日本の大学等と企業との共同研究は小規模なものが多く、約8割が300万円以下にとどまっているが、欧米の大学では1000万円以上の大規模な共同研究が多い。様々な要因があるが、その一つが日本では共同研究を実施するための基本的な体制が整備されていないことである。
企業からは、進捗管理ができておらず、いつまでにどのような成果が出るのかが曖昧なため、大型の共同研究契約を組むことが難しいという声を聞く。また研究者からは、本部からやれと言われるが、自分の研究が進まないため、あまりやりたくない。大学本部は、多くの共同研究を受け入れてもあまり実入りが多くないし、特許維持費が経営を圧迫している。様々な不満の声がある。
適切なコスト計算や共同研究を行うためのスキーム、研究者評価などの課題があり、それらがトータルシステムとして機能していないために、こうした不幸な状況が生まれてしまう。
ガイドラインは、そうした環境を整備するための考え方や具体的な事例などを示しており、適切に使えば機能強化に役立つだろう。もちろん、大学によって規模や機能が異なるため、全てを一律にはできないが、最低限満たすべき条件はあるだろう。指定国立大学ではなおさらだ。