2021年6月12日土曜日

規制改革推進に関する答申 -デジタル社会に向けた規制改革の「実現」-

  • 規制改革推進会議(小林喜光議長)は6月1日、首相官邸で第3回規制改革推進会議議長・座長会合を開催し、「規制改革推進に関する答申」を取りまとめ、会議に出席した菅首相に提出
  • 答申を受け取った菅首相は、「規制改革を着実に進め、悪しき前例主義、行政の縦割りを打破することで、次の成長の突破口を作っていく」との考えを表明
  • 政府は、答申を受けて規制改革実施計画を策定し、月内にも閣議決定を行う見込み
  • 答申は、「成長戦略」「雇用・人づくり」「投資」「医療・介護」「農林水産」「デジタルガバメント」の各ワーキンググループの議論を反映させたもの
  • 行政手続の書面・押印・対面の見直し、オンライン教育の推進など多くの規制改革項目が盛り込まれている。

本文

大学関連(抜粋)

Ⅱ 各分野における規制改革の推進

2 雇用・人づくりワーキング・グループ

(4)デジタル時代の日本を支えるイベノーション人材育成の環境整備

ア デジタル時代を踏まえた大学設置基準等の見直し

<実施事項>

a 「遠隔授業の方法により修得する単位数の上限(60単位)」については、一部のみオンラインで実施する場合はこの上限の範囲内には入らないことが明確化されたが、通学制と通信制の設置基準の見直しに当たっては、通学制と通信制の差異が相対化していることを踏まえ、それぞれの長所を生かした形で大学が独自性を活かすことができるよう、更なる見直しが必要であり、関係者の意見を聞きながら検討を行う。

b 現在、多くの大学は対面方式と遠隔方式を組み合わせた「ハイブリッド方式」を取り入れているが、この方式において授業が行われた場合に、対面/遠隔で受講した学生から見て、それぞれ対面授業とカウントされるのか、遠隔授業とカウ ントされるのか(60単位に含まれるのか)ルールを明示化し、周知する。

c 卒業に必要な124単位のうち、遠隔授業の方法により修得する単位数の上限は60単位、対面授業が求められるのは64単位であるが、「遠隔授業が半以数下の場合は対面授業とみなされる範囲は、124単位全てに適用される」というオンライン教育に関する活用の趣旨の大学現場への浸透を図るとともに、コロナ禍において特例的に認められている措置(対面授業を実施することが困難である場合、遠隔授業等を行う弾力的な運用が認められる措置)が、いつまで適用されるのか、早急に周知する。

d 大学設置基準では、授業の主たる実施場所は大学の校舎等であることが求められ、学外の施設の利用は授業の一部のみで認められているが、オンライン授業の普及・利用状況を踏まえ、また大学に今後期待されるリカレント教育の実施に向けた社会人の利使性等の観点から、校地・校舎面積の物理的空間としての規制、例えば「校舎等施設」(「大学設懺基準」第36条)、「校地の面積」(同第37条)、「校舎の面積」(同第37条の2)並びに「運動場」(同第35条)等の基準について、大学の独自性を考慮した上で、柔軟に対応できるよう見直しを実施する。また、デジタル書籍の利用やオンライン授業が今後更に広がると想定される中で、大学設置基準における体育館を始めとした施設の設置義務等の妥当性について検討し、見直すとともに、必ずしも「紙の本」の図書館や教員の個室は必要ないという点と併せて、周知する。

e 国際的活躍を目指す学生のキャリア形成の過程において、海外大学院への進学は珍しくないが、大学設置基準において、卒業要件は、「大学に4年以上在学し、124単位以上を修得する」と定められている。大学卒業要件は、大学に何年在学したかではなく、何を修得したかで認められるべきであり、「単位」(「大学設置基準」第21条)を取得した場合には、4年未満であっても卒業できるように見直しを行う。同時に、入学時期や卒業時期についても、海外への大学留学・大学院進学における利便性も踏まえ、柔軟な設定を可能とする。

f 時間的、地理的な制約が緩和されるデジタル時代においては、対面教育のみを前提とした現行の厳格な定員管理は、より柔軟かつ合理的な定員管理に見直される必要がある。定員管理について、個別の事情(例えば医学部における実習可能数の上限等)がある場合を除いて、「学部単位の入学定員」をより柔軟化するとともに、単年度での管理についても、複数年度の平均値での管理など、より現実的な方法に変更を行う。また、社会人学生や留学生に関する定員についても、より柔軟な設定をすることを可能とする。

g 大学設置基準において、「「当該大学に置く学部の種類及び規模に応じ定める教授等の数」と「大学全体の収容定員に応じ定められる教授等の」数の合計した数以上」と定められている専任教員数の規定について、学部の種類や各大学の実態に即した形で見直す。

h 魅力的な大学・専門職大学の設立に当たっては、優れた実務家教員の採用による民間ビジネスの実態に合わせた環境の整備等は必須であるが、その基準は必ずしも明示化されていない。したがって、「実務家教員」の定義(実務家教員の研究・教育実績の明確化)や学校名(どのような学校名なら認可されるか、不認可となるか、またその基準について)等については、大学等の設置認可の申請に当たり、誰もが分かりやすい形で明示化する。

i 大学設置基準において、単位互換が認められるのは60単位の上限があるが、海外からの留学生の取り込み、国内の日本人の海外留学の促進、大学間の単位互換の促進などの観点から、単位互換制度の活用状況や将来的なニーズ、また、自ら定める学位授与方針等との整合性や質保証の観点等も踏まえ、単位互換制度の在り方について議論を行う。

(5)オンライン教育等にかかる規制・制度の見直し

<実施事項>

g 通学制の大学におけるオンラインを活用した授業により取得できる単位数上限について、単位取得のために必要な授業数の半数を超えない範囲でオンラインを活用した授業をした場合等には、単位数上限に加算しないことを明確化する。また、通信制の大学においては、オンラインを活用した授業のみで上限なく全ての単位を取得できることも併せて周知を図る。あわせて、例えば、オンライン教育の活用による留学を促進する観点から、日本人学生が海外に滞在しながら、また、外国人学生が自国にいながら日本の大学の授業を受ける場合、通学制の大学においても、海外からのオンラインを活用した授業と日本での対面授業の柔軟な組み合わせによる教育が可能であることなどの周知を図る。同時に、通学制の大学は、学生がキャンパスに来て学ぶことを前提とした学校であり、各大学は、学生に寄り添い、学生が安心し、十分納得した形で学修できるように対応することが重要である旨を併せて周知する。

h 教育の質保証の観点も含めて、デジタル化時代に即したものとなるよう、大学設置基準、大学通信教育設置基準(昭和56年文部省令第33号)の見直しについて、令和4年度からの実施を念頭に、結論を得る。