2012年11月22日木曜日

国立大学の予算を考える

財政制度等審議会・財政制度分科会(財務省)により行われた「財政について聴く会」(文教・科学技術関係予算、平成24年11月1日開催)に係る「記者会見概要」及び「議事要旨」が公表されていますので、国立大学関係部分について抜粋してご紹介します。

ちなみに、当日の配付資料は、次の2点。


記者会見(分科会長会見の模様)

(田近分科会長代理)

26ページからが国立大学の問題です。ここに書かれたように、国立大学における人的資源、物的資源の配分の見直しを促す仕組み。それから、資金配分の現状と国立大学運営費交付金のめり張りのある配分。それから、セグメント情報等の開示、授業料ということです。これはさっと行かせてもらいますけれども、別に国立大学の人間だからというわけではないのですけれども、27ページ、これが国立大学が目指してきたもの。皆さんもご存じだと思いますけれども、平成13年、遠山プランというのがありました。これは大学をある意味で集約化して、公私トップ30を世界最高水準にと。それから平成16年に国立大学が法人化して、第1期というのが6年間だと思いますけれども、16年から21年。そして、現在は第2期に入っていると。そうした法人化の成果がどれだけ国立大学の運営に反映されたのかというのが、このペーパーのポイントになります。

ポイントだけですけれども、28ページに、国立大学というのは、評価されます。例えば教育水準の評価で、下ですね、教育の実施体制、内容、方法云々で、実は期待される水準を下回るものというのは、どれも1%。就職状況が1.8ですか。基本的にわずか1%で、これが評価になっているのかというような話。つまり何を言っているかというと、予算のめり張り、法人化した後、国立大学がどれだけ改善されたのかということです。

29ページが、メリハリの話になります。この表の一番左が一般運営費交付金。これが平成16年から24年度の合計で、したがって、非常に大きな額になるのですけれども、これは3兆になって、トップ10のシェアが42%。というか、見ていただきたいのは、右側に特別運営費交付金と書いてあって、これは各大学が文科省にこういうことをしたいということで申請して、ある意味で文科省から選ばれてと、これが、メリハリということでは左と右がほとんど同じだし、トップ10のシェアもこれだということで、メリハリづきの予算になっているのですかと。

一方、科学研究費、3番目が公私立補助金というのは、我々の世界だと要するに競争的な資金です。グローバル何とかとか、そういうことです。グローバルCOEとか。科学研究費の補助金の方は、ごらんになっていただくと、トップ10で68%のシェアという風にメリハリになっているのではないですかと。

以上、説明していくと長くなりますから、そういうことで、これまでの国立大学の運営というのが、法人化された後、競争を促して、中から変わっていくメカニズムが必ずしも見られなかったのではないですかということです。

授業料です。授業料は36ページからですけれども、国立大学の授業料というのは、53万5,000円と。86大学のうち、標準と異なる授業料を設定したのは5大学と。5大学全て標準よりも1万5,000円安くしているということで、こういう横並びでいいのかと。法人の努力というのはここに反映されているのですかということです。

あとは、授業料に関しては、所得別というのはどこだっけ。授業料については、それをフレキシブルにしていくと。一方、それに関しては、所得の低い人にはまけてあげるというメカニズムも必要ではないかということです。

それから、あとは簡単で、させてもらいます。奨学金については、これは金利が・・・、そこ言ってくれる?

(諏訪園主計官)

40ページでございますけれども、独法の日本学生支援機構が行っている奨学金の無利子のものと、それから、有利子のものでございますが、その貸与基準の   でございまして、その下の日本政策金融公庫の政策融資として行っております教育ローン、これに比べて貸与基準が緩やかであると。無利子ですら政策金融公庫の有利子2.35%ですが、これよりも上限基準が緩いので、どうなのだろうかということを問題提起させていただきまして、本来、例えば平均所得700万以上の人は有利子ではないですかという議論もあるのではないでしょうかということをご紹介いたしました。

(田近分科会長代理)

そういう要するに貸与基準のあり方と。

それで、科学技術費については、これが43ページからですけれども、基本的には研究費の配分シェアの固定化というところで、予算自身は44ページをごらんになっていただくとわかるのですけれども、その他の予算と比べて、元年100にしたときに、伸び率はこうなっていると。ただ、それに対して、配分というのが、どこを見ていただいてもいいのですけれども、その次のページが国際的な比較ですけれども、配分は46ページですね。46ページをごらんになっていただくと、変わっていないと。等ということで、この予算が戦略的に使われたのかという議論です。ちょっとアバウトですけれども。以上が義務教、大学予算、奨学金、科学技術ですけれども、そのテーマで報告されました。

それで、ディスカッションですけれども、・・・大学の方は、もちろん、一部の委員、議論の活発さからいうと、義務教育の今言った議論のところよりは非常に活発に出ました。大学については、もちろんそれは競争的にさせて、集中というか、競争を高めるのは大切ですねということでありましたけれども、授業料については、やはり多くの、かなりの議論が出て、やはり53万幾らで一定というのは、それはおかしいねと。それが国立大学の努力で反映するようにしていったらどうだという意見がありました。

それから、奨学金については、さっき言ったように資格要件ですから、特に意見はなかった。

科学技術については、何人かの、ビジネスサイドの人だったと思いますけれども、やはり国家戦略が重要なのではないか、あるいは国策に基づく集中と選択、同じことですけれども、顔の見える科学技術戦略というのが必要ではないかというのは、それぞれのお立場というか、お仕事されてきた背景から、そういう議論が出ました。というわけで、文教についても活発な議論がされました。


議事要旨

  • 大学は情報公開をすべきというが、大量に資料を作ることが重要なのではなく、実績・パフォーマンスをもって評価すべき。
  • 科学技術については、長い目で見て、ボトムアップではなく、国策に基づいてトップダウンで実施すべき。
  • 文教予算については、OECDの提言を踏まえた検証を進めていくことが必要。
  • 外部資金が増えたとの指摘があるが、外部資金の大半は研究に向けられ、教育にはほとんど回らない。したがって、大学への運営費交付金の議論を行う場合は、教育についても着目することが必要。
  • 現状、大学は学部・学科ごとの計画が定められていないため、評価を行うにしても、何を基準にすべきかが不明確になっている。目標・計画をしっかりと定めることが重要。
  • 所得水準に応じた授業料の設定は是非推進すべき。優秀な人材が良い教育を容易に受けられないということとなれば、将来の日本にとって非常に大きな損失となりかねない。
  • 大学授業料を、所得ではなく成績に応じて変えることも考えられるのでないか。学習へのインセンティブも図られる。大学の運営は、運営費交付金もあるが、まずは授業料を持って考えるべき。
  • 大学について何を基準にするかという問題はあるが、当初の想定よりも評価が低かった場合には交付金を削減するなど、ペナルティを設けることが重要ではないか。
  • 全ての大学が研究を行う必要があるのか。教育に特化する大学があってもいいのではないか。また、研究に関する予算の対象を主要大学に限定し、集中的に投資すべき。
  • 科学技術振興費について検討するに際しては、その効果(特にポジティブな効果)を示されたい。
  • 大学・科学技術振興費の評価について、きちんとした評価システムが必要。
  • 科学技術の国家戦略が必要。短期・中期・長期のプランを定め、いかなる分野を振興していくべきかを決定した上で、当該分野に集中的に投資を行うべき。
  • 国立大学の授業料については、これを増額すると交付金が減らされるとの観念が大学側にあるので、これを変えていく必要。良い教育成果をあげれば、交付金額にも結び付くというインセンティブ付けが大事。また、大学におけるマネジメントのプロフェッショナルも必要。
  • 所得に応じて学費を決めるという制度は理想的ではあるが、真の所得を把握することは非常に難しい。学生の成績に応じて学費を決めるという制度の方が現実的ではないか。
  • 予算全体を考えて、各予算間のバランスを取る必要。将来への投資である文教予算と高齢者への予算である社会保障予算との額のアンバランスを是正していくという視点があってもよいのではないか。
  • 研究開発予算について、きちんと評価をしてきたのか、SABCで評価をしても、どれもいいとなってしまい、今はその方式をやめている。評価方法を見直す必要があるのではないか。