プラネタリウムに少し疲れたサラリーマンが1人でやってきた。
他にお客さんは現れなかったので、係員は男性にそっとこう言った。
「生まれた日の夜空を眺めてみませんか?」
誕生日を機械に打ち込むと、男性の頭上に満天の星空。
星座や天体の解説が、そしてその年の出来事が優しい声で語られた。
真っ暗な館内から男性がすすり泣く声。
「ありがとうございました」
目を真っ赤にした男性は静かに話し始めた。
「施設にいる母の認知症がひどくなってきました。最近は僕が誰だかもわからないようです。正直、もう行くのも億劫に感じていました。でもさっき生まれた日の夜空を見上げていたら、この日に母が僕を生んでくれたんだな。だから僕は今ここにいるんだな。そんな感謝の想いが湧いてきました。
急に母に会いたくなりました。明日、母のところに行こうと思います」
記事:夜空|今日の言葉