大学・高専における教育に生成 AI の利活用を検討する際には、以下の点に留意することが重要である。
▶生成 AI と学修活動との関係性、成績評価:
大学・高専における学修は学生が主体的に学ぶことが本質であり、生成 AI の出力をそのまま用いるなど学生自らの手によらずにレポート等の成果物を作成することは、学生自身の学びを深めることに繋がらないため、一般に不適切と考えられること。また、生成 AI の出力に著作物の内容がそのまま含まれていた場合、これに気付かずに当該出力をレポート等に用いると、意図せずとも剽窃に当たる可能性があること。
学生がレポート等に生成 AI を利活用した場合には、適切に学修成果を評価するため、利活用した旨や利活用した生成 AI の種類・箇所等を明記させることや、小テストや口述試験等を併用するなど評価方法の工夫を行うことも有効と考えられること。また、AI が生成した文章かを判定するツールを学修成果の評価等に活用する場合でも、その結果を過信しないことが重要であること。なお、利活用や学修成果の評価等に当たっては、生成 AI の種類(有料版か無料版か)により、成果物に差が生まれ得ることにも留意することが重要と考えられること。
▶生成 AI の技術的限界(生成物の内容に虚偽が含まれている可能性):
大規模言語モデルを活用した生成 AI は、基本的に、ある語句の次に用いられる可能性が確率的に最も高い語句を出力することで、文章を作成していくものであり、AI により生成された内容に虚偽が含まれている又はバイアスがかかっている可能性があること。こうした生成 AI に関する技術的限界を把握した上で、インターネット検索等と同様に、出力された内容の確認・裏付けを行うことが必要と考えられること。
▶機密情報や個人情報の流出・漏洩等の可能性:
生成 AI への入力を通じ、機密情報や個人情報等が意図せず流出・漏洩する可能性等があるため、一般的なセキュリティ上の留意点として、機密情報や個人情報等を安易に生成 AI に入力することは避けることが必要と考えられること。なお、特に教職員が生成 AI を利活用する際には、各大学・高専における情報セキュリティに関する指針や、個人情報保護法を踏まえた対応が必要となることに留意すること。また、生成AI の種類によっては、入力の内容を生成 AI の学習に使用させない(オプトアウト)ことができること。
▶著作権に関する留意点:
他人の著作物の利用について、著作権法に定める権利(複製権や公衆送信権等)の対象となる利用(複製やアップロード)を行う場合には、原則として著作権者の許諾が必要となること。AI を利用して生成した文章等の利用により、既存の著作物に係る権利を侵害することのないように留意する必要があること。
学校その他の教育機関での授業においては、著作権法第 35 条により許諾なく著作物を複製や公衆送信することができるため、学生や教職員が AI を利用して生成したものが、既存の著作物と同一又は類似のものだったとしても、授業の範囲内で利用することは可能となる。ただし、広くホームページに掲載することなどは、著作権者の許諾が必要となることに留意すること。
上記の観点のほか、生成 AI を含む AI の利活用に当たっては、各大学・高専の学生等が、その最新の動向、AI の普及による可能性とリスク、倫理面やデータリテラシー等を含むデジタル化社会に対応するための基礎的な知識・能力等について理解・習得することが重要である。また、そうした AI に関する授業科目等については、AI に関する技術の進展や社会での活用状況等を踏まえて、適宜改善を図ることも重要である。