2008年4月28日月曜日

食いものにされているのではないか文教施設予算

文部科学省の前文教施設企画部長が収賄の疑いで先日逮捕されました(逮捕時、国立高等専門学校校長)。
最も襟を正すべき文部科学省の役人がこのような不祥事を起こしたことは、国民はもとより教育関係者にとっては正直言って大きな衝撃です。

多くの様々な教育問題に立ち向かって懸命に努力している人達を愚弄する教育担当官庁の役人の犯罪。その背景にはいろいろと根深い事情があるやに報道されていますが、いずれにしても、後を絶たないこの類の話にはただただあきれ、閉口するばかりです。


天下り100人超=施設部門から-文科省 (2008年4月15日 時事通信)
文部科学省や国立大学の施設担当部署を経験した職員で、2001年から5年間に建設、設備工事会社に再就職したのは100人を上回っていることが15日、時事通信の集計で分かった。

国立大の施設整備をめぐっては、同省の元幹部が警視庁に収賄容疑で逮捕された。集計では同省や国立大の施設部門が、天下り先として業界に依存してきた実態が浮き彫りになった。

人事院が毎年発表する「営利企業への就職の承認に関する年次報告」などを基に、文科省文教施設企画部(旧文教施設部)や地方工事事務所、国立大の施設担当部署に勤務した同省OBの再就職先をまとめた。

この結果、少なくとも建設会社に34人、空調や電気などの設備工事会社に69人が再就職したことが判明。これら103人のうち、同省文教施設企画部を最後に退職したのは8人、国立大からの退職者は95人に上った。

再就職後の肩書は「顧問」「技術部長」が目立った。設備会社で設計積算統括部の担当部長に就いた大学職員もいた。

前同省文教施設企画部長大島寛容疑者(59)が逮捕された汚職事件で、贈賄側の会社顧問倉重裕一容疑者(58)がかつて在籍した五洋建設には、大学の施設部長1人が建築部調査役として再就職していた。

103人以外には、建材会社や設計会社に入った工事事務所長、大学課長がいた。大学病院の管理課を辞め、空調会社に再就職した例もあった。


国立大法人化で天下りが「隠れみの」に (2008年4月15日 時事通信)
全国で年間20人前後が建設・設備業界に天下っていた国立大学だが、2006年以降は職員の再就職の実態を把握することが難しくなった。国立大を経て退職する文部科学省職員も多いが、「大学法人化」以後は、国立大が国の再就職公表制度の対象から外れたためだ。専門家は「国立大が文科省職員天下りの隠れみのになっているのでは」と指摘している。

国家公務員が在職中の職務と関係がある企業に就職するには、退職後2年間は人事院の承認が必要。同院は毎年、各省庁の職員の再就職先を取りまとめて公表している。

文科省に所属していた国立大も公表対象だったが、04年度からは行財政改革の一環で同省から切り離されて「国立大学法人」*1となった。職員の身分は公務員ではなくなり、06年からは再就職の人事院承認も要らない。

主な国立大8校に職員の再就職について問い合わせたところ、「把握していない」(東北大)、「民間に準じた扱いなので公表していない」(信州大)といい、大学側が自主的に公表している例はなかった。

一方、文科省との人事交流は従来と同様に続いている。90ある国立大(自然科学研究機構など大学共同利用機関も含む)の施設担当部の部長のうち、31人は同省文教施設企画部で勤務した経験がある。同省職員が国立大に出向したまま、退職してしまうケースも多いという。

五十嵐敬喜法政大教授(公共事業論)は「国立大学法人が文科省の隠れみのになっているのではないか」と指摘。「日本道路公団や郵政の民営化と同じで、職員の顔触れは変わらないのに情報公開が後退している」と批判している。

(国立大施設系職員の再就職)

2001年
・東北大施設部長 → 建設(建築部調査役)
・三重大施設部長 → 設備(顧問)
・広島大施設部長 → 建設(建築本部長補佐) など18名

2002年
・秋田大施設部長 → 建設(技術部長)
・東京大機械設備課長 → 設備(技術顧問)
・名古屋大施設部長 → 設備(技術総括部顧問) など20名

2003年
・室蘭工業大施設課長 → 設備(設備本部技術顧問)
・岡山大施設部企画課長 → 建設(建築本部理事・部長)
・山口大施設部長 → 設備(技術顧問) など23名

2004年
・福島大施設課長 → 設備(工事本部理事)
・名古屋大施設部長 → 設備(営業本部工事部部長)
・広島大施設部長 → 設備(支店技術顧問) など16名

2005年
・新潟大施設部長 → 建設(支店駐在技術部長)
・信州大施設部企画課長 → 設備(工事本部技術顧問)
・九州大施設部長 → 設備(技術顧問) など18名

文部科学省には、国立学校や公立学校の建物などの施設整備予算を担当する部署があり、出先の国立大学を含めると、かなりの数の技術系職員が配置されています。国土交通省(旧建設省)に次ぐ職員の多さではないかと思います。(国立大学にこれほどのお抱え職員が必要なのだろうかという問題は従来からあるのです。)

今回逮捕された文教施設企画部長(旧文教施設部長)という職は、いわゆる文部科学省のキャリア技官(国家公務員Ⅰ種)のトップとして、国立大学関係だけでも年間約1千億円もの工事予算を作成・配分する立場にあるとともに、国立大学に配置する施設系部課長(管理職)の人事権を持つ最上の立場にあります。

また、その傘下にいる文部科学省、国立大学の技術系職員は、一般行政職とは全く別枠の組織や人事構造の中で異動し退職を迎えることになっており、話を簡単にして申し上げれば、極めて閉鎖的な透明性の低い環境下に置かれ仕事をする体制になっています。(一部にはこれが不正を生む温床になっているのではないかとの意見もあります。)

したがって、現役とOBが節度のない馴れ合い的関係になるのは必然的であり、そこに建設会社がつけこみ、多くの天下りを雇用し営利を求める行動に出るという悪循環が生まれているようです。

今回の事件では、逮捕された元文教施設企画部長のほか、文部科学省の役人や国立大学の現役職員と業者との会食やゴルフを通じた癒着の実態が報道されています。また、大学現場からも情報が漏洩していたのではとの疑いも一部報道されています。

国立大学では、今でも建設会社に天下った管理職OBが、何人かの営業部隊を引き連れ、後輩や顔見知りの管理職を訪ね、適当な世間話に花を咲かせ、情報収集と名刺配りにいそしんでいる光景をよく見かけます。退職後の生活がかかっている状況は理解できますが、あくまでも不正を伴わない営業で終わってほしいものですし、現役職員の方は、脇の甘さを常に確認しなければなりませんね。

大学は教育機関であるとともに公共的な機関でもあります。したがって、大学職員には高い倫理観とともに自律性が求められます。先輩やOBから強い要請があっても、不正は絶対に実行してはなりません。大学職員の高い倫理感が、大学の公益性と社会からの信頼を支えているのです。


(参考)

文部科学大臣記者会見(平成20年4月15日)概要

記者)
国立大学の施設発注を巡る汚職事件について、省内に調査チームを立ち上げられましたが、調査の進捗状況を聞かせて下さい。

大臣)
本件については、4月7日以降、警察の捜査の状況も見守りつつ、調査チームにおいて、省内幹部並びに文教施設企画部の幹部OB等に対して事実関係の聞き取り調査、加えて再発防止に対する検討を行ってきました。

事実関係の聞き取り調査の進捗状況については、まず、文教施設企画部の課長補佐級以上の職員の中には、倉重容疑者と面識のある者がおり、この中には、ゴルフや会合の際に倉重容疑者と一緒になったことがあるとする者もいるということですが、記憶上のことですから、必ずしも明確でない者もいるために、さらに詳しい事情について、引き続き調査することとしています。またOBについては、文教施設部長又は文教施設企画部長及び技術参事官のOBを聞き取りの範囲として行ったわけですが、その中に倉重容疑者と面識のある者がおり、この中には、先程同様、ゴルフや会合の際に倉重容疑者と一緒になったことがあるとする者も若干名いたわけですが、この件についても必ずしも記憶が明確でない者もいるため、さらに詳しい事情について引き続き調査をすることとしています。その他の省内幹部、これは文教施設企画部以外の課長級以上ですが、これまでのところ、倉重容疑者の名前を聞いたことがあるという者はいたものの、面識がある者は確認されていません。なお、これらの詳しい中身については、捜査に支障を及ぼすおそれもあると考えられますので、現時点では、これ以上詳しく申し上げることは差し控えさせて頂きたいと思います。

次に、現在、五洋建設及びペンタビルダーズ株式会社が工事を受注した国立大学法人等について、その過程に問題がなかったか等についても調査していまして、今週半ばくらいには一定の状況が把握できると思っています。国立大学法人等での調査ですから、時間が少し掛かっているとご理解下さい。

一方、先週火曜日の記者会見でも報告しましたが、これらの作業と並行して、本件が生じた要因の検証ですとか、これからの再発防止策の検討を指示していまして、

1点目は、国立大学法人等の施設整備事業のプロセスに問題がなかったか。例えば、個別事業について公表の時期は、予算が確定してから各大学に通知をするということが一般的です。これは全ての予算がそうだと理解していますが、予定されていることとしてあらかじめオープンとすることが可能かどうか。今までの段階で分かっていることは、その情報の提供が受注に有利に働いたということですから、こういった点について、今、制度的な問題として何ができるか検討しているところです。
2点目は、これは人事の問題ですが、硬直的といわれている文教施設企画部の人事異動の在り方に問題はなかったか。施設系職員にも従来に比べ広く他局課での経験を積ませるという人事配置は、過去に比べると格段に進んでいると考えているところですが、なお工夫する余地はないか検討しています。

3点目は、職員の服務規律について、これは個人の倫理の問題になると思いますが、これまでも色々な機会を通じて、しっかりと守るようにと徹底してきたつもりですが、なお改善をすべき点がないか検討を始めています。

これらを総合的に勘案して、再発防止の検討を指示しているところです。なお、事件の実態、全容がより明らかになってきたときには、よりしっかりとした調査・検討をしたいと考えています。我が省は捜査機関ではありませんから、調査は聞き取りが中心になりますし限界はあると思いますが、先程も言いましたように、まだ記憶に頼っているところも若干あるわけですから、引き続き、できるだけ事実関係の調査を行うとともに、再発防止策の検討をしっかりと進めていきたいと考えているところです。

記者)
今の件ですが、面識はあるが記憶が曖昧という部分は、ちょっと矛盾しているような感じがするのですが、これはどういう意味でしょうか。

大臣)
名前は聞いたことはあるが面識がないということはあるわけです。随分以前の話もあるわけですから、あれが倉重容疑者だったかなとか、あれが倉重容疑者のことかもしれないというふうなことだと思います。これは若干私の推測もありますが、私自身も、例えば、5年前にゴルフをしたときにいたのかなと言われればいたような気もするというのは、あるのではないでしょうか。今のご質問に対しては、そういうことを言った者に対して再度調査をして、記憶を辿ってもらって、より鮮明なものにしたいということです。記憶ですから、確かでないということはあると思います。ただ、色々な話を聞いて記憶が確定する場合もありますし、やはりはっきりしないということはあると思います。そういう意味だとご理解頂ければ結構です。

記者)
一般の人に分かり易く解釈したいのですが、要するに、倉重容疑者と一対一で会っていたが何処で何時会ったのかという記憶が曖昧なのではなくて、大勢の中の一人が倉重容疑者だったのかどうかという意味で記憶が薄いということなのでしょうか。

大臣)
必ずしもそうとは特定できないと思います。これは色々なケースがあると思います。私が具体的に面接をしたわけではありませんから、もし必要であれば調査チームから答えさせますが、一般的に私が理解していますのは、名前を聞いてそういう人がいたということは聞いたことがあるとか、会ったことがあるが記憶が定かではないというのは、あの人が多分そうだったのだろうと思うというふうなことではないかと。ただ、面識があるというのは、はっきりと相手が倉重容疑者で、かつ、顔も覚えているといったような認識だと思いますので、そういうことを面接で発言した者に対しては、より詳しく聞くということではないかと思います。何か補足することありますか。

担当者)
今、大臣が言われたとおりです。

記者)
何人から聞き取り調査をした結果、およそ何人がそういうふうに面識がある、ないし知っていると答えたかを教えて下さい。

担当者)
審議官級以上が32名で、文教施設企画部以外の課長級以上が75名いますが、今一人まだ確認ができていません。75名のうち74名です。それから文教施設企画部の課長補佐級以上に聞き取りをした対象は32名です。そのうち、面識があるとか記憶があるといった者の人数については、曖昧な部分がありますので控えさせて頂きたいと思います。

記者)
OBには何人聞いたのですか。

担当者)
OBは8名です。

記者)
つきあいとか、ゴルフというものを確認された中で、一番古いのは何年前でしょうか。

大臣)
中身については、今警察による捜査もありますので、今の段階では控えさせて頂きたいと思います。

記者)
その中身なのですが、例えばゴルフによる接待そのものは、捜査に関係なくいけないものだと思うのです。その部分については、捜査に関係なく文科省として一定の説明をする責任があるのではないかと思うのですが、如何でしょうか。

大臣)
先ほど申し上げましたように、捜査に支障があってはいけませんので、今の段階ではその件についても差し控えさせて頂きたいという判断をしています。

記者)
聞き取り調査の質問項目といいますか、内容というのは、倉重容疑者との面識とかの他に、どういうことを聞かれたのでしょうか。

大臣)
基本的には、倉重容疑者を知っているかということから始めまして、先程言いましたように、名前は聞いたことがあるかとか、あるなら面識があるかとか、ゴルフに行ったことがあるかというような質問項目だと思いますが、正確を期すために担当から発言させます。

担当者)
今大臣が申し上げましたように、基本的には、倉重容疑者を知っているかということから始めまして、知っているという職員に対しては、面識があるかとか、食事をしたかとか、ゴルフをしたかとか、そういった具体的なつきあいの程度について聞いています。その他関連して、「櫟の会」とか「文施OB会」といった名前も出ていますので、それについても知っているかどうかといったことを聞いています。その他、関連事項をケースバイケースで聞いています。

記者)
現在調査されています、五洋建設とぺンタビルダーズ株式会社が受注した大学の工事件数は、どれくらいですか。

担当者)
今確認して後ほどお答えします。

記者)
文教施設企画部の者が、ゴルフをしたり会食をしたり、知っていようが知っていまいが、同席することだけで服務規程違反になるのですか。

大臣)
これは公務員倫理として内規があった時代と、国家公務員倫理法ができた以降では、法律的には扱いが違うと思いますが、従来は文部省の内規として倫理規程があったわけですから、そういった意味では、今のご質問の趣旨が法律違反かということであれば、国家公務員倫理法制定後は法律違反になると思います。

記者)
そうしますと、現職職員の中にこういった違法行為をした者がいる可能性が非常に高いという状況にあると、そういう認識でよろしいのでしょうか。

大臣)
先程も言いましたように、聞き取りを受けている者も、私は悪意があってとは思っていませんが、記憶が少しはっきりしないという点もあるわけですから、なお慎重に、そのことも含めて、それが何時だったのかがしっかりと確認をした上で、お答えをさせて頂きたいと思っています。

記者)
それは刑事的な処分だけではなくて、文科省内としての処分も含めて考えるということですか。

大臣)
それは全体像が、ある程度、最後まではっきりしなければできないものではないと思いますが、少なくとも個人との関係においては、何らかの確証が得られた段階でやらなければいけないと考えているところです。捜査もまだ進行中ですし、そういったものについて我々は何も別に隠そうという意図は全然ありません。事実、そんなことができる時代ではないと私は思っています。ただ、不確定な部分がある中で、今、予見をもって皆さんにお答えすることは、むしろ適当ではないと。そこの部分は、はっきり言える段階できっちりと報告させて頂きたい。先程も言いましたが、我々がやっていることには、私自身も限界はあると思っています。でも、こういうことが起こったわけですから、我が省としての国民に対する説明責任ということで、然るべき時期にしっかりと報告したいと思っています。

担当者)
先程ご質問がありました受注実績ですが、文部科学省が把握しているもので、まず五洋建設は、過去5年間で延べ8大学、30億9,270万2千円です。それからペンタビルダーズは、過去5年間で延べ3大学1機関、3億6,634万5千円ということです。

記者)
確認ですが、先程、倉重容疑者を知っていた現職の者がいたという表現だったのですが、複数いたということでよろしいのでしょうか。

大臣)
はい、複数です。

記者)
これまでの調査で、ゴルフとか会合をしていたという文教施設企画部の人がいたことについて、大臣の今のご所見を伺えますか。

大臣)
これは残念の一言だと思います。特に、そういうことが過去において度々指摘をされて、そして国家公務員倫理法という法律までできたわけです。そのことを考えれば、それ以前でも問題がないとは言えないとは思いますが、それ以降においては、たとえゴルフのプレー費を自分で負担しても、そういうことはしないようにということが、はっきりと決められているわけですから、やはりまず公務員というのは、法を執行するわけですから、自分自身も法をしっかり守るというのは基本です。公務員制度改革がこれから議論をされるわけですから、やはりこういうことが具体的に発覚したということについて、非常に残念だと思っています。


*1:国立大学は2004年度、国立大学法人法に基づいて文部科学省から独立した。全国に86あり、法人ごとに建設・設備工事を発注している。研究施設の不足や老朽化が課題となっており、同省は06年4月にまとめた「第2次国立大学等施設緊急整備5カ年計画」で、10年度までに約1兆2000億円の費用が必要と試算。08年度当初予算では、各国立大への補助金などとして約921億円の施設整備費を計上した。