2008年10月10日金曜日

国立大学法人の平成19年度評価結果(1)

昨日(10月9日)、文部科学省に設置された国立大学法人評価委員会は、平成19年度の各法人の業務実績に対する評価を決定し各法人に通知しました。

各法人ごとの評価結果は公表されておりませんが、今回の評価を総括する形で、「評価委員会委員長見解」「国立大学法人全体の評価結果の概要」「国立大学法人の改革推進状況」が公表されています。

今日はこのうち「評価委員会委員長の見解」をご紹介します。

まずは、昨日の公表を受け、これまでに報道されている記事を3つほど。

経営協議会審議、6校で不適切=国立大評価 (2008年10月9日 時事通信)

文部科学省の国立大学法人評価委員会は9日、国立大と大学共同利用機関の全91法人について、2007年度業務実績の評価結果を公表した。外部の意見を反映させるための経営協議会の審議が6大学で不適切だったなどとして、評価委は「一部で取り組みが不十分」と指摘した。

宮城教育大、福岡教育大など6校は、学外の委員が参加する経営協議会で審議すべき財務諸表、役員報酬規定などを、事後報告で済ませていた。

弘前大、信州大など9校では、博士課程、法科大学院で学生の定員充足率が基準の9割を切っていたことが判明。今後、運営費交付金の返還が求められる。

小樽商科大、静岡大など10校と高エネルギー加速器研究機構では、研究費の不正使用を防止するための規定・体制の整備が不十分だった。

一方、30校と2機関は、教職員の個人評価を給与などに反映させる仕組みを導入済み。評価委は「運営効率化は基本的には順調に進んでいる」とした。


大学研究費:不正流用防止のルール作り、11法人で不適切 (2008年10月9日 毎日新聞)

国の研究費の不正流用を防止するルール作りについて、91の国立大学法人と大学共同利用機関法人のうち11法人で適切に行われていないことが、国立大学法人評価委員会(野依良治委員長)の調査で分かった。同委員会は「早急な対応が求められる」としている。

不正流用防止のガイドライン制定、監査体制作り、研究者の勤務時間管理などが行われているかについて、07年度の実態を調べた。適切な対策が取られていなかったのは▽北海道教育大▽小樽商科大▽お茶の水女子大▽総合研究大学院大▽北陸先端科学技術大学院大▽福井大▽静岡大▽大阪大▽鳴門教育大▽鹿屋体育大▽高エネルギー加速器研究機構。

また「業務運営の改善・効率化」で7法人、「自己点検・評価及び情報提供」で6法人が「やや遅れている」と評価された。


国立大の業務、延べ18校「改善必要」 07年度、文科省評価 (2008年10月10日 日本経済新聞)

文部科学省の国立大学法人評価委員会(委員長=野依良治理化学研究所理事長)は9日、国立大学の2007年度の業務実績評価をまとめた。全体としておおむね良好と評価する一方、大学院の定員割れなどを理由に、延べ18校について「取り組みがやや遅れている」とした。

国立大の業務実績評価は、各大学が設定している中期計画(04-09年度)に対し、どれだけ計画通りに取り組んでいるかを毎年チェックする仕組み。国立大87校と、高エネルギー加速器研究機構など4つの大学共同利用機関法人が対象で(1)業務効率(2)財務内容(3)自己点検(4)その他-の4分野について、それぞれ5段階で評価が行われる。


次に、国立大学法人評価委員会委員長見解です。

国立大学法人・大学共同利用機関法人の平成19年度に係る業務の実績に関する評価について
平成20年10月9日
国立大学法人評価委員会
委員長  野依 良治

国立大学法人評価委員会は、この度、国立大学法人及び大学共同利用機関法人の平成19年度に係る業務の実績に関する評価を行いました。

評価に当たっては、各法人から提出された業務実績報告書を基に、平成19年度における各法人の中期計画の進捗状況について、法人側の自己評価や年度計画の設定の妥当性も含めて検証しました。その際、財務諸表等も活用するほか、法人として最小限取り組むべき事項を各法人共通の観点として取り上げています。

平成19年度の状況については、それぞれの法人において、学長・機構長のリーダーシップの下、各法人の基本的な理念や置かれた環境に応じて、工夫・改善を図りつつ、中期目標の達成に向けて意欲的に運営を進めていることを評価します。今後は、管理運営コストの削減に向けて、法人の規模・特性に則して管理運営組織の在り方を検証し、必要に応じてそのスリム化を検討していくことが期待されます。

また、多くの法人においては、昨年度の評価結果を積極的に業務の改善に役立てており、当委員会による評価を活用した改善システムが有効に機能していると認められますが、一方で、これまでに評価結果において課題とされた事項に対して、十分な対応がなされていない事例も見られ、これらの法人においては、評価結果に対する真摯な取組が求められます。

当委員会においては、今年度、引き続き、平成19年度までの4年間の業務実績に係る評価を行い、教育研究等の質の向上に係る大学評価・学位授与機構による評価の結果とあわせて、各法人の次期中期目標・中期計画の策定に資することとしています。このほか、具体的な組織の見直しなどについても検討に着手していくこととしています。

国の財政状況を受け、法人の運営財源である運営費交付金が削減され、各法人を取り巻く環境は厳しさを増しているところですが、引き続き、中期目標の達成に十分留意して、計画の進捗状況を正確に把握・分析し、運営の改善に確実に結び付けていくよう一層の取組を期待します。