2012年7月5日木曜日

国立大学法人における規制緩和

国立大学法人の出資制限については、これまでも、その緩和を求める声が多く、過去の政府の計画等でも検討課題とされてきました。

先月、文部科学省が公表した「大学改革実行プラン」においても、大学の機能を再構築し、強化す
る視点から、大学間連携のための制度的枠組みの整備を図る方策の例として、出資制限の緩和を取り上げています。

今後、国立大学法人法について、その改正の必要性や改正時期等について、具体的に検討されていくと思われますが、財政力の強い大学だけが恩恵を得るといったことにならないよう慎重な対応をお願いしたいと思います。

国立大の出資規制緩和 大学間の連携促す 来年にも法改正(2012年7月3日 日本経済新聞)

文部科学省は国立大学の出資規制を緩和する方針を固めた。子会社設立や企業への資本参加を可能にするよう国立大学法人法を2013年にも改正。私立大を含めた複数の大学で物品の共同購入会社を設立したり、研究や教養教育を共同で行う組織を設立したりできるようにする。共同事業を機に大学間の連携を促し、競争力や経営効率の向上につなげる狙いだ。

同省は12~17年度を大学改革の集中実行期とし、国公私立や都道府県の枠を超えた地域別・機能別の大学群をつくる方針。私立大は出資が自由な一方で国立大は厳しく制限されていることが共同事業が広がらない要因との指摘があり、見直しが必要と判断した。

今後、国立大学協会を通じて各大学から要望を聞き取り、制度の詳細を詰める。出資対象は大学の業務範囲とするほか、原資も寄付金などに限り、税金である運営費交付金は充てられないようにする方向だ。

同省は地域内の複数の大学で図書や実験薬品・材料を共同購入する会社を作って仕入れコストを引き下げたり、共同で研究所や教養教育を行う組織を設立して教員や研究設備を共有したりすることなどを想定している。

東京大は3月にまとめた秋入学移行構想で、高校卒業から入学までの半年間に学生に多様な体験を積ませる支援組織を産学の共同出資でつくる案を示している。規制緩和でこうした動きも弾みが付きそうだ。

現在の国立大は研究成果を企業に移す技術移転機関(TLO)にだけ出資でき、株式取得もベンチャー企業への技術供与の対価としてしか認められない。TLOに出資したのは東大、京都大など4校で、額も60万~約3000万円にとどまる。

文科省は大学間の連携を促すため、今後も国立大を中心に様々な規制緩和を検討する。1つの国立大学法人が複数の国立大を運営する「アンブレラ方式」などだ。ただ、統廃合につながるとして大学側の警戒感は強い。出資規制の緩和も私立大から反発が出る可能性もあり、同省は制度設計を慎重に進める方針だ。