2010年4月23日金曜日

新成長戦略と高等教育

社団法人日本経済団体連合会は、去る4月13日に、「豊かで活力ある国民生活を目指して」と題した経済成長戦略についての提言を発表しました。

報道では、消費税率を早期に10%にして社会保障費用の増加分に充てることが大きく取り上げられていますが、実はこの提言の中には、高等教育に関する記述もあります。抜粋してご紹介します。

質の高い教育による厚い人材層の形成

基本的な考え方

わが国の経済社会を支え、活性化に貢献する人材を、高等教育を中心に育成していくことは、今後とも必要である。企業活動のグローバル化が進展する中にあっては、とりわけグローバル化に適応できる人材や理工系・技能人材など、その育成・確保は、競争力に直結する極めて重要な課題である。

加えて、多様な価値観・発想力による経済社会の活性化や、企業の国際競争力の強化という観点から、ICTや研究開発、金融、商品開発、海外事業展開等で活躍が期待される高度人材を積極的かつ継続的に受け入れていくことが求められる。とりわけ、将来の高度人材となり得る留学生の受け入れを、質の面にも留意しつつ、大幅に拡大していくことが不可欠である。

基本方針に盛り込まれている目標や施策

こうした中、基本方針では、質の高い教育による厚い人材層の形成を目指し、(中略)高等教育では、未来に挑戦する心を持って国際的に活躍できる人材を育成することが掲げられている。さらに、教育に対する需要を作り出し、これを成長分野としていくため、留学生の積極的受け入れとともに、民間の教育サービスの健全な発展を図ることとされている。

目標の達成、施策の充実に向けた具体的な提案

大学等の高等教育機関においては、グローバル化に対応して、国際化対応能力を含めた教養等を深める教育の充実を図ることをはじめ、企業のニーズ等を踏まえた実践的な教育内容の拡充とそのための産学連携の強化、学生の勤労観や職業観を育むとともに就職のための適切な支援を行うキャリア教育の充実、入学時から卒業までの期間を通じた成績評価に基づく学生の質の担保、卒業生や就職先へのアンケート結果などの大学評価の予算への反映、世界トップレベルの教育・研究拠点を目指し実績を上げる大学への積極的支援、道州制を念頭においた地域内の大学の機能に応じた再編を図るべきである。また、人材育成の上で重要な高等教育段階においては、家計の教育費負担が最も重くなることを踏まえると、例えば教育資金積立への税制優遇など、家計負担を軽減し、自助努力を支援するような制度整備が求められよう。

同時に、わが国企業の競争力を高めていくためには、高度な研究や技術開発を行う理工系人材を育成していくとともに、生産現場を担う技能人材の確保も同時に進めることが求められる。そのためには、初等中等教育段階から、理科授業の充実や、実験・実習の拡充を通じて、理工系学問やものづくりへの関心を高めるとともに、就業環境の魅力向上を図ることが重要である。

さらに、教育に関する需要を作りだすという点については、まず、海外の優秀な人材を国内の大学等で受け入れる戦略的な留学生受け入れ政策が求められる。わが国では留学生数は緩やかながら増加しているものの、留学生が高等教育機関の在籍者に占める割合は欧米先進諸国に比べて低い状況にある(図表:略)。今後は、受け入れ先である大学・大学院等が、理工系・文科系を問わず、教育・研究のグローバル化を進めるとともに、関係機関が連携して留学に関する情報を積極的に提供することなどを通じて、優秀な留学生の獲得に主体的に取り組むことが重要となる。また、留学生への奨学金の充実、学業との両立を目指した大学内の業務に従事し収入を得られる仕組みの構築、宿舎の確保等、留学生が安心して勉学に専念できる環境づくりを推進することも求められる。さらに、質の高い留学生が、卒業後も引き続き、日本国内で活躍できるよう、日本語・企業文化の理解促進、就労環境の整備等に努めるべきである。また、わが国では理工系学生に対する求人が比較的多いが、留学生全体に占める理工系専攻者の割合は国内学生よりも低いことから、理工系を専攻する留学生を増やす必要がある。例えば、将来的に留学生を30万人に増やす場合には、理工系留学生の数を7万人程度にすることが考えられる。

全文はこちらです。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/028/index.html