口蹄(こうてい)疫問題で、町内にいる牛や豚の全頭殺処分が決まった宮崎県川南(かわみなみ)町。通りから人影は消え、商店街はさながらゴーストタウンと化している。ウイルスの拡散防止のため、行政が不要不急の外出自粛を呼びかけているためだ。「このままでは、街が消えてしまう」-。住民らはやりきれない思いにさいなまれている。
第4日曜日の23日。本来なら役場に面した商店街は、1万人近い人々でにぎわうはずだった。
予定されていたのは毎月1回の「軽トラ市」。近隣農家がトラックの荷台に積んだ作物を直売する名物行事だ。集まるトラックは130台にもなり、「他の市町村の羨望(せんぼう)の的となっている」(住民の女性)という。
当然イベントは中止。静まりかえった通りには「がんばっどぉ!!川南」の横断幕。その下を、家畜の死骸(しがい)を埋める重機を積んだ自衛隊車両が通り抜けていく。
隣の都農(つの)町で4月20日に確認された口蹄疫。翌21日には川南町でも確認され、町民の生活は一変した。「何でこんなことになってしまったのか・・・」。長年、この街で暮らしてきた真田正良さん(87)は、そうつぶやいた。
町の人口は約1万7千人。戦後、全国から集まった入植者が旧軍用地を苦労して切り開いた歴史を持つ。青森・十和田市、福島・矢吹町と並ぶ「日本3大開拓地」の1つとしても知られる。約15万頭の牛、豚生産で農業産出額の5割超を占め、宮崎ブランドを支えてきた。
「50年前、父の代に始めて、庭先養豚からようやく中小企業の仲間入りをしたのに。誇りを持ってやってきたが、『口蹄疫の街』になってしまった」。約8千頭を飼う養豚業、香川雅彦さん(52)は、あきらめ半分の口調で語った。
獣医師が足りないため殺処分の順番はまだ回ってこない。いずれ処分される運命の豚にエサをやり、熱を出したら世話をする。それでも1日100頭ずつ子豚が死んでいくという。
「防疫のため人が入ってこれなくて、最後においしいエサをやることもできなかった」。そう振り返る本多栄明さん(28)は、一家で約7百頭の牛を飼育してきた。2日前に殺処分と埋却処理が終わり、3月に完成したばかりの新牛舎も、いまや空っぽだ。
農大を卒業し、父親が始めた畜産を本格的に継ごうとした矢先だった。「先のことは考えられない」
「壊滅的な打撃です。だが、是非再起しなくてはいけない」。蓑原敏朗副町長(60)は、防疫用の作業服姿で疲れた表情をみせた。
殺処分、過酷な作業 獣医ら「終わりが見えない」(2010年5月24日朝日新聞)
家畜の伝染病、口蹄疫(こうていえき)との闘いが続く宮崎県。4月20日に始まった殺処分の対象の牛や豚は5月23日時点で14万4千頭を超えた。獣医師や県職員、自衛隊員らが連日、作業を続けているが、処分を終えたのは半分超の約7万5千頭にとどまる。国がワクチン接種後の全頭処分を決めたことで、新たに14万6千頭が対象に加わる。終わりの見えない過酷な作業に、焦りと疲労が募る。職員らに話を聞いた。
県土整備部に勤める50代の男性職員は、5月のある土曜日、午前7時に出勤した。県庁前には、事務職員も含め、各部局からかり出された男性約100人が集まり、4台のバスで口蹄疫が猛威をふるう同県川南町に向かった。
男性は殺処分をする獣医師の補助員をすることになり、約1200頭の豚を飼う農場に向かった。白い防護服に身を包み、「立ち入り禁止」の農場に足を踏み入れた。ウイルスを持ち出さないように、作業中は原則として、一度入れば、作業が終わるまで出ることができない。
男性は、他の職員と豚を追い立て、逃げないように板を持って「壁」をつくり、10頭ほどを豚舎の通路の隅に寄せた。動き回る豚に押され、何度も倒れそうになった。「手袋に豚の鼻が当たると、柔らかくて温かかった」
獣医師が、大きな剪定(せんてい)ばさみのような器具で豚の腹を左右から挟み、電気を流した。「豚は一瞬、金縛りのように硬直して、これまで聞いたことのない、悲鳴のような鳴き声を上げた」
排泄(はいせつ)物が防護服に飛び散り、マスクをしていても、強烈なにおいがした。息絶えるまでに、1~2分。「つらい時間だった」
獣医師は電気を通すとき、一呼吸置いて、逃げようとする豚を器具でしっかり押さえた。本来なら、動物の命を助ける仕事。「苦しめないように、せめて短時間で済ませようとしていたんだと思う」。1頭を処分するたびに、獣医師は汗だくになっていた。
農場主の男性は、畜舎の外で座り込み、ぼうぜんとした表情で作業を見ていた。県職員が豚の扱いにてこずっているのを見ると、豚の追い込みを手伝ってくれた。「農場主には、豚もおとなしく従った。それが切なくて・・・」
午前中は50頭を処分するのがやっとだった。食欲はわかなかったが、体力を保つため、弁当をかき込んだ。
午後は効率を上げるため、二酸化炭素による殺処分に切り替えた。2トントラックの荷台に豚25~26頭を乗せ、シートをかぶせてボンベからホースでガスを送る。10人がかりでシートを押さえた。しばらくすると中で豚が一斉に暴れて、鳴き始めた。シートを突き破ろうと当たってくる豚を、必死に押さえた。シャツも下着も、汗でぐっしょりぬれていた。
午後6時半までに処分したのは約300頭だった。
発生農場での防疫作業を一刻も早く終わらせることが、感染拡大の阻止につながる。「見たくないし、聞きたくないが、目をそらすわけにはいかない」と男性は語った。
応援に来た40代の男性獣医師は、1日約600頭を薬殺する。必死にもがく豚を2人1組で押さえつけ、注射針を刺す。「仕事とはいえ、生き物を殺すのは、つらい」
作業を終えると、町役場に帰り、全身を丁寧に消毒する。周りは皆疲れ果て、言葉数も少ない。
「終わりが見えない。肉体的にも精神的にも、通常業務の3~5倍は大変」という。
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口蹄疫被害に対する義援金を募集します(宮崎県)
宮崎県では、4月20日の本県における口蹄疫発生以来、口蹄疫防疫活動により影響を受けた畜産農家に対する支援を行うため、5月14日から「宮崎県口蹄疫被害義援金」を下記により募集しておりますので、ご協力をお願いします。・・・
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/fukushi/fukushi/shakai_fukushi/html00165.html
宮崎県口蹄疫被害義援金の課税上の取扱いについて(国税庁)
宮崎県口蹄疫被害義援金(以下「義援金」といいます。)につきましては、所得税法第78条第2項第1号及び法人税法第37条第3項第1号に規定する地方公共団体に対する寄附金に該当します。したがって、個人の方が義援金を支払った場合には、特定寄附金として寄附金控除(所得控除)の対象となり、法人が義援金を支払った場合には、その支払額の全額が損金算入の対象となります。・・・
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h22/kouteieki/02.htm
川南町口蹄疫対策支援金について(川南町)
川南町では全国各地から寄せられる善意の声をもとに「川南町口蹄疫対策支援金」の受付をしています。・・・
http://www.town.kawaminami.miyazaki.jp/soumuka/soumukakari/koho/kouteieki-sien.jsp
インターネット募金「宮崎県口蹄疫被害義援金」(Yahoo!ボランティア)
宮崎県内で発生した口蹄疫は、懸命の防疫対策にもかかわらず発生以来拡大の一途をたどり、畜産農家等に甚大な損害をおよぼしています。殺処分等により今後の生活の糧を失った農家では、現在も不安な日々を過ごしています。中央共同募金会では、宮崎県、宮崎県共同募金会と連携し、口蹄疫防疫活動により影響を受けた畜産農家に対する支援を行うため、「宮崎県口蹄疫被害義援金」を募集しています。皆さまのご協力よろしくお願いいたします。・・・
http://volunteer.yahoo.co.jp/donation/detail/341007/
口蹄疫被害義援金の受付窓口開設について(はてな義援金窓口)
宮崎県における家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)被害が深刻な事態となっています。宮崎県は被害を受けた畜産農家への義援金募集を始めました。はてなではこうした状況を受け、はてなポイントによる「口蹄疫被害義援金の受付窓口」を新たに開設いたします。集まったポイントは、送付いただいた際のポイント送信手数料も含め、上記宮崎県が開設する義援金募集口座へはてながまとめて振込をおこないます。・・・
http://d.hatena.ne.jp/hatenacontrib/20100519/1274233369
宮崎県内における口蹄疫被害に対する支援について(ソフトバンクモバイル)
ソフトバンクモバイル株式会社は、宮崎県内で拡大している家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)被害に対する支援のため、以下の取り組みを行います。ソフトバンクモバイル携帯電話から義援金を募金できる「口蹄疫被害支援プロジェクト」特設ページを開設しました。・・・
http://mb.softbank.jp/scripts/japanese/information/topInfo/detail.jsp?oid=537221275