学内の「情報共有の場」になっているようです。会議の効率的運営の観点からも無意味な会議になってはいないでしょうか。

なお、会議の内容そのものではありませんが、事務系職員の列席者がやたら多い大学があります。議案に関係の無い事務職員の列席は人件費の無駄ではないかと思いますがいかがでしょうか。

それでは、各国立大学法人がホームページを通じて公表している会議録をご紹介します。(※私の調査能力が不十分なため誤っている場合はお詫び申し上げます。コメントにてご指摘をいただければ訂正していきます。)


北海道・東北地区




関東・甲信越地区




東海・北陸・近畿地区




中国・四国地区




九州・沖縄地区