オバマ前大統領には在任中、仕事用の「制服」があった。灰色か青色のスーツしか着なかったのだ。オバマはヴァニティ・フェア誌に対し、その理由は日々下さなければいけない決断を減らすためだったと語っている。
「私は決断する回数を減らそうとしている。食べるものや着るものについて、決断したくない。他に決断すべきことがあまりに多いから」
決断はどんなものでも多少の時間と精神的な努力が必要であり、政界や実業界の有力なリーダーたちは、自分の時間という最も貴重な資産を守る必要に迫られている。
世の経営者は、歴代大統領のユニークな働き方から多くのことを学べる。例えばルーズベルト元大統領は、その超人的な生産性で有名だった。朝食前に本を数冊完読していたとされ、自身の著作も50冊ある。
ルーズベルトは勉学でも優秀だったが、周囲よりも長く勉強しているようには見えなかった。その代わり、非常に短時間で集中して取り組み、またその間は妨げとなるものを全て締め出すことに長けていた。
雑音を締め出すのがうまかったのは、ルーズベルトだけではない。アイゼンハワー元大統領は1954年の演説で、「現代人のジレンマ」として、ノースウェスタン大学のJ・ロスコ―・ミラー学長による次の言葉を紹介した。「私には2種類の問題がある。緊急なものと重要なものだ。緊急なものは重要ではなく、重要なものは決して緊急ではない」
そしてアイゼンハワーは、効率性が向上する、シンプルな4つの四角形からなる表を作ったとされる。「アイゼンハワー・マトリクス」あるいは「緊急性・重要性マトリクス」と呼ばれるこの表では、やるべきことを全てリスト化し、ひとつずつ表に配置していく。これにより、忙しい人が最初に取り組むべきもの、他の人に任せるべきもの、時間の無駄になるものについて判断できる。ルールは次のとおりだ。
・緊急かつ重要:自分で今すぐ対応する
・重要だが、緊急ではない:自分でやるが、後回しにする
・緊急だが、重要ではない:他の人に任せる
・緊急でも重要でもない:排除する
この方法が効果的な理由は、緊急の仕事によって重要な仕事が後回しになってしまうことが非常に多いからだ。やることリストを徹底的に見直し、行動に移す前にストレステストにかければ、意味のない仕事や、他の人が(もしかしたら自分よりうまく)できる仕事で自分の時間を無駄にせずにすむ。
人は自然と、緊急の仕事に真っ先に着手し、その後は、一つ終わるたびにちょっとした満足感を得られるようなこまごまとした仕事に取り組みたくなってしまう。だがこのやり方では、複雑であることが多い重要なタスクから気がそれてしまう。
その理由の一つは、起業家の多くが、自分は何に時間を費やすべきで、何が時間の無駄なのかをほとんど分かっていないことにある。スタートアップ経営者から私が最も頻繁に受ける質問は、「自分は何に取り組んだらいいのか?」というものだ。
職務内容を書き出す
生産性を高めるために最適なエクササイズの一つに、自分の職務内容を書き出すことがある。起業家の中には、これを一度もしたことがない人もいるだろう。
米大統領の職務内容は、(少なくとも名目上は)並外れたもので、外交官、儀典長、最高行政官、自政党の指導者、全国民の代表、公共政策立案者、軍最高司令官を同時に担っている。また、その合間にわずかばかりの私生活も確保しなければならない。
一方、私のような新興企業経営者の職務内容はおおむね以下のようになるだろう。
・成長戦略(計画と実行)
・採用と人材保持の改善
・チームの主要メンバーと時間を過ごす
・成功の妨げとなる複雑な問題の解決
アイゼンハワーのテクニックと同様、この職務内容から外れるタスクは全て委託するか、緊急でも重要でもないものについては排除すべきだ。あなたは米大統領ではないかもしれないが、可能な限りの規律をもって自分の時間を大切にする必要がある。
米国の歴代大統領に学ぶ、時間の有効な使い方|Forbes JAPAN から