人事課OBを隠れみのにした仲介に加え、現役職員も調整に直接動いていた実態が明らかになった。さらには3人の事務次官経験者が、在任中、自ら不正に手を染めていたという。
改めて問う。これが、道徳と称して子どもに「規則の尊重」や「公正、公平、社会正義」を学ぶよう求める役所なのか。
調査は外部の弁護士らが中心になって行われたが、期間の制約もあって万全とは言い難い。
例えば、あっせんの仕組みを誰が、いつ、どうやってつくったのか。天下り先ではどんな役割を担い、学部の設立や補助金の獲得にどんな影響があったのか。行政がゆがめられるようなことはなかったか。こうした肝心な点は不明のままだ。
これで教育行政に対する信頼を回復できるとは思えない。
深刻なのは、法に触れる行いに対し、誰からも疑問を差しはさむ声が出なかったことだ。
先輩から頼まれたから断れない、前任者からの引き継ぎだからやるしかない。そんな意識があったと調査班は見る。
文科省は、順法意識よりも身内意識を優先する組織風土の改革をめざすという。調査班からは、人事課の体制や現役とOBの関係の見直し、民間企業からの人材受け入れなどの提案が出ているが、いずれも即効薬にはなり得ない。地道な取り組みと不断の検証が必要だ。
今回の報告には、元外交官や旧経済企画庁出身者の再就職についても、文科省が口利きをしていた例が含まれている。天下りが、この国の官僚制度の構造的な問題であることを物語る。
政府は他の府省庁にも同様の調査を指示している。集約を急がねばならない。それぞれが天下り先として確保している「指定席」の公表が第一歩だ。
制度の見直しも求められる。以前は、離職後2年間は密接な関係のあった企業への再就職を禁じる規定があった。第1次安倍政権の時になくなり、かわりに官民をつなぐ人材センターや再就職等監視委員会がおかれたが、十分機能していないことがはっきりした。「2年」規定の復活を検討すべきではないか。
天下りの背景には、年功序列のピラミッドを維持するため、官僚が早期退職を求められるという事情がある。実績・能力主義に徹し、定年まで働くのが当然の職場にしなければ、この悪弊の根絶は難しい。