行政刷新会議による事業仕分けは、4、5月の独立行政法人、公益法人を対象とする事業仕分けをもって一応の日程を終了しました。
文部科学省では、このたび、事業仕分けの対象となった事業について、広く国民から意見を聴くためのパブリックコメントを開始したようです。期限は6月15日まで。
事業仕分けの対象となった事業の今後については、未だ不透明ですが、「独立行政法人の抜本的な見直しについて」(平成21年12月25日閣議決定)等に基づく厳格な対応を望みたいところです。
行政刷新会議事業仕分け対象事業についてご意見をお寄せ下さい(平成22年5月26日文部科学省)
行政刷新会議は4月下旬と5月下旬に、独立行政法人及び政府関連公益法人の事業について事業仕分けを行い、文部科学省関係の事業についても以下の表のとおり対象となったところです。この事業仕分けを契機として、多くの国民の皆様の声を独立行政法人及び政府関連公益法人の見直しに生かしていく観点から、今回の事業仕分けの対象となった事業について、広く国民の皆様からご意見を募集いたします。6月15日までに以下のリンク先よりご意見をご提出下さい。・・・
http://www.mext.go.jp/a_menu/kouritsu/detail/1294165.htm
仕分け結果の概要等が上記ホームページに整理されてありますが、このうち、高等教育に密接に関連すると思われるいくつかの事業についての評価結果(事業仕分けとりまとめコメント)を抜粋してご紹介します。
仕分け結果の詳細については上記ホームページをご覧ください。
国立大学財務・経営センター
1 施設費貸付事業、承継債務償還
施設費貸付事業及び承継債務償還については、12名中、8名が当該事業の廃止であるので、これを結論とする。なお、ガバナンスの強化が3名、事業主体の一 元化が2名であった。国立大学については、各大学が自立していくことが重要であり、独自のファイナンスをする方式にできるだけ早く改めていくべきではないか。基本的には、民間金融機関で対応できるように国としてもバックアップをするなど、改善をしていただきたい。
2 施設費交付事業、旧特定学校財産の管理処分、財産管理・処分・有効活用に関する協力・助言
施設費交付事業、旧特定学校財産の管理処分及び財産管理・処分・有効活用に関する協力・助言については、12名中、8名が当該事業の廃止という意見であり、これを結論とする。なお、一般会計で行い必要な予算措置を行った方が適切という意見もあった。また、不要資産の国庫返納、仮に新たな制度で対応する場合にはガバナンスの強化も併せて行っていただきたい。
3 高等教育に係る財政及び国立大学法人等の財務・経営に関する調査及び研究、経営相談事業(財務・経営の改善に資する助言等)
高等教育に係る財政及び国立大学法人等の財務・経営に関する調査及び研究及び経営相談事業(財務・経営の改善に資する助言等)については、当該事業の廃止が12名中11名であり、これを結論とする。ガバナンスの強化を求める意見も付されている。現状では、経営の相談は職員が対応しており、専門家が対応しているわけではない。各大学が民間のコンサルタントを利用すべきである。
大学評価・学位授与機構
1 認証評価事業(大学等の教育研究等の総合的状況に関する評価)
当WGとしては、全員の一致で、事業の実施は民間の判断に任せるという結論とする。既に民間で実施可能な事業となっており独立行政法人が行う必要はない。1年以内に業務移行の具体策を提示すべき、移行期間を具体的に 設定し、2~3年で税金を投入しないこととすべき、などの意見が付されている。
2 国立大学法人評価(中期目標期間の評価)における教育研究評価
当WGとしては、国が実施機関を競争的に決定し、事業規模は縮減するとの結論とする。これは、当該事業を独占的に国が事業を実施する必要はないという趣旨であり、同じ趣旨で、他の法人で実施すべきという意見も多くあった。独立行政法人を含め、実施機関を競争的に決定し、資金の流れを透明化して、ガバナンスを強化すべきである。
大学入試センター
大学入試センター試験の実施、大学の入学者選抜方法の改善に関する調査研究
当該法人が実施し、事業規模を縮減との結論とする。縮減の意味は運営費交付金に頼らないような構造で運営をやっていただきたいということである。ただ、その一方で受験料が上がっては困るので、印刷の問題を含めコスト縮減を徹底的に行ってほしい。さらに、自己収入の拡大については、利用者である大学の負担が本当に適正かどうかを含めて再検討していただきたい。また、将来的な入試制度のあり方についても、これだけのコストを要して研究していることも踏まえ、きちんとしたビジョンを出してほしい。
日本学術振興会
科学研究費補助金
当WGの結論としてはガバナンスの強化とさせていただく。科学研究費補助金は、多くの方がガバナンスの強化を求めている。科学技術振興機構における競争的資金との違いとして、科学技術振興機構がトップダウン型、日本学術振興会がボトムアップ型、という役割があるというのは一定の理解はあると思われる。しかし、実施に当たり、他機関等と協力してコストを下げるというのは、意見の一致するところである。文部科学省から完全に移行できていない、財政的な問題がある、という点についても、独立行政法人として独立性をもって資金配分すべきであり、早急な独立性強化も必要である。
日本学生支援機構
1 国際交流会館等留学生寄宿舎等の設置及び運営
評価者12人のうち半分の6人が事業の廃止、4人が不要資産の国庫返納を求めており、当WGの結論としては事業の廃止とするが、現在入居している留学生や、入居が決まっている留学生に迷惑がかからないようにしていただきたい。数年以内に一旦事業を廃止し、今後のことは自治体や民間、大学に任せていくべきであるとの意見が出されている。また、留学生13万人のうち2,600人のみを対象に国費を投入することは不公平ではないか、むしろ国としては民間のアパートを留学生が今まで以上に借りやすくするよう連帯保証人の問題を解決したり、様々なサービス向上のために法改正や制度を整えていくことが大切ではないか、との意見もあったので併せて検討願いたい。
2 留学情報センターの運営
評価者12人のうち10人が事業の廃止を求めており、事業の廃止を結論とする。不要資産の国庫返納も3人が求めている。当該事業は既に民間が実施しており、事業費6,700万円、人件費5,200万円を投じて当該法人が実施すべき事業ではないという意見が大勢である。
3 私費外国人留学生等学習奨励費制度
評価者12人のうち9人が当該法人で実施とし、事業の規模については、うち5人が現状維持、3人が事業規模の拡充を求め、ガバナンスの強化も3人が求めている。優秀な学生の選抜には一層注力すべきであること、給付予約制の適切な拡充を行うべきであること、今までの検証が不十分であることが浮き彫りになり、当該法人で実施する意義が国民に明らかにされなかった。こういう点も含めて全体的に見直し・検証をしていただきたい。日本に留学を希望する留学生を応援していこうという政策の理念には賛同するものであるが、手法がまだまだ不十分であるということを付言しておく。結論としては、当該法人が実施し、事業規模は現状維持とする。ただし厳しい成果検証等を求めるものとする。