さて、いわゆる法人評価のベースとなるのが、実際は大学が作成し、形式上文部科学大臣が設定することとされている中期目標と、中期目標を達成するために各大学が作成する中期計画であるわけですが、現在、各大学は第1期中期計画の達成作業とともに、平成22年度から始まる第2期中期目標・中期計画の策定作業に汗を流しています。
各大学とも第1期中期目標・中期計画の総括・検証を行いながら、来るべき第2期中期目標・中期計画期間中の戦略策定に頭を悩ませる日々が続いているのではないかと思います。
この悩ましい第2期中期目標・中期計画の策定指針については、第1期における様々な反省を踏まえ、これまで文部科学省と国立大学協会が中心となって、制度設計を行ってきましたが、いよいよその形が大学現場にも見えてきました。
今日は、今月末にも文部科学省から各国立大学に示される予定の第2期中期目標・中期計画の項目等について、事前に入手した資料から主なポイントをご紹介したいと思います。
1 第1期からの主な変更点
- 中期目標・中期計画の対象となる事項をより明確化したこと
- 達成度を明確に評価できるよう可能な限り中期計画の記載の具体化を図ったこと
- 中期計画の「記載事項の例」を示さないなど例示を簡略化したこと
- 最小単位の項目数の目安を設定したこと
- 国際化の項目等一部記載事項の追加を行ったこと等
2 上記による効果(第1期と比較した場合の想定されるメリット)
- 各大学の目標の明確化・重点化により、各大学の個性化や機能分化がより促進されること
- 国立大学法人評価の精選化・重点化により、質の高い評価を行えること
- 目標・計画や評価に関する作業量が大幅に減少すること等
3 今後の予定されるスケジュール
- 平成21年6月中を目途に各法人から中期目標・中期計画の素案を文部科学省に提出
- 国立大学法人評価委員会における審議(必要に応じ各大学からヒアリングを実施)
- 平成21年度中に中期目標・中期計画の認可等に係る正式な手続き
なお、国立大学法人の第2期中期目標・中期計画の項目等についての補足事項として、文部科学省が作成した資料には次の点が示されています。
1 項目数を原則として100項目を下回るとすることについて
- 第1期中期目標・中期計画においては、結果的に各法人が設定する項目数が多すぎ、策定作業や評価作業が膨大である、羅列的・総花的で構造化されていない、等の指摘があったところである。このため、第2期中期目標・中期計画においては、第1期の全法人の平均最小単位項目数(約194項目)の概ね半減を目指し、項目数の上限の目安として100項目としたものである。
- なお、下限の目安は特に設定しないが、各法人の規模、部局の数等も勘案しつつ、各法人において適宜ご判断願いたい。
2 中期目標の前文における「機能別分化」に関する記述の追加について
- 今後は、より大学の機能別分化を進めることが重要との観点から、中期目標の前文の(注)において機能別分化に関する記述を追加したものである。
- あくまで、各法人が自主的に自らの基本的な目標や使命を明確に記載する際の参考の一つとするとの意味であり、「我が国の高等教育の将来像」(将来像答申)等も参考にしつつ、必ずしもそれらにとわれることなく、各法人の判断により適切に記載願いたい。(例えば、「将来像答申」に言う7つの機能のうちいずれかを選択すべきとの趣旨ではない。)
3 「国際化に関する目標」等の新設について
- 今後、国立大学法人として国際化に対する取組みを明確化していくことが重要との観点から、「大学の教育研究等の質の向上に関する目標」の「3その他の目標」に「国際化に関する目標」を新設するなどしたものである。
4 「法令遵守に関する目標」等の新設について
- ここ数年、不正経理や個人情報漏えい等の法令違反が後を絶たない現状に鑑み、これらの事案の未然防止等を図る観点から、「その他業務運営に関する重要目標」に「法令遵守に関する目標」を新設するなどしたものである。
今後上記の方針に基づき、各大学は本格的な作業に突入していくことになります。
なお、今年も昨年に引き続き、第2期中期目標・中期計画期間に向けて、各国立大学法人における諸課題等について広く意見交換を行うことを目的とした文部科学省との意見交換が、平成20年10月6日(月曜日)から11月28日(金曜日)の間に文部科学省において開催されることになっているようです。
国立大学法人側からは、担当理事、事務局長、担当部長等(3名以内)の出席が求められ、1法人当たり30分~1時間程度の意見交換が行われることになっています。証拠づくりのために形式的に行うのではなく、相互に率直な意見交換を行い意味のあるものにしていただきたいものです。