これは、2020(平成32)年までの我が国の成長戦略であり、「人材育成戦略」など11の戦略分野についての政策が明示されています。
大学関連部分について抜粋してご紹介します。
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(P54)
②我が国経済社会を支える人材の育成
<基本的考え方>
高等学校卒業者の大学等への進学率が5割を超えている中、2012年3月卒業の新規学校卒業予定者の就職環境は、大学卒業者の就職率(2012年4月1日現在)が93.6%と若干ではあるが改善の兆しが見えてきたものの、引き続き改善に向けた取組が必要な状況にある。また、人々の財・サービスの需要が変化してきており、その変化に対応したイノベーションを担う能力など、産業構造の変化に応じた職業能力が求められている。
このような中で、大学卒の新規就職者の3年以内の離職割合は3割程度、高等学校卒の新規就職者の3年以内の離職割合は4割程度となり、大学・大学院卒のニートも増加傾向にある。また、大学等の教育面での力点と企業の大学等への期待にミスマッチが生じている部分がある。さらに、国際競争の激化や非正規雇用の増加が進む中で、これまでのように企業内教育に依存するだけでは、能力の蓄積の機会を得づらくなってきている。
「新たな時代の開拓者たらん」という若者の大きな志を引き出し、自ら学び考える力を育む教育などを通じて叡智にあふれる人材を育成していく必要がある。産業構造の変化や新たな国際分業等に対応するために求められる人材ニーズを踏まえ、産学官の連携の下、知識・情報を社会や市場につなぐ仕組みを戦略的に強化する人材育成システムの再設計を図り、人材の底上げやニーズに対応した多様な人材の育成を実現する。また、若者が経済的理由で進学を断念することがないよう奨学金などの就学支援を推進する。
このため、我が国経済のインクルーシブな成長を目指し、産学の連携・協力を図りながら、成長分野やものづくり分野における職業教育・職業訓練や、いわゆる「手に職を持つ」、「技術や専門性を有する」自営業者や個人事業主を育成するなど自立するための職業教育・職業訓練を強化し、実践的な職業能力評価の仕組みの導入を図る。また、若者の国際的視野を涵養する取組を推進し、語学力・コミュニケーション能力を含め、新たな価値やビジネスを創造できる能力を持つ人材を育成することが必要である。さらに、こうした方向に資する教育改革に取り組む。これらの取組を通じて、社会経済を支える人材の底上げやグローバルに通用する高度人材の育成・確保を図り、企業や教育現場等における活躍を進める。
(P55~57)
【人材育成戦略】
未来への投資として次世代の育成を進めるため、633制の柔軟化等による意欲ある地域の取組の促進、大学ビジョンに基づいた高等教育の抜本的改革など、社会の期待に応える教育改革を推進し、社会を生き抜く力を養成する。また、グローバル人材の育成や教育と職業の円滑な接続、社会人の学び直し等の環境整備等に取り組む。これらの取組を通じて、社会経済を支える人材の底上げやグローバルに通用する高度人材の育成・確保を図り、企業や教育現場等における活躍を進める。
(重点施策:大学ビジョンに基づく高等教育の抜本的改革の実施)
大学に求められる多様な役割・ニーズを踏まえて2012年度中に大学ビジョンを策定するなど、新時代に適応する特色ある高等教育の実施のための具体的取組方策・支援基準を取りまとめ、国立大学改革の方向性を提示するとともに、国立大学改革を先行実施する。2013年央までに取りまとめる「国立大学改革プラン」を踏まえて大学・学部の枠を超えた連携・再編成等を促すなどの改革の加速化を図るとともに、財政基盤の確立と基盤的経費(運営費交付金、私学助成)等の一層のメリハリある配分の実施や、私立大学の質保証の徹底推進を図る。加えて、大学のマネジメント強化、学修環境整備、大学入試改革、地域再生の拠点としての大学の機能強化等を進めることなどにより、高等教育の抜本的改革を進め、世界レベルの高等教育を目指す。
(重点施策:グローバル人材の育成と社会人の学び直し等の推進)
グローバル化や産業構造の変化が加速する中、国際的に活躍する人材を確保するとともに、意欲のある者の多様な学習機会を確保するため、グローバル人材の育成や社会人の学び直し等の推進、学びのセーフティネットの構築や児童・生徒の心のケアの充実に取り組む。
①グローバル人材育成戦略に基づく取組や社会人の学び直し等の推進
豊かな語学力・コミュニケーション能力等を身につけ、国際的に活躍できるグローバル人材への需要はますます増加しており、「グローバル人材育成戦略」(平成24年6月4日グローバル人材育成推進会議取りまとめ)を踏まえ、国際的に誇れる大学教育システムを構築するとともに、民間での取組を含め様々な形での日本人学生等の海外交流を促進し、質の高い外国人学生の戦略的獲得、国際化対応ビジネス人材の育成を図る。また、大学の秋季入学導入の進捗状況に応じた環境整備を進めるとともに、国家公務員の採用に関し、留学経験者の選考・採用時期の配慮など通年採用も含めた採用時期等の柔軟化による多様な人材の確保など可能なことから率先して取組を進める。さらに、2014年度には、大学の秋季入学等の導入に関する政府として基本的な対応方針を整理する。
また、大学・専門学校等における社会人の学び直し等のニーズに対応した学修機会の提供や、「人を活かす」サービスの創出等による再教育・マッチングの仕組みの構築を図る。
②奨学金制度の改善への取り組み
奨学金制度の拡充を図り、進学意欲のある学生が広く教育を受けられる教育環境を整備し、就学支援をきめ細かく推進する。このことによって、進学を希望する学生が経済的な理由から大学・短大・専修学校等への進学を断念することがない社会を構築する。また、入学前のつなぎ融資・教育ローンの保護者貸付から学生本人への貸付への変更についての制度的工夫を図る。奨学金制度の拡充・就学に対する金融支援の見直しで、親の教育負担の大幅な軽減を実現する。
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上記については、内閣官房国家戦略室のサイトにおいて、わかりやすく説明されています。「人材育成」戦略については、こちらをご覧ください。
なお、この「日本再生戦略」については、平成25年度予算の編成において、重要な位置付けとなることが予想されることから、国立大学協会からも見解が公表されています。