資料「私立大学におけるガバナンス改革-高等教育の質の向上を目指して-」
◇
資料5ということで、これは、経済同友会において、私、教育問題委員会の委員長をさせていただいておりますが、この3月に前年度の提言として発表させていただいたものです。本文自体が何ページにもわたるものなので、一番上に大きな紙で概要版をつけております。そちらに沿って御説明いたします。
経済同友会の教育問題委員会、経済同友会そのものがそうなのですが、教育問題委員会も大学関係者の方、おられることはおられるのですが、大多数が企業経営者を中心にしております。したがいまして、今までの3組の先生方は大学そのものですが、そういった方々とは違いまして、大体月に一度ぐらい大学関係者、ないしは、そういったことに詳しい人たちに来ていただいてお話を聞き、我々がけんけんがくがくでやって、まとめたものです。
まず、どうしてガバナンス改革かというのがまとめの一番左上の「はじめに」というところにあります。高等教育に関していろいろ課題があって、どのように改善していかなきゃいけないかという、主要な項目だけかもしれませんが、ざっと挙げております。この中教審であったり、いろいろなところの答申であったり、提言であったりしているのですが、一つの問題意識としてはなかなか歩みが遅いというか、スピード感がないというのが率直な感想でして、その一つの原因としてガバナンスの在り方という点についても、その原因があるのではないかということで、黒抜きしておりますように、1年前、ここにフォーカスしてやっていこうということになりました。
まず、左下半分ですが、1ポツのところで、「大学のガバナンスの現状と問題点」という点で5点挙げさせていただいております。本来、最高意思決定機関である理事会が実質的な決定権限を有しておらず、学長の選任であるとか、教員の採用などの権限は事実上、教授会にあるという点を指摘させていただいております。
また、大学や学部の最高執行責任者である学長や学部長の権限もあまり強くない。これは、学長も学部長も事実上、教員による選挙で選ばれているためです。
次に、学部教授会ですが、教授会は本来、教学に関する重要事項について審議する機関ですが、実態としては大分経営的な事項にも日常的に関与している。そうすると、組織決定に迅速性が欠けるであろうし、教員の不利益になるような改革については教授会の抵抗によりなかなか進まないという原因があるのではないか。
四つ目として、評議員会と監事が理事会を監視する役割を十分に果たしていないことを指摘しております。
次に、真ん中の2の「大学のガバナンスに対する考え方」で、まず理念的なことを述べさせていただいております。これは、そのまま読みますと、「ガバナンスとは、組織における権限・責任体制が構築され、それを監視する体制が有効に機能していることであり、この観点では、企業であれ、大学であれ、何ら変わることはない。大学ガバナンス改革では、教授会の影響力が強い現状のガバナンス構造を見直し、理事会の経営・監督機能の強化、ならびに執行部門のトップである学長の執行権限の強化が鍵である。各大学においては、ガバナンス強化の目的を明確にし、大学全体の経営力の強化、経営資源の拡充などに取り組むべきである」という理念的なことを述べまして、3ポツでガバナンス改革のための10の提言という形で整理させていただきました。
この10の提言は大きく二つに分かれておりまして、真ん中のところの組織体制に関する提言と右側の人材に関する提言という形です。
まず提言1、組織体制側のほうですが、理事会の権限及び経営・監督機能の強化を挙げています。具体的には、理事会を実質的な最高意思決定機関とするため、学長選挙を廃止し、理事会が直接学長を任命することを提言しております。
2では、学長・学部長の権限の強化です。学長による大学内における人事・予算権限を理事会が付与するとともに、学部長選挙を廃止して、学長が学部長を任命できるようにすべきであるとしております。
3では、教授会の機能・役割の明確化です。教授会は、学長などが教育・研究に関する重要事項に関して教員の意見を聴取する場、または情報共有する場とした上で、教授会は本来の機能・役割を認識すべきと言わせていただいております。
4は、評議員会の役割の明確化で、評議員会は教職員以外の外部メンバーの比率を高めるべきということで、これは、評議員会の監視機関的な役割を強化するためです。
5は、監事の機能強化です。
6は、ガバナンスの透明性・健全性を担保する情報公開の充実を挙げております。ガバナンスの健全性を維持するためには、企業も同様ですが、情報公開が不可欠であります。
次に、右側の人材育成・活用に関する提言のほうですが、7として経営人材の育成を挙げ、経営人材に必要な資質・能力を提示させていただいております。
8では、外部理事の活用です。理事会の経営力を強化するため有識者、企業経営者など、外部理事の活用を挙げさせていただいております。
9は、教学アドバイザー、学長顧問の活用であります。学長への助言機関として、これも有識者であるとか企業経営者などからなるようなアドバイザリーボードをつくることを提案しております。
10は、教員の適正な評価と処遇への反映です。適正な評価制度を構築して、教育・研究、組織運営をバランスよく評価し、処遇に反映させるべきということで、10の提言ということで挙げておりますが、右下のほうで大学ガバナンス改革を促進する仕組み・制度についても3点ぐらい述べました。
一つ目として、私学助成金の配分ルールの明確化です。これは、ガバナンスが良好な大学に私学助成金がメリハリをつけて配分されるような、配分にそういった基準を入れたらどうかというようなことの提案です。
二つ目が認証評価制度の活用で、大学が7年に一度受ける認証評価において、ガバナンスの状況も項目の一つとして評価したらどうかという提案です。
三つ目は、行政の関与の在り方ですが、私立大学は本来、自主独立であり、文部科学省の行政指導は透明性のある一定のルールに従って行われるべきであるとしております。
説明は以上なのですが、これは、私立大学という7割以上を占める非常に多くの大学ということで一般論でくくれるものではなく、大学自体、それぞれ区々であることは十分承知しておりますが、こういった一つの提言が部分的にでもうまくインパクトを与えるような形で動いていただければということで、中教審にというよりは、世の中に問うというような形が経済同友会のスタンスですので、皆さんのプロフェッショナルな部分ではいろいろおありでしょうが、企業経営者のほうから考えたという点で御理解いただけたらと思います。