2011年11月12日土曜日

一日も早く”地力”をつけよ、サラブレッドより野ネズミの方が強い(土光敏夫)

この日記を始めて、11月9日で丸4年が経ちました。読者の皆様のおかげでなんとか続けることができています。心からお礼申し上げます。
最近は、ニュースなどの”情報提供型”に偏ってしまって、少々魅力のない内容が続いておりますが、なるべく自分の意見なども取り入れていきたいと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


今日から、時折、土光敏夫さんの言葉を紹介していきたいと思います。

よく若い人に言うのだが、一日も早く”地力”をつけよ、と。僕はこの”地力”という言葉が好きで、これは人間の足腰を鍛え、少々のことではへこたれない本物の力を意味する。地力をつけるには、苦労を体験するのが必須条件だ。苦労を知らぬ人間は、端から見れは一にしかみえぬ打撃が十にも二十にも感じられ、そのショックひとつで潰れてしまうことがある。学校秀才型の、いわゆるエリートにその傾向が多くみられる。

土産物店などで、”上げ底”がよく問題になるが、人間もそれと同じで底辺を知らぬ「上げ底人間」は総じて弱い。叩かれ踏まれた体験がないものだから、僕らがなんとも思わないことでも、なにか問題が起きたとき、その対応に右往左往する。しっかりと受けとめて、冷静に対処することができないんです。

一のショックを十に感じる者もいれば、十のショックを毛ほどにも思わぬ者もいる。厚顔無恥は困るけれども、そのくらいの根性がないと、長いサラリーマン生活はやっていけません。いつも自分を最低の線、つまり社会の底辺に置いておけば、何が起こったって怖くはない。矢でも鉄砲でも持ってきやがれ--と、そのくらいの気概で生きることですよ。

サラブレッドはカッコいいが、僕はそれよりも野ネズミのほうが、より強いと思うわけです。サラブレッドは、みんなが寄ってたかってエリート馬に仕立てあげる。しかし、役目が了わればそれまでだ。が、野ネズミは踏まれても蹴られても、へこたれない生命力を持っている。人間だって、その本質に変わりはなく、いざとなれば野ネズミのしぶとさを持つ者が、サバイバル戦争に勝ち残る。

目先の現象に一喜一憂せず、どんと構えて正面から物事を受けとめる、そういう根性のある人こそが生き残る時代だと思うのだが、はたしてこれは極論すぎるのでしょうか。(土光敏夫大辞典)

昭和人間記録 土光敏夫大事典