2008年10月7日火曜日

教育再生懇談会レポート

これまでどちらかといえば、初等中等教育を中心に検討されてきた政府の教育再生懇談会が、いよいよ高等教育の議論を始めました。

今日は、9月22日(月曜日)に開催された教育再生懇談会の議事要旨の中から「大学全入時代の教育の在り方について」の議論の様子をご紹介します。

なお、関連する資料及び議事要旨全文は、教育再生懇談会のホームページをご覧ください。


大学全入時代の教育の在り方について


安西座長

私立大学の学生のレベル、学力が低いというのは由々しい問題である。大学側は経営の問題がかかっているという現実がある。
一方、日本は学費の私費負担が大きいという現実もある。家庭環境、所得格差が学歴格差を生むというデータも多々出ており、そういうことに対するバックアップが大事である。悪循環がありそこを断ち切る1つの方策としては奨学支援だと考えられる。また、GPAなど大学での学力の質の担保を大学に対して強く言う必要がある。

田村委員

重要な問題で、すぐ大学が多すぎるという議論につながるが、日本はOECD先進諸国と比較して、大学は多くはない、むしろ少な目である。
将来、知識基盤社会を作ろうとする場合には、社会的なインフラとして、大学はこれぐらいはなければ、先進国に伍していけない。
量ではなく、質の問題である。卒業段階の試験や入学のときの試験といったことのほか、入ってからも色々な仕組みが議論されており、丁寧に議論して実体化していくことでかなり改善されるのではないか。

若月委員

修了率が日本は91%だが、米国は56%となっているが、これはどう読めば良いのか。

安西座長

フランスやアメリカでは、社会、市民、国等が教育に投資をするのが大事だという認識がある。日本の場合は、教育投資は国がやるべきことであるということになっていて、狭間に私立大学が落ちている。国からの投資も必要だが、市民のバックアップが高等教育の充実には大事である。そういう中で私費負担が大きいので、所得の格差が学歴格差を生み、それが遺伝していく。その根をどこかで断ち切らなければいけない。
高等教育が改善されれば初等教育も改善されていく。私立大学をなんとかして欲しいという訳ではなく、国公私を通じて、大学、高等教育の在り方を実態を見て、原因を突き詰めてその原因を取り除く方策をとらなければいけない。

町村官房長官

進学率を比べたら、日本は高いのか。

安西座長

進学率はだいたい50%ぐらいで、それはOECD加盟諸国で、上から三分の二ぐらいで上の方ではない、真ん中より下ではないか。

田村委員

学生が日本の場合は特定年齢に偏っている。OECD諸国やアメリカに行くとキャンパスの中で若い人は少ない。成人が山のようにいる。長い時間をかけてしっかり勉強しようとしているということが社会全体の知的水準を支えている。

安西座長

大学進学というときには高校生が大学生になることだけを考えているが、アメリカ、イギリスあたりの大学生の20%は社会人であり、パートタイムの学生が多い。進学率を18歳の進学率と捉えるのと、社会人も含める捉え方とがあり、これからは後者で考えるべきで、大人でもまた大学で学べる生涯学習社会にしていかないと日本はもたないのではないかと思っている。

篠原委員

格差の問題というのは、例えば東京大学の学生の親の年収が日本の大学で一番高いということなのか、教育格差が格差の再生産につながっているということか。

安西座長

傾向としてはそうだと思う。教育費負担のことを言っているのは、家が貧しくても志のある人達を公に支援していかなくてはいけないからである。
多くの若い人達が大学レベルで学ぶことが、これからの日本にとってはとても大事だと思う。ただ大学にいれば良いということではなく、大学においてちゃんと学べるようなサービスを大学が提供しなくてはいけない。

町村官房長官

大学に行っても遊んでいるような子供達がぞろぞろいてもしょうがないのではないか。

安西座長

遊んでばかりいる学生であふれているキャンパスはいらない、それは淘汰されるべきである。しかし、ある一定の学力を持つ若い人達を日本が生み出していかなくてはいけないのは確かであり、それを誰がどうやって生み出していくかというふうに考えていただきたい。今の大学を現状のままで支援すれば良いと言っているのではない。これからの日本には、知識のレベルにおいて世界で対抗できる人達がもっと出てきてくれなければ困るのである。

小川委員

階層間の格差の話だが、地方の国立大学などは、かつては授業料が安かったので機会均等の保障に大きな役割を果たしてきたが、最近は国立大学の授業料も普通の私大並に上がってきているのでネックになっている。大きなテーマなので、いつかまた時間を取ってやっていただきたい。
高校から大学に進学する際に奨学金制度の存在が重要であるが、大学進学後の奨学金を高校段階で予約する制度が日本ではまだ十分拡充されていないので、運用のところで予約制の拡充について改善していただきたい。

塩谷官房副長官

高校教育の目標をしっかり考えなければいけない。18歳で高校を卒業した時どのような地点に到達していなければならないのかということを考えながら、全入時代の大学の在り方を考えるべきである。

池田委員

出発点は幼児教育であり、就学前教育が徹底されていれば、志、目的意識が養われて成長していくと思うので、高等教育にも良い影響を与えるのではないか。

安西座長

高校教育、義務教育、就学前教育、それぞれ全体がつながっているので、教育というのはどこかだけ断片的に取り上げてもなかなか解決はしにくい。高校教育は特に義務教育と高等教育の間に挟まってしまいなかなか議論として取り上げられない。
この問題については、今日いただいた御意見も踏まえ引き続き議論をつづけさせていただく。

町村官房長官

次の内閣でもこの懇談会で御検討いただいてきたテーマに熱心に取り組んでいただけると思っている。

鈴木文部科学大臣

奨学金の予約制については、それ以前に奨学金の延滞の問題があり、これを解決することが課題である。

福田内閣総理大臣

奨学金の延滞については、何らかの社会的ペナルティがあっても良いのではないか。