2010年1月6日水曜日

学長の権限とリーダーシップの活かし方

昨日(12月5日)、山形大学の結城彰夫学長は、新年を迎えるに当たって、山形大学が取り組む課題や目標をまとめた行動計画である「結城プラン2010」を発表しました。

このプランは、結城学長の就任以来、今回で3回目の作成となるもので、就任時の公約である 1)何よりも学生を大切にして、学生が主役となる大学創りをする、2)教育、特に教養教育を充実させるという2つの基本方針を実現するためのマニフェストとして位置づけられ、毎年、達成状況を検証しながら、新たな課題を設定し実現していくことにより、山形大学の改革を計画的・継続的に進めていく羅針盤になるものです。

この結城学長マニフェストは、全教職員のほか在学生や新入生にも配布・共有されるとともに、大学のホームページを通じて社会にも公表されています。

結城プラン2010(山形大学ホームページ)
http://www.yamagata-u.ac.jp/jpn/university/pdf/yukiplan2010.pdf


法人化に伴い、国立大学の学長の権限が強化されました。国(文部科学省)が持っていた権限を含め多くの権限が学長に委譲され、学長のリーダーシップによる更なる大学改革、教育改革が求められるようになりました。

この学長が持つ権限がいかに強大かについては、法人の経営者たる理事長と教学部門の学長による分権によって機能している私立大学と比較すれば、自ずと明らかであり、一部には、権限の一極集中による専権的支配を心配する声があるほどです。

法人化前、国立大学の学長は、表向き大学の代表者という位置付けにありながら、実際には、教職員の人事や学内予算の編成といった重要事項に関する決定権はほとんどなく、実質的には、最高議決機関である評議会及びそれを支配する教授会が権限を持つという構造で意思決定が行われていました。

したがって、学長が、大学の発展に資する取り組みを何かやりたいと考えても、まずは学内の実力者である学部長や、文部科学省から送り込まれた事務局長の賛同を得ること、その上で、学部自治=教授会の運営に影響力のある教員たちに、周到な根回しなどをする必要がありました。

ところが法人化後はこれが大きく変わりました。「学長は大学を代表し、業務を総括する」こととなったのです。理事を含め他の職員は学長が任命する、学長の選考は、教授会でも評議会でもない、学外者が半数を占める学長選考会議が行うこととなりました。

しかし、残念ながら、現実は、「意向投票」という名の下で教員による選挙が行われ、その結果どおりの学長選考を行っている大学も未だに多数存在しています。学内の政治状況が選挙の行方を左右する悪弊から脱却できていない、脱却しようとすらしない結果、最も適切な人材が学長として選ばれていない、実質的な学内支配をもくろむ一部の野心的教員達が傀儡政権を作り、論功行賞による役員人事を断行するというおぞましい状況は、常識ある国民に対して到底説明のつく話ではありません。法律は、もう選挙は必要ないと言っているのですから。


冒頭にご紹介した山形大学の結城学長は、この日記でも何度かご紹介したことがありますが、文部科学事務次官の職を辞し学長候補者になることが明らかになったその時点から、天下りという一点で散々揶揄され続けました。

しかしどうでしょうか。誰よりも大学や学生を想う真摯な姿勢、大学の経営トップとしての目標を掲げこれを広く公表し、着実に実現していく力量は、多くの大学関係者が手本とすべき学長の権限とリーダーシップの活かし方なのではないでしょうか。