サービス業のリーディング・カンパニーといえば、ディズニーランドを想起する人は多いだろう。
オリエンタルランドが経営する東京ディズニーランドリゾートの収入を見ると、日本独自のビジネス手法が見えてくる。
東京ディズニーランドの2013年の売上高は3298億円で、その内訳はアトラクション・ショーの収入が約43.6%、商品販売収入が36.4%、飲食販売収入が約18.8%、その他の収入が1.2%という構成になっている。
米国を始めとする海外のディズニーランド関連施設と比較して、日本ではキャラクター・グッズに代表される商品販売の売上構成比が非常に高い。
日本人は、どこかに出かけるとお土産を購入することが多い。
リピーターの構成比が高い東京ディズニーランドであっても、人々がグッズをたくさん購入していることがわかる。
もし、東京ディズニーランドがキャラクター・グッズに力を入れていなければ、売り上げの4割近くを失ってしまうことになる。
サービス業における「モノづくり」が、いかに企業の収益に貢献するかがわかる。
日本のGDPに占める製造業の割合は年々低下し、2008年の段階ですでに19.8%と2割を切っている。
一方で、同年のサービス業の比率は70%を超えている。
これを額面通り受け取ると、製造業に代わって、サービス業が日本を牽引する産業になっているように考えられそうだが、それは一面的な見方だ。
これまでの日本の産業構造と成長の軌跡から考えると、日本に必要な視点は「製造業はサービス業化」を図り、もう一方で「サービス業は製造業化」に取り組むことにある。
日本の製造業は単にモノを製造し販売するだけでなく、モノの製造から生み出された知的資産をモノ化(モノの製造からソフトウエアやシステムを生み出し、それをモノ化する)させるところから始まった。
続いてモノとサービスを組み合わせたビジネスモデルが考案された。
さらに、製造業は自社の資源(ブランドやノウハウ)を生かしてサービス業に進出している。
近年、製造設備を持たず、製品の企画設計やマーケティングだけを自社で行い、製造は外部に委託するアップル社のような「ファブレス化」の動きも出現している。
サービスとモノの組み合わせとしては、自社が持つノウハウをソフトウエア化、コンテンツ化する取り組みがなされている。
サービス業が製造業化に取り組んだ事例として、「佐賀県武雄市」を紹介する。
自治体が民間企業の発想を取り入れてハコモノ行政を改革し、税収を増やした成功事例である。
『官が「モノ化」させると「ハコモノ」になり、大半が多額の税金を流出させる厄介者になる』
国や地方自治体が施設をつくって運営すると、うまくいかないケースが非常に多い。
しかも、本来収益を上げるべき施設が収益を生み出さない場合は、赤字を補填(ほてん)するため、多額の税金が使われてしまう。
国や地方自治体の施設が収益を生み出せない最大の原因は、施設の運営者が公務員だからだ。
役所は、自らの手で収益を上げる大変さを身をもって知る人材が少なく、税収によって捻出された予算を使う(消化する)ことに長じた人たち(公務員)によって構成されている。
お金を稼ぐ苦労を知らない人材が、マーケティングを行えるはずがない。
そのため、自治体の経営がうまく行くかどうかは、首長となる人材の力量とリーダーシップに、大きく依存することになる。
一つめのハコモノ「市民病院」を改革。
もう一つのハコモノ「図書館」を改革。
武雄市は「アウトソーシング」発想を取り入れ、民間企業の力を活用して病院と図書館という施設をサービスのモノ化で活性化させ、地元の魅力を高めて、税収を増やす資源に転換した。
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サービス業の製造業化というと、すぐに思い浮かぶのが日本のユニクロやアメリカのギャップ。
SPAという、製造から物流、販売までを手掛ける小売り業態のことを言う。
今や、一つの専門性だけを売りにする会社や業態は生き残るのが難しくなった。
クロスオーバーの発想、すなわち異なる分野を組み合わせて新しいモノやコトを作り出すことが、あらゆる創造的な分野において不可欠となっている。
なぜなら、ITの浸透により、時代の変化が加速度的に進んでいるからだ。
事業においては、「製造業のサービス業化とサービス業の製造業化」、個人においては、「専門分野を二つ以上持つ」というようなチャレンジが必要だ。
頭を柔らかくし、常に新たな発想で臨みたい。