2017年1月23日月曜日

記事紹介|続・根絶を願う、文科省の失態

文部科学省による官僚の天下りの実態が明らかになった。

政府の再就職等監視委員会が国家公務員法に違反する、もしくはその疑いがあると指摘した例は4年間で38件にのぼる。

組織ぐるみで法を曲げ、口裏合わせをして隠蔽(いんぺい)を図る。その姿勢に憤りを覚える。

教育を担う官庁が見せた無軌道ぶりは、文教政策への深刻な不信と疑念を招いた。この先どんな顔で、子どもたちに「道徳」を説くのだろうか。

監視委が調査を始めたきっかけは、大学の設置認可や私学助成を担当する高等教育局の前局長の動きだ。2年前の秋、退官からそう日をおかずして早稲田大の教授になった。

大学は、教授の業務を「政策の動向の調査研究」「文科省の事業に関する大学への助言」とウェブサイトで紹介していた。

少子化が進み、大学の経営環境は厳しい。いかに国の政策を先取りして予算を獲得するかに、多くの大学は懸命だ。

そこに有力な文部官僚が天下る。世間の目を気にしてしかるべきなのに、逆に関係を誇示するような記載は、感覚のマヒを雄弁に物語っている。

監視委によると、前局長は文科省在任中から求職活動をし、人事課は前局長の履歴書を作って早大に送ったうえ、面談日程の調整までしていた。

官民の癒着をなくそうと、07年に国家公務員法が改正された。現役の役人による求職活動も、省庁側による再就職のあっせんも禁止になった。前局長の例はこのどちらにも触れる。

さらに驚くのは、文科省が人事課経験のあるOBに、退職予定者の個人情報や外部の求人情報を伝え、マッチング作業をさせていたと、監視委が認定したことだ。辞任した事務次官もこの仕組みを使ってあっせんに関与していたという。事実ならば省をあげての脱法行為というほかなく、悪質度は極めて高い。

文科省は、監視委と連携して再就職の例を洗い直し、問題ありと判断した場合は、自主的な退任を求めるなどの対応をとるべきだ。再発防止に向け、職員や大学に対し、法の内容を徹底させることも欠かせない。

徐々に変わりつつあるとはいえ、中央官僚の世界には、同期入省者が次官に就任したら、他の者は定年前でも退職する不文律があり、再就職先の確保は大きな関心事になっている。

安倍首相は、他省庁でも違法な再就職がないか調査を指示した。当然の措置だが、官僚制度の大本や文化にまで切り込まねば、病の根を断つのは難しい。