新年度が始まりました。国立大学法人ではいよいよ第二期中期目標期間の幕開けです。
毎年のことながら、3月31日と4月1日は、一日違いなのに、職場の雰囲気が全く違います。
3月31日は別れの日。退職される方、異動により学外へ去られる方々の挨拶廻りの光景が見られます。なかには感極まって涙される方もおられます。様々な思いや苦労がこみ上げてくるのでしょう。
一方、4月1日は出会いの日。他の機関から異動される方、新たに社会人になられる方々のはつらつとした声が聞かれます。希望と不安でいっぱいの出発の日です。
また、4月1日は、事務職員の人事異動の日でもあります。辞令交付式や着任式を経て、配属先への挨拶廻りなどであっという間に一日が終わります。
最近、国立大学法人では、文部科学省への業務実績報告書や財務諸表の提出が6月末とされているため、定期の人事異動を7月にしている大学も増えてきました。ただ、退職者の補充やいわゆる異動管理職といわれる転勤族の人事についてはどうしても4月に行わざるを得ず、年度当初はやや混乱気味の人事異動の季節になっています。
事務局長、部長、課長クラスの異動管理職については、行政刷新会議による事業仕分けでも指摘されたように、法人化に伴い事務職員の人事権が学長に移譲されたにもかかわらず、未だに文部科学省の手によって人事が行われています。
法人化前の国立大学は、法律上も制度上も文部科学省の出先機関だったこともあり、文部科学省の人事によって各大学に配属される管理職は、文部科学省から情報や予算をとってくるという、いわばパイプ役でしたから、学長や教員は異動管理職には一目置かざるを得ない状況でした。そのため、異動管理職は、学長や教員を文部科学省の意向どおりに動かすことが、自分達が文部科学省に認められる重要な要素であることを認識しながら仕事を行っていたという言い方もできます。もちろん、短い在任期間中に、配属された大学のために自分の知識や経験を活かしながら、管理職としての仕事を一所懸命に続けておられる方々もたくさんいます。
文部科学省による人事の弊害の一つは、管理職が配属された大学を良くするために自身の能力を遺憾なく発揮することよりも、文部科学省の人事で異動しているために、彼らが本省を向いて仕事をしていることです。人事権は本省にあり、本省の意向に沿った実績を残すことができれば、次の異動でより格の高い大学に動かしてくれるという期待が彼らの原動力となってしまっているという点です。
この状況は法人化後6年経過した現在でも変わっていません。法人化後は、地元採用の職員が管理職になることができる内部昇格制度が導入されましたが、残念ながら異動管理職に比べれば総体的にまだまだ能力のレベルが低く、転勤もなく適当に仕事をしていれば無事に定年を迎えることができるといった公務員気質が抜けていない人が少なくありません。
今後は、その大学、教員、地域のことをよく知り、大学を愛する気持ちの強い地元採用の職員、特に若手職員の管理職への抜擢が必要になります。しかしその場合には、他大学の経験を経ることにより、視野や経験を広げさせた上で登用を図るべきでしょう。そうすることにより、文部科学省による人事に頼らなくてもいい自立した力をつけ、法人化のメリットを活かした大学経営が可能になっていくのではないかと思います。