必死の努力や、血眼の努力は、見ていて苦しくなる。
「ゆっくり」や「ゆったり」という余裕がないからだ。
順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、日本文化の真髄は「ゆっくり」や「ゆったり」だという。
それは、武道や茶道、華道などの日本の伝統文化の「道」にある。
たとえば、お辞儀をするときは、「残心(ざんしん)」が必要だという。
残心(ざんしん)は、武道でもよく使われる言葉だ。
残心は、技を決めた後でも、相手の反撃に対して油断をしない、気を抜かない、という心的態度であり、かまえでもある。
だから、剣道では、一本とったあとガッツポーズなどしようものなら、驕(おご)りや慢心があり、「残心なし」とみなされ、一本を取り消されることもある。
「寝食を忘れてやる」「命がけでやる」という血眼の努力には、「残心」はない。
真剣と深刻とは違うように、真剣にやるのはいいが、何事も深刻になった途端、余裕がなくなる。
「血眼ではなく、ゆったりとした努力を」という言葉を胸に刻みたい。